人見知りを克服して発見した「思いやりキャリ」。ユナイテッドアローズ・藤野かりんさんの働き方
「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。
取材・文:ミクニシオリ
撮影:大嶋千尋
編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部
この仕事が苦手、あの作業をしたくない。自分の苦手って、仕事の中ではできれば避けたいものだけど……やってみたら意外とできたものや、楽しめたものもあるのではないでしょうか?
「もともと人見知りだったので、販売やPRの仕事が、自分に向いているとは思っていませんでした」
そう話してくれたのは、株式会社ユナイテッドアローズのブランド『UNITED ARROWS green label relaxing(以下、green label relaxing)』でPR担当を務める、藤野かりんさん。芸術系大卒でアパレル店員になったという藤野さんですが、もともとアーティスト気質で、人との交流が得意ではなかったそう。
しかし、モノづくりから販売まで一貫して行っていることに興味を持ってユナイテッドアローズに入社し、販売~PRと職歴を重ねてきた藤野さん。販売とPRは、一見全く違う仕事のように見えるかもしれませんが、藤野さんはユナイテッドアローズでのキャリアの中で「相手に合わせてコミュニケーションする」というキャリアの軸を見出したといいます。
芸術系の大学から販売員になり、社内異動でPR職へ
藤野さんは、新卒でユナイテッドアローズに入社して、今年で9年目になるそうですね。販売員からキャリアをスタートさせたとのことですが、なぜ販売員になろうと思ったんですか?
もともと芸術系の大学に通っていて、専攻がテキスタイルアートコースだったんです。アーティストを目指す道を考えたこともありましたが、勉強していくうちに、小売の方に興味が湧いてきたんです。ユナイテッドアローズはアパレル会社の中でも最大手企業の一つなので、モノの売り方から作り方まで、幅広く学ぶことができるのではないかと思い、入社しました。
なるほど。モノづくりに興味があったということなんですね。
もちろん、お洋服も好きですよ! ただ、販売の仕事もとても楽しかったですし、当初は自分が本社で働けるとは思っていませんでした。
どのようなきっかけで、販売員から本社スタッフとして異動されたんですか?
入社時は大阪で地域採用されたのですが、1年ほど経った頃に、名古屋の新店舗メンバーに選んでいただいたんです。そこでさらに1年半、販売員として経験を積み、社内公募でPR職の募集があるのを見て、応募しました。
大阪から名古屋、東京と、働く土地も変えられてきたとのことですが……不安はなかったですか?
当初は地域採用していただいているので、住む土地まで変えようとは思っていなかったんですが、仕事が楽しくて異動を重ねていくうちに、住む場所はあまり気にならなくなりましたね。
お仕事がお好きなんですね。公募に受かるために、なにか努力されたことはありますか?
まずは自店舗のお客様を増やすために、基本的な接客努力をしながら、SNS投稿やスタッフスタイリングの投稿、本社から来るスナップなどの依頼にはなるべく手を挙げるなど、社内PR活動には力を入れていました。
ブランドの「なんでも屋さん」として、幅広い仕事にチャレンジ
現在はどんなお仕事をされているんですか?
PR職は販売員だった私からすると、転職したのかと思うほど仕事内容が変わりました。私は『green label relaxing』というブランドのPRを担当しているのですが、シーズンごとの施策を考えて企画から撮影まで進行する、まるで編集者のような仕事をする時もあれば、ブランドのSNSアカウントやHP、店舗で扱うコンテンツの作成・進行をすることもありますし、サンプルを雑誌やテレビなどのメディア様にリースする手配をしている時もあります。
数え始めたらキリがないのですが、ブランド露出に関わることはなんでもやる、ブランドのなんでも屋さんです。社外だけでなく、社内の他部署との調整役になることも多いので、ブランドと外の世界とのハブのような存在ですね。
PRのお仕事ってキラキラしているイメージだったけれど、思っていたよりも大変そうですね……!
そうなんです、地味な仕事も多くて、時間がたりないこともしばしば(笑) 。だけど、販売員時代のキャリアもしっかり生きています。販売経験があるからこそ、お客様の背景を考えながら、ニーズをつかんで発信することができていると思います。『green label relaxing』はユナイテッドアローズの中でも特に幅広いニーズに特化しているブランドなので、様々な背景を持つ、様々な年代のお客様に対して響く訴求は何なのかを、日々考えています。
PRとしての業務はかなり幅広いとのことですが、思い出に残っている仕事はありますか?
