「了解しました」失礼説は正しいの? 「承知しました」との使い分けを、敬語のプロが徹底検証【例文あり】

ビジネスにおける会話やメール、そんなにおかしい日本語は使っていないつもりだけれど、正しいかどうか、正直あやふや……。「話す・書く」のプロ、山口拓朗さんが、 アラフォーだからこそおさえておきたい、オトナなモノの言い方を伝授します。

「了解しました」失礼説は正しいの? 「承知しました」との使い分けを、敬語のプロが徹底検証【例文あり】

理解したことを示す 「了解しました」「承知しました」。目上の人にはどう使うべきか

会話やメールを問わず、「理解した旨」を相手に伝えるときに、あなたは、どんな言葉を使っていますか? 「わかりました」「了解しました」「承知しました」。どれでも問題ないように感じるかもしれません。

しかし、もしも、その言葉を受け取った相手が「言葉の使い方が間違っている」「失礼だ」「マナーがなっていない」と感じるとしたらどうでしょう。その言葉を使っていたあなたは、知らず知らずのうちに、相手からの評価を落としているかもしれません。

軽視できないのが、相手が目上の人のケースです。日本には敬語の文化があります。同僚や目下の人に対して使える言葉が、そのまま目上に使えるとは限りません。

「了解しました」は失礼にあたるの? 敬語のプロも悩ましさを感じている

では、目上の人に「了解しました」と言うのは失礼にあたるのでしょうか? 答えはノー。「了解しました」は敬意の高い言葉ではありませんが、少なくとも失礼な言葉ではありません。しかし、昨今、世の中(とくにビジネスシーン)には、「失礼だ」と感じる人が少なからずいます。

これは、実に悩ましい問題です。つまり、あなたがどれほど敬いの気持ちを込めて「了解しました」と言っても、相手に「失礼だ」と思われてしまう恐れがある、ということです。

言葉の意味やニュアンスは人々の「認識」によって変化します。先ほど「答えはノー」と書きましたが、その答えもまた流動的であり、すでに一部の人の認識において「イエス」でもあるのです。

「了解しました=失礼だ」と感じる人がいる以上、かたくなに使い続けることにどれだけのメリットがあるのでしょうか。「了解=失礼だ」と思っている人に対して、「わたしは失礼だと思わないので」という理由や、「『了解』の本来の意味は~」「『了解』の語源は~」という講釈を持ち出しても仕方ありません。

「了解しました」はなぜ、失礼にあたると思われるのか?

そもそも「了解」は「わかる」の漢語表現です。「了」と「解」はどちらにも「わかる・理解する」の意味があり、似た動詞を重ねて強調している言葉です。

【了解】①物事の筋道・事情などを、よく理解して承認すること。(出典『学研現代新国語辞典』)

つまり、「了解=よくわかった」なのです。目上の人に「よくわかった」と言えば、「失礼だ」と思われても仕方ありません。

しかし、問題は「了解」を丁寧に表現した「了解しました」「了解いたしました」などが失礼にあたるかどうかです。この判断については、有識者の間でも賛否が分かれています。

「了解しました」ではなく、「了解いたしました」ならOK?

「了解」という言葉は、それ自体が失礼な言葉というわけではないものの、組み合わせる言葉によって敬意が変化することは確かなようです(以下参照)。

【目上の人に対して「了解」は使えるか?】

「了解」 ← 失礼

「了解です」 ← 失礼

「了解しました」 ← 丁寧ではあるが、高い敬意はない

「了解いたしました」 ← 目上の人に使うに十分な敬意がある

もっとも、「了解」という言葉自体を「失礼だ」と感じている相手に対しては、いくら「了解しました」や「了解いたしました」と語尾を丁寧にしても、失礼という気持ちは変わらないのかもしれませんが。

「了解しました」失礼論はどう広まった?(その1)10年以上前のビジネス書が発端か

本来、失礼にはあたらない「了解しました」や「了解いたしました」が失礼と言われるようになったのは、いつ頃からでしょうか。どうやら今から10年以上前のビジネス書に「『了解しました』より使える『承知しました』」という見解が示されたのがはじまりのようです。

また、2010年以降、インターネットメディアで「よく使っているこの言葉は実は間違いである」という切り口の記事が量産されたことも、「了解しました失礼論」を後押ししたようです。

以来、少しずつ形を変え……やがて、ベストセラー書籍などにも「目上の人に『了解』は不適切」と紹介され、広まっていったようです。

一方で、2018年3月に放送されたTBSテレビ番組『この差って何ですか?』のなかで、「目上の人に『了解しました』を使ってはいけない」という説が紹介されると、ツイッターをはじめとするSNS上で賛否が巻き起こりました。

言葉は時代のなかで常に変化していくものですが、「了解しました」については、現状、「失礼」と「失礼ではない」の間を激しく揺れ動いている時期といえます。

「了解しました失礼論」はどう広まった?(その2)「了解」には気軽に使える応答の用途があるから…?

