間違えやすい敬語「させていただく」の正しい使い方を、敬語のプロが徹底検証【例文あり】

ビジネスにおける会話やメール、そんなにおかしい日本語は使っていないつもりだけれど、正しいかどうか、正直あやふや……。「話す・書く」のプロ、山口拓朗さんが、 アラフォーだからこそおさえておきたい、オトナなモノの言い方を伝授します。

間違えやすい敬語「させていただく」の正しい使い方を、敬語のプロが徹底検証【例文あり】

人によって受ける印象が異なる、敬語の「させていただきます」

「させていただく」という言葉に対して、あなたはどんな印象をもっていますか? 「させていただく」は、使役の助動詞「させて」に「もらう」の謙譲語「いただく」を組み合わせた敬語です。

「させていただく」は不思議な言葉で、耳にしたときに「とくに何も思わない」「とても丁寧」「なんだか失礼」と、人それぞれ受ける印象が違うようです。相手との関係性やシチュエーションによって、適切に感じられたり、失礼に感じられたりする人もいます。

「させていただく」は、どういう場面でどういう使い方をすればいいのでしょうか。本記事では、敬語「させていただく」の使い方の正体に迫ります。

「させていただく」の意味と正しい使い方

「させていただく」の使い方は、文化庁がまとめた文化審議会答申の「敬語の指針」に詳しく書かれています。

「(お・ご)......(さ)せていただく」といった敬語の形式は,基本的には,自分側が行うことを,ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。

この内容をまとめると、「させていただく」が使えるのは、以下①と②の条件を満たしているとき、ということになります。

①相手側や第三者の許可を受けて行う場合
②そのことで自分が恩恵を受けるという事実や気持ちがある場合

たとえば、パーティなどで指名を受けたときに「はなはだ僭越ながら、ご挨拶をさせていただきます」と話すのは、①と②の条件を満たした正しい使い方です。「指名」も「許可」と考えられるからです。

また、相手の誘いを受けたときに「喜んで参加させていただきます」や「今回は辞退させていただきます」と答えるのも、とくに問題のない使い方といえます。①と②の条件を満たしています。

さらに、ビジネスシーンでは、①と②の条件を満たした状態で「納期スケジュールを変更させていただきます」「では、○○様にメールを転送させていただきます」などと話すのは適切です。

「させていただく」の使用上の注意点とは?

そもそも「させていただきます」は、「相手の許容範囲で自分の行為を行う(行った)という謙遜の気持ちの表れ」を示す敬語でもあります。

しかし昨今は、できる限り丁寧な言葉遣いにしなければいけない、という思いが強すぎるのか、「相手側や第三者の許可を受ける必要のない」ケースや、「そのことで自分が恩恵を受けるという事実や気持ちがない」ケースで「させていただきます」を使う人が増えています。

なかには「とりあえず『させていただきます』と言っておけば、相手に失礼と思われることはないだろう」という安易な気持ちで使っている人もいるようです。敬語の使い分けが苦手ゆえに「させていただきます」に依存している状態です。

このように、「させていただきます」は、便利な言葉である反面、場合によっては、相手に「慇懃無礼だ」と思われたり、違和感や不快感を抱かれたりすることがあります。

敬意を払おうと使った言葉が、相手に「失礼」と思われては本末転倒です。信用を重んじる社会人であればなおのこと。この機会に「させていただきます」の誤用を防ぎ、正しい言い換えアプローチを身につけておきましょう。

