妊娠初期の味覚の変化
妊娠すると、気持ちの悪さや吐き気、食欲がなくなるなどの変化が現れることがあります。いわゆるつわりですね。明確なメカニズムは解明されていませんが、妊娠すると分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が一因となっているとも言われています。
つわりの症状そのものや重さは人それぞれ。妊娠の影響で今まで大好きだった好物が食べられなくなったり、特定の食べ物ばかりが欲しくなるなど、食欲に変化が見られる妊婦さんは少なくありません。
吐き気や胃のむかつきがあまりにもひどいときは「食べられるものを、食べられるとき、食べられるだけ」でOKです。でも、元気なときやいくらか食べられるときにも「食べられるものを、食べられるとき、食べられるだけ」を当てはめてしまうのはちょっと待って!
次の項目では、具体的に妊婦が食事でどう気をつけるべきかというポイント、積極的に取り入れたい食べ物、極力避けたいNGな食べ物を紹介しますのでチェックしましょう。
妊娠中の食事で気をつけること
1)1日3食、栄養バランスよく食べる
毎日の食事は、1日3食、栄養バランスのよい食事をして、適切な栄養とカロリーを摂りましょう。一日に摂る食品が多すぎたり、少なすぎたりすることがないよう、いろいろな食材をまんべんなく食べることが大事です。また、食事の時間が不規則になると食べ過ぎてしまいがち。そうなると太りすぎてしまい、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった病気を引き起こしやすくなります。これらは難産の原因になるだけではありません。妊娠高血圧症候群は、悪化すると母子ともに命の危険にさらされますし、妊娠糖尿病の場合、赤ちゃんが巨大児となるリスクを高めたり、生まれてすぐに赤ちゃんが低血糖症を引き起こしたりすることがあるのです。
また、体重の増加が気になったからといって絶食するのはNG。特に健診前日に絶食をすると、尿や血液などの数値が変化してしまって、正確な結果が出せなくなります。なるべく普段通りの食生活をしましょう。
2)よく噛んで食べる
よく噛むことで満腹中枢が刺激されるので、食べ過ぎの防止が期待できます。また、食事時間が長くなるので、血糖値の上昇が緩やかになるというメリットがあります。食べ物が細かく砕かれて胃腸での消化吸収が良くなるでしょう。唾液も多く分泌されるので、妊娠中に起こりがちな歯周病などの口腔トラブルを防ぐことにもつながります。
3)野菜を意識的に摂る
摂取カロリーを抑えられ、妊娠中に必要なビタミンやミネラルを摂取できます。また、食事の最初に野菜を食べると炭水化物の消化吸収を穏やかにし、血糖値の急激な上昇が抑えられ、インスリンの過剰な分泌を防止できます。野菜のほか、きのこ類、海藻類、こんにゃくといった水溶性食物繊維が豊富な食べ物も、便秘の予防・解消に役立ちます。
4)塩分や糖分は控えめに
塩分の摂り過ぎはむくみや妊娠高血圧症候群、糖分の摂り過ぎは妊娠糖尿病を引き起こします。それだけでなく、味の濃いおかずが食欲をそそり、ついついお米などの炭水化物を食べ過ぎてしまうリスクもあります。
妊娠中の塩分摂取は1日7g程度にとどめましょう。食品を買うときには栄養成分表示の「ナトリウム(塩分相当量)」をチェックしてみてください。自炊のときは、レモンや酢の酸味を効かせたり、スパイスやハーブの香りやだしの旨みを活用したりすることで、少ない塩分でも素材の味を楽しめます。
5)加工食品やお菓子を控える
お惣菜やインスタント食品、お菓子などには、食品添加物が含まれているほか、手軽に食べられるだけに過剰なカロリー摂取をしてしまうことになりかねません。できるだけ避けたくても、体調がすぐれず自炊ができない日もあり、全く摂らないというのも難しい話。せめて食べる回数を減らしてみてはいかがでしょうか? 例えばラーメンを食べるときは野菜を足してスープは必ず残すなど、栄養バランスを考えて塩分や脂肪分を摂り過ぎないように意識しましょう。
6)水分補給は1日2Lを目標に
妊娠中、1日2Lの水分摂取を心がけましょう。非妊娠時は、1日の目標水分摂取量は1Lから1.5Lぐらいが目安になりますが、お腹に赤ちゃんがいる時はいつもより500ml~1L増やしましょう。むくみが気になるからといって、水分補給を控えてしまう妊婦さんは少なくないようです。しかし、水分をしっかり取ることで血液の流れが良くなり、赤ちゃんにも健康的な血液を届けることができます。逆に不足すると脱水症状を起こしたり、膀胱炎になりやすくなったりします。妊娠中の水分補給には水かノンカフェインのお茶が適しています。同じ水分でも清涼飲料水やジュースは糖分過多になり、妊娠中に必要な体重コントロールの妨げになる可能性があるので控えましょう。

【助産師監修】妊娠中の飲み物「おすすめ」4選 &「注意すべき」3選
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/1146妊娠中は血液の量が増加するため、意識的に水分を補給する必要があります。妊娠中の水分摂取の目安は1日1.5~2リットルです。ママの身体にもおなかの赤ちゃんにも優しい飲み物を取り入れたいですよね。そこで今回は、妊娠中におすすめの飲み物をご紹介! 摂取を控えたほうがいい飲み物についてもご紹介します。
7)サプリメントに頼りすぎない
近頃は妊婦さん向けの葉酸や鉄などのサプリメントがたくさん出回っていますね。とても手軽で便利ですが、市販のサプリメントの中には妊娠期に適さないものが含まれている場合もあります。栄養摂取の基本は食事からを第一とし、サプリメントはあくまで補助と考えましょう。また、市販のサプリメントを服用するときは、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。

