世界をクラクラさせたジョニー・ウィアーがドラマ出演の報。美しき表現者の新たな挑戦にワクワク!

フィギュアスケート、なかでも男子選手のすぐれた体術をこよなく愛するエンタメライターが、素人なりの偏愛を綴る、冬季限定コラム。

世界をクラクラさせたジョニー・ウィアーがドラマ出演の報。美しき表現者の新たな挑戦にワクワク!

2018年の年末、アメリカのショービズ界から日本へビッグニュースが届きました。フィギュアスケートをテーマにしたNetflixの新ドラマ『Spinning Out(原題)』(2019年配信)に、なんとジョニー・ウィアーが出演するらしい! フィギュア解説者やファッショニスタとしてメディアで見る機会が多いジョニーは、これまでチョイ役で映画に出演したことはあったものの、本格的な演技を見るのは初めてだからうれしい! 思えば現役時代から、ジョニーはいつ役者になってもおかしくないエンターテイナーぶりでしたよね。ある時はスケート靴をはいた天使、ある時はスタイリッシュな美の化身、ある時は氷上にまき散らされた甘い劇薬……! まさに全身を使って表現するため、そして被写体になるために生まれてきたような人だと思います。

20代前半くらいまでのジョニーは、バレリーナのような「白鳥」、今季の羽生結弦選手がトリビュートしている「秋によせて」など、中性的で優美な演技が印象的でした。そこへ甘い毒のようなものが混ざり始めたのは、2009-2010シーズンだった気がします。SP(ショートプログラム)の「I Love You,I Hate You」では、蠱惑的な仕草とフィニッシュの投げキッスで嬌声を浴び、EX(エキシビジョン)の「Poker Face」では、Lady GaGaばりのフェイスペイントをしてなまめかしく身を翻す……。その姿を見た時、強烈な中毒性のある未知の何かを受信してしまった私は、2日ほどボンヤリした挙げ句、夢にまで見る始末。それと同時に、ポップスター的なダンスのリズムをこんなにもガッツリ装備していたのか! と、その身体表現の幅広さに震えました。

独創的なジョニー・ワールドは、その後のアイスショーや、プロスケーターになってからのプログラムでさらに開花しました。Lady GaGaやビヨンセの楽曲群で滑るアバンギャルドなパフォーマンスから、LMFAOの「Sexy and I Know It」のパリピなダンスに至るまで、鋭利なセンス全開! それらが安っぽくならず品格を感じるのは、しなやかに伸びる四肢、ビシッとした屈強な体幹、エレメンツの隅々に美意識を行き渡らせる技術……そのすべてを備えた本物のアスリートだからでしょう。あまりに革新的な存在のため、大胆な言動やセクシャリティがスキャンダラスに取り上げられることもあったけれど、その本質はいつでも誠実なアスリートです。現役生活のラストシーズンとなった2012年、1年間の休養期間を経た復帰戦だったにもかかわらず、初めてSPとFSの両方で4回転に挑んだ気骨は忘れられません。また、プロになった後も人気に甘んじることなく、技術面が衰えないよう鍛錬し続けたいと発言しているのもカッコいい!

イラスト:ミーハーdeCINEMA

プロスケーターとしての代表作のひとつ「Creep」は、独自の人生を突き進むジョニーがたどりついた、究極の自己表現かもしれません。ロングスカートをはためかせて踊りながら、「自分らしく生きたい」と切実に叫ぶようなプログラムには、もはや表現を超えた哲学的な凄みを感じました。エンターテイナーとアスリート、屈強さと優美さ、生命力と儚さ、聖と俗……そんな相反するものの彼岸を行き来しながら、血の通ったオリジナリティを体現しているからこそ、ジョニーはあんなにも美しいのです! 