これは筆者の見解ですが、「目上の人に対して『了解』を使うのは不適切」という見解が生まれたことには、もうひとつ理由があるように思います。それが、以下の応答の用法です。

【了解】②〔無線通信などの対話で〕「分かった」「聞こえた」の意で使う語。(出典『学研現代新国語辞典』)

このように、無線などでの通信で応答する際にも「了解」はよく使われます。「標的を確認せよ」「了解」——のようなやり取りです。また、この使い方は、友人や仲間、家族の間でもよく見られます。「明日、ゴミを出してくれる?」「了解」といった具合です。

そう、「了解」には、目上や目下に関係なく“気軽に使える応答の用途”があるのです。この用途があることも、「了解しました失礼論」への賛同者を増やした一因なのではないでしょうか。それは、たとえ「了解(いた)しました」のように表現を丁寧にしても、拭いきれないイメージなのかもしれません。

「了解」に代わる言葉はないかな? と考えたときに、「承知しました」という言葉があったことも、「了解しました」離れを加速させた理由のひとつではないでしょうか。

たしかに、家族や友人など気心の知れたい相手に「承知しました」と言う人はあまり見かけません。それが、この言葉が“改まった表現”として認識されている証左です。少なくとも「承知しました」という言葉に対して「失礼だ」という声はほとんど聞きません。

また、「承知しました」と同等の表現には「承りました」や「かしこまりました」もあります。そうなると、物議を醸している「了解(いた)しました」を、わざわざ使う必要性がなくなります。「承知しました」をはじめとする代替表現を使ったほうが無難だからです。

「了解(いた)しました」「承知しました」「かしこまりました」の使い分け

【同僚同士の会話】 

 同僚A「清水、このコピー任せてもいいかな?」

○同僚B「了解(OK/わかった)」

【部下と上司の会話】 

 部下「ここに資料を置いておきます」

○上司「了解(OK/わかった)」

このように、相手が同僚か部下であれば「了解」「わかった」「OK」でも問題ないでしょう。一方、外部の人や上司、目上の人に対して「了解」を使うのはリスクがあります(相手に「失礼」と思われかねません)。

【取引先(目上)との会話】 

×自分「わかりました」

×自分「了解です」

△自分「了解しました」「了解いたしました」

○自分「承知しました」

相手が取引先(目上)の場合は「承知しました」が適しています。くり返しになりますが、「了解しました」や「了解いたしました」は「了解」や「了解です」よりは丁寧なものの、人によっては「失礼」と受け取る人もいます。

ちなみに、「承知いたしました」は「二重敬語ゆえ使ってはいけない」という意見がありますが、これも判断が難しいところです。たしかに、「承知」はひとつの単語であり、そこに謙譲の意味は含まれていません。

ただし、謙譲語「承る」の「承」の字を含んでいるため、「承知」を謙譲表現と捉えている人も少なくありません。現状、「承知しました」と「承知いたしました」は、どちらも許容と考えていいのではないでしょうか。

【お客様(目上)との会話】 

×自分「わかりました」

×自分「了解です」

△自分「了解しました」「了解いたしました」

○自分「承知しました」「承知いたしました」

○自分「承りました」

○自分「かしこまりました」

お客様相手であれば、「引き受ける」の謙譲表現である「承りました」や「かしこまりました」を使うことで、より高い敬意を示すことができます。

賛否が分かれる過渡期の言葉には、“寛容”さを示したい

「了解しました」や「了解いたしました」が失礼か否かは、答えが出しにくい問題です。

いっときは「了解しました失礼論」が広まりましたが、昨今では、揺り戻しが起きて「『了解』は失礼な言葉ではない」という見解が巻き返しを図りつつあります。現状、目上の人への使用の有無は、それぞれが決めるしかなさそうです。

ひとつ言えるのは、このように使用の正否が難しい言葉については、<使っている人に対して寛容でありたい>ということです。少なくとも筆者は、目下の人に「了解(いた)しました」と言われても、目くじらを立てることはありません。

なぜなら、目下の人は敬意を込めて言っている可能性もあるからです。もちろん、これは、「了解しました」に限らず、賛否が分かれる過渡期の言葉、すべてに言えることですが。

(文:山口拓朗)

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この記事のライター

伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)他の著作がある。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

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