「させていただく」の誤用パターンと正しい言い換え

そもそも許可をもらう必要がないパターン

【誤用例】   メールをお送りさせていただきます

【言い換え例】 メールをお送りいたします。


【誤用例】   週明けにご連絡させていただきます

【言い換え例】 週明けにご連絡いたします。


【誤用例】   毎日、1時間半かけて通勤させていただいております

【言い換え例】 毎日、1時間半かけて通勤しています。


【誤用例】   会員の皆さまのお役に立てるよう頑張らせていただきます

【言い換え例】 会員の皆さまのお役に立てるよう頑張ります。

それまでの話の内容にもよりますが、「相手に許可を求めないと失礼にあたる」シチュエーションでなければ、簡潔に「いたします」や「します」で言い換えればOKです。

自分の役職を伝える際、相手に敬意を払う必要がないパターン

【誤用例】   私が経理を担当させていただいております。

【言い換え例】 私が経理を担当しております。


【誤用例】   編集長を預からせていただいている小林です。

【言い換え例】 編集長を預かっている小林です。

自分の役職を伝えるときに「させていただく」を使うのは不適切です。相手は「別に私が許可した覚えはないけど……」と心のなかで苦笑しているかもしれません。

身勝手なパターン

【誤用例】   画像を削除させていただきます

【言い換え例】 画像を削除してもよろしいでしょうか。


【誤用例】   担当を変更させていただきます

【言い換え例】 申し訳ございませんが、担当を変更いただけないでしょうか。


【誤用例】   熱があるため、早退させていただきます

【言い換え例】 熱があるため、早退してもよろしいでしょうか。

本来、相手の許可を得なければいけないシチュエーションであるにも関わらず、「させていただきます」と断言すると、「おい待て。それは勝手すぎるだろう」と怒られる恐れがあります。許可を求める言葉に変更する必要があります。

「さ入れ言葉」のパターン

【誤用例】   書かさせていただきます

【言い換え例】 書かせていただきます。


【誤用例】   報告書を読まさせていただきます

【言い換え例】 報告書を読ませていただきます。

本来「せる」と書かなければいけない言葉(五段活用の動詞)に、余計な「さ」を入れて、「させる」と書くのは“さ入れ言葉”です。

なお、五段活用を除く動詞には「させる」をつけるのが原則です。「受けさせる」「着させる」などは正しい使い方であり、“さ入れ言葉”ではありません。 

いつから「させていただく」の誤用がはじまった?

2010年前後から、有識者の著作物やインターネット記事などで「させていただく」の使い方に違和感を示す記述や記事が増えました。なかには、政治家やアナウンサーが「させていただく」を多用したことで広く世間に広まった、と指摘する人もいます。

敬語といえば「〜〜させていただいています」の多用、あるいは濫用も気になります。「〜〜します」、あるいは「〜〜いたします」でいいだろう、と私は内心でよく思っています。 
「させていただく」は謙譲語に分類されますが、「そこでへりくだらなくてもいいだろう」という場面でも、やたらにへりくだって謙譲語を使うことが多い印象を持ちます。

池上彰著『伝える力2』(2012年発行)

ジャーナリストで伝え方のスペシャリストである池上彰さんもこう述べています。

池上さんは、同じ著書のなかで、元総理大臣の鳩山由紀夫氏が「させていただきます」や「させていただきました」を多用していた点にも苦言を呈しています。「やたらに『させていただきます』と言う人に関し、私は『信用しないようにさせていただいています』」という皮肉まで用いて。

オトナなら抑えておきたい、「させていただく」の正しい使い方

もともと日本には謙遜を重んじる文化があります。謙遜できる人と謙遜できない人とでは、前者のほうが好印象を抱かれるケースが多い。これは事実でしょう。

とはいえ、そんな謙遜も度が過ぎれば、ノイズになりかねません。相手から「バカ丁寧で腹が立つ」「下手に出すぎていやらしい」「常識(マナー)知らず」「自信がないのでは?」などと思われて損をするのは、「させていただく」を濫用している本人です。

あなたは「させていただく症候群」を患っていませんか? 一度、意識的にチェックしてみるといいでしょう。もしも不適切な使い方をしているようなら、この機会に、言い換えできるようにしておきましょう。安易で不適切な「させていただく」は、あなたの信用を落としかねません。

この記事のライター

伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)他の著作がある。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

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