自身が立ち上げに携わった「find my size」というシリーズは、特に思い入れがありますね。幅広い身長、体型の方が「自分らしいサイズの服」を見つけられることをコンセプトに、通常のサイズ展開に加えて、裾や袖だけを短くしてバランスを調整した低身長の方向けの「SHORT」、反対に裾や袖だけを長くしてバランスを調整した高身長の方向けの「TALL」を展開しています。
green label relaxing は、ユナイテッドアローズの中でも幅広いサイズを展開しているブランドなんです。中には7サイズもある商品もご用意しています。私自身が低身長なこともあって、販売員時代は色々と悩みましたし、お洋服のお直し代を工面するのも大変だったので……身長や体型に関わらず、自分に合うサイズの服を誰もが探せるように、という思いをこめています。
これだけのサイズ展開があれば、誰でも自分の体型に合う服を見つけられそうですね! どんなお洋服にこのシリーズが採用されているんですか?
毎年定番のコートやパンツ、ワンピースなどがラインナップされるシーズンが多いですね。私が今履いているのも「find my size」のものなのですが、低身長の私でも、お直しナシで丈感もウエストもピッタリなんです! だいたい、どちらかが大きすぎることが多いので、私自身本当に助かっています。
パンツは特にサイズや丈感が大切ですから、きっと助かっている方も多いでしょうね。
ただ、もっと多くの方に知っていただきたいなとも思っているんです。既存のお客様の中には、毎シーズンの新作を楽しみにしてくださっている方もいるのですが、新規の顧客様にも広めていきたいです。基本的にWeb販売を行っているラインにはなるのですが、店舗限定でポップアップイベントを行ったり、店舗から取り寄せ販売を行ったりと、色々工夫してみています。
企画を進行する中で、特に嬉しかったことはありますか?
自分の意見が反映されてできあがった商品を初めて目にした時は、やっぱり感動しましたね。それに、お客様からのリアルなお声が届く時も、すごく嬉しいです。店舗を離れてから、お客様と直接関わる機会は少なくなってしまったけれど、SNSに届くお礼のメッセージが特に励みになります。気持ちのこもったコメントを読むと、お店で直接、接客させていただきたいなって思います。 直接お礼を言いたいなって。
「find my size」では商品企画に近いこともご経験されたんですね。
社内のパタンナーさんやデザイナーさんと一緒に考える機会をいただけたのは、とても貴重な経験でした。他部署の人と仕事で関わる機会は限られていますし、社内で新しいつながりを得ることができて、皆さんの仕事の仕方を間近で見れたことも嬉しかったです。
PR職はなんでも屋さんだとおっしゃっていましたが、色々な仕事を経験してみることで、自分に向いている仕事を発見するきっかけにもなりそうですね。
発信活動も社内交流も「相手に合わせたコミュニケーション」が大切
PRとしてはゼロベースで本社にジョインしていると思うのですが、5年間お仕事をされて、誰かに情報を届けるためのコツはつかめましたか?
PRの部署に来て学べて良かったなと思うのは、情報を伝える手段は何通りもあることを知れたことかなと思います。販売員だった時は、接客という手段しか知らなかったけど、SNSだけでなく、ブランドイメージを上げるコンテンツの作り方は色々あるし、協力してくださる他メディアさんもいらっしゃいます。
自分が大切にしているのは、どんな時も「お客様の立場になって考える」ことですね。売りたいものがあるから施策を打つという考え方ではなく、商品を買ってくださるお客様のことを想像して、どの手法なら思いが伝わるのかを意識しています。
届ける側の一方通行な思いを伝えるだけでなく、届けたい人の現状を考えてくださっているところに、思いやりを感じますね。
私たちの仕事は、コミュニケーションが大切だと思うんです。SNSの発信も、いかにお客様に一緒に参加していただけるかで、インプレッションは大きく変わりますし、撮影や調整の業務はリアルな交流が大切なので、今はほとんど出社しています。PRはブランドとお客様をつなぐことが仕事ですし、何か制作物に関わる時も、やっぱりメールだけではなく、直接リモートで話して 意見を交わしたほうが、相手に伝わりやすいと思っています。ある意味、接客をしていた時以上に「どうコミュニケーションするか」に重点を置いて働いています。
今後、どのようなキャリアを描いていきたいですか。
販売~PRと、一貫してコミュニケーションを軸にキャリアを築いてきたので、今後もそのスキルが生きるような仕事を続けていきたいです。ただ、PRの仕事は奥が深くて、5年続けても効率化できないこと、まだ知らないことがあったりもするので、今後もしばらくはこの仕事を続けて、PRという仕事の在り方を追求していきたいですね。
職人気質がキャリアへの考え方にも現れていますね(笑)。
『green label relaxing』のお洋服は訴求できる層が広くて、ビジネスシーン用にご利用の方はもちろん、親子でお買い物に来てくださる方もけっこう多いんです。ブランドの成長とともに、20代の頃にオフィスカジュアル服を購入されていた方が子育てを始めて、休日用のカジュアル服をパートナーやお子さんと一緒に買いに来てくれたり……。お客様と一緒に歳を重ね、愛し続けてもらうブランドでいるために、お客様や時代に合わせて変化しつつ、新規のお客様へ届く発信をしていきたいです。
※この記事は2024年04月24日に公開されたものです