ジョニーが持つ天性のリズム感や深い人間力は、名優と呼ばれる人々には必ず備わっているもの。だからこそ、ジョニーはきっと役者としても輝くに違いない! と思っています。『Spinning Out』で演じるスケーターのゲイブは、一見おおらかだけど、ライバルを倒すためなら手段を選ばないキャラクターだとか。結構アクの強そうな役なので、どんなジョニーが見られるのかワクワク……。今回は本人と同じスケーター役ですが、多彩なプログラムの世界に染まってきたジョニーは、もっと幅広い役も演じられそう。たとえば2012-2013シーズンのFSでは、映画「レクイエム・フォー・ドリーム」の劇中曲を使用。プログラムのテーマは“フェニックス=不死鳥”というポジティブなものでしたが、「ブラック・スワン」で有名なダーレン・アロノフスキー監督のダークな映像詩と、ジョニーの水もしたたる麗しさのコラボに胸騒ぎを覚えたので、いつか闇を感じる作品で退廃的な美を演じてほしい! ちょっとした毒気とオシャレ感のある作品も似合うと思うので、フランソワ・オゾン監督、トム・フォード監督、グザヴィエ・ドラン監督のような世界観に入るジョニーも見たいです。

フィギュアスケートは表現とスポーツの融合なので、エンタメとの親和性がある気がするけれど、これまで選手が出演した作品は本人役やカメオ出演が多く、その演技力はまだまだ未知数です。そんななか、羽生結弦選手が出演した「殿、利息でござる!」は、選手がキャラクターを背負って出演した貴重な映画。羽生選手が演じたのは、仙台藩の殿様役。どこか非現実的な君主感というパブリックイメージを役にスライドさせつつ、凛々しく気品のある所作、器用なセリフ回しで、初演技をサラッとこなしてしまったカンの良さが恐ろしい! また、フィギュアスケートと歌舞伎を融合させたショー「氷艶 hyoen2017『破沙羅』」には、セリフはなかったものの、髙橋大輔、荒川静香、鈴木明子、織田信成、村上佳菜子らがキャラクターに扮して登場。中でも源義経を演じた髙橋選手と、悪役・市川染五郎との一騎打ちシーンは、伝統芸能の大物とトップスケーターが火花を散らす貴重な瞬間でした。刀を手にリンクを疾走する髙橋選手の殺陣は、さすがのスピード感とセンス。ぜひ映画やドラマでもアクションに挑戦してみてほしいです!

そしてタイムリーなことに、先日(1月20日)放送されたドラマ「グッドワイフ」(TBS系)には、村上佳菜子がゲスト出演。宝飾店の店員役を演じていましたが、美しい姿勢と聞き取りやすいセリフで、こちらも意外なほどハマっていました。やっぱりリズム感のある選手は、演技に向いているのかも!? 今後もっとフィギュアスケーターが役者業に挑戦していけば、フィギュアスケートとエンターテインメントの世界がどんどんつながって、新たな楽しみが生まれそう!

(文:白山氷子/イラスト:ミーハーdeCINEMA)

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第1回 おかえりなさい、髙橋大輔! サプライズ復帰で再着火したフィギュア熱
第2回 羽生結弦がプルシェンコ&ウィアーの名プログラムをトリビュート!
第3回 トリプルアクセルとともに生きた浅田真央への愛を叫ぶ!
第4回 バトル、ランビエール、アボット……振付師になった名選手たち
第5回 セルゲイ・ヴォロノフ、31歳の戦いはデニス・テンと共に
第6回 全日本フィギュア選手権で目撃した、偏愛的名場面7つ!
第7回 世界をクラクラさせたジョニー・ウィアーがドラマデビューの報!
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この記事のライター

ライター、インタビュアー。映画雑誌、テレビ雑誌、Webサイトなどを中心に、エンターテインメント記事全体に関わる。主なインタビュー対象は俳優、女優、アイドル、映画監督、プロデューサーなど。趣味は読書、映画鑑賞、音楽鑑賞。フィギュアファン歴は10年ほどで、一番好きなプログラムはプルシェンコ選手の『ニジンスキーに捧ぐ』。