「召し上がってください」は、目上の相手にお土産を持参した時や飲食を勧める時に使われる言葉です。
プライベートだけでなくビジネスシーンでも使える敬語なので、ぜひ正しい使い方を覚えておきたいところ。
そこでこの記事では、「召し上がってください」の使い方や例文、言い換え表現などについて解説します。
■「召し上がってください」は正しい敬語?
「『召し上がってください』より『お召し上がりください』の方が丁寧なのでは?」
このような疑問を感じている人はいるでしょう。そこで、まず「召し上がってください」は正しい敬語なのか解説します。
◇「召し上がってください」は敬語として正しい
辞書で「召し上がる」を調べると、以下のように記載されています。
めし‐あが・る【召(し)上(が)る】
[動ラ五(四)]「食う」「飲む」の尊敬語。「何を―・りますか」
(『デジタル大辞泉』小学館)
辞書に記載されている通り、「召し上がる」は「食う」「飲む」の尊敬語です。
そのため^「召し上がってください」だけでも尊敬語として成立し、正しい敬語として使えます。^
◇「召し上がってください」と「お召し上がりください」、正しいのはどっち?
「お召し上がりください」の「お~ください」という用法は、その動作をする相手への尊敬を意味します。
前述したように^「召し上がってください」はこれだけで尊敬語として成立する言葉。本来「お~ください」の形にする必要はない^のです。
つまり、厳密にいえば「お召し上がりください」ではなく「召し上がってください」とする方が正しいといえます。
しかし、現在は「お召し上がりください」も広く使われているため、敬語として容認されてきているともいえるでしょう。
■「召し上がってください」の使い方(例文つき)
「召し上がってください」の使い方を具体的にイメージするため、使えるシーンと例文について紹介します。
◇「召し上がってください」が使えるシーン
「召し上がってください」は、^相手に食べ物や飲み物を勧める時^に使われます。例えば、来客にお茶を出した時、取引先にお土産を渡す際などです。
また、「召し上がってください」は^手紙やメールでも使えます。^例えば、相手に食べ物を送る際、「どうぞ召し上がってください」という旨の手紙を添えることがあります。
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◇「召し上がってください」の例文
「召し上がってください」の使い方がイメージできるよう、以下に例文をいくつか紹介します。
・「心ばかりですが、どうぞ皆さまで^召し上がってください^」
・「ほんの気持ちですが、よろしければ^召し上がってください^」
・「ささやかですが、どうぞ^召し上がってください^」
・「どうぞ温かいうちに^召し上がってください^」
・「よろしければコーヒーと一緒にお菓子も^召し上がってください^」
・「私の地元で有名なお菓子をお送りいたします。是非ご家族の皆さまで^召し上がってください^」
▶次のページでは、「召し上がってください」を使う時の注意点を解説します。
■「召し上がってください」を使う時の注意点
「召し上がってください」を使う時は、以下の点に気をつけましょう。
◇(1)「つまらないものですが」をつけると悪印象になる場合もある
「つまらないものですが、どうぞ召し上がってください」。
上記は謙遜の意味を込めて使われるフレーズですが、^人によっては「なぜつまらないと思うものを贈るのか」「謙遜しすぎでは?」などと良くない印象を抱く場合がある^ようです。
シチュエーションによっては、「つまらないものですが」を「ほんの気持ちですが」「ささやかですが」などに置き換えると無難でしょう。
◇(2)自分を主語にする場合は「頂く」を使う
^「召し上がる」は尊敬語なので、自分を主語にする場合には使えません。^例えば、「昨日、部長から頂戴したワインを召し上がりました」とするのは誤りです。
この場合は、「食う」「飲む」の謙譲語である「頂く」を使い、「昨日、部長から頂戴したワインを頂きました」とするのが正しい敬語となります。
▶次のページでは、「召し上がってください」の言い換え表現を紹介します。
■「召し上がってください」の言い換え表現
「召し上がってください」は、以下のように言い換えることもできます。
◇(1)「ご笑味ください」
辞書によると、「笑味」には次のような意味があります。
しょう‐み〔セウ‐〕【笑味】
[名](スル)食べ物を他人に贈るときなどに、粗末な品ですがお笑い草にひとつ召し上がって下さい、という謙遜の気持ちを込めていう語。「ご―ください」
(『デジタル大辞泉』小学館)
このように、「ご笑味ください」には、「つまらないものですが、笑いの種として召し上がってください」という^謙遜のニュアンスが含まれています。^
そのため、目上の人に贈り物を渡す時などに使えるでしょう。
◇(2)「お食べになってください」「お飲みになってください」
「お食べになってください」「お飲みになってください」など、動詞を「お~ください」の形にすると、その動作をする相手への尊敬を表すことができます。
そのため、「食う」「飲む」の尊敬語である「召し上がってください」は、^「お食べになってください」や「お飲みになってください」に言い換えられる^のです。
ただし、「召し上がってください」と比較するとややカジュアルな印象を与える可能性もあります。
■「召し上がってください」の使い方を押さえよう
「召し上がる」は「食う」「飲む」の尊敬語であるため、「召し上がってください」だけでも正しい敬語として使えます。
目上の相手にお土産を渡したりお茶を勧めたりする際に、「どうぞ召し上がってください」の一言があると、より丁寧な印象を与えられるはず。
本記事の例文も参考に、さまざまなシーンで「召し上がってください」を活用できるよう、使い方について押さえておきましょう。
(にほんご倶楽部)
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