赤ちゃんの健やかな成長のために、妊娠の1ヶ月以上前から妊娠初期までに葉酸が不可欠な理由を知っておきましょう。
8)調理前&食事前の手洗いを徹底
妊娠中に注意したいのは、食べ物のことだけではありません。調理前、食事前の手洗いをしっかり行うことも、大切な注意事項の1つです。手に付着した菌やウイルス、寄生虫などが料理を介して体の中に入ってしまう可能性があります。誰しもが普段から気をつけるべきポイントですが、妊婦さんは特に注意が必要です。
妊娠中にオススメの食べ物・食材
1)緑黄色野菜
緑黄色野菜には、妊娠中だけでなく普段から健康的に過ごすために必要不可欠なビタミン類や葉酸、鉄分、食物繊維、カルシウムなどが豊富に含まれています。旬の時期は栄養価が高まるので、季節の野菜を積極的に取り入れるといいですね。特にモロヘイヤ、ほうれん草、春菊にはお腹の中の赤ちゃんの成長を促し、授乳中には母乳作りのサポートをしてくれる葉酸が豊富。血液の流れを良くして体を温める作用があるビタミンEも、妊婦さんと赤ちゃんの健康を支えてくれますよ。
生のまま食べるよりも、加熱してかさを減らしたほうがたくさん食べられます。さっぱり食べられる温野菜サラダや、汁に溶け出した栄養も摂取できるスープや味噌汁がオススメです。

【医師監修】妊婦はビタミンAの過剰摂取に注意! その理由と上手な摂り方
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/1158妊娠中は、おなかの赤ちゃんのためにも、しっかりと栄養を摂りたいものですが、栄養素の中には、過剰に摂取すると、かえって赤ちゃんに悪影響を及ぼすものもあります。その1つが「ビタミンA」です。ここでは、ビタミンAを妊娠中に摂りすぎてはいけない理由や、妊娠中の摂取量の上限などについてお話していきます。
2)肉や魚の赤身
赤ちゃんの体や脳をつくるために重要となる栄養素がたんぱく質。良質なたんぱく質を含む肉や魚は妊娠中も欠かさず食べたいものです。ただし、脂身が多い部分はカロリーも高いため、肉であれば赤身やささみ、魚もトロより赤身を選んで食べるのがいいでしょう。赤身の肉や魚を上手にとれば、貧血の防止にもつながります。
3)大豆製品
たんぱく質が豊富な大豆製品は、つわりで肉や魚を体が受け付けないときに取り入れたい食材です。納豆には骨を強くするビタミンK、枝豆には葉酸が含まれています。絹ごし豆腐などにはちみつやメイプルシロップをかけると、スイーツのような味わいになるので、「たまには甘いものが食べたい!」というときのおやつにも最適。

煮た大豆を濾してできる「豆乳」。ヘルシーなイメージで、特に女性に根強い人気があります。では、妊婦さんの場合はどうでしょう? 普段どおりに飲んでも良い?むしろ普段より積極的に飲むべき?逆に妊娠中は控えたほうが良い?妊娠中の豆乳摂取について解説します。
4)きのこ類
きのこ類は低カロリーで食物繊維が豊富。妊娠中の体重管理や、便秘解消にも役立ちます。また、きのこ類はグアニル酸といったうまみ成分も強いので薄い味付けでもおいしく食べることができ、減塩中の妊婦さんにとっても強い味方。炒め物や蒸し物、鍋などさまざまな料理法で食べることができるので、飽きずに取り入れられるのも魅力です。
5)乳製品
妊娠中は、赤ちゃんの骨や歯をつくるためにカルシウムが多く必要になります。牛乳やヨーグルトなどの乳製品は手軽にカルシウムを摂取できるうえ、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルも含まれている優れもの。また、ビフィズス菌など善玉菌が含まれているヨーグルトドリンクなどは腸の調子を整えてくれるので便秘気味の妊婦さんにもおすすめです。

【医師監修】妊婦が牛乳を飲むと赤ちゃんに悪影響はある? アレルギーは?
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/7128日本人の約2人に1人は何かしらのアレルギーを持っていると言われています[*11]。アトピー性皮膚炎や牛乳アレルギーなどは赤ちゃんにも多い病気です。そのためか、「ママが妊娠中に牛乳を飲むと、赤ちゃんがアレルギーになりやすい」という“説”があるようですが、これは本当なのでしょうか?詳しく解説します。
妊婦が避けたほうがいい飲み物・食べ物
1)アルコール類
お腹の中の赤ちゃんは母体から胎盤を通して栄養をもらっているので、妊婦がアルコールを摂取すれば、栄養と同じようにして届いてしまいます。胎児性アルコール症候群を引き起こす原因となるため、妊娠中は飲酒をやめるようにしましょう。胎児性アルコール症候群になると小脳低形成などの脳の障害や成長の遅れを引き起こす可能性があります。妊娠に気づいたら、すぐに禁酒しましょう。心配なら、かかりつけのお医者さんにいつごろまで飲酒していたかを話し、相談すると良いでしょう。
2)魚介類
魚は、妊娠・出産のための栄養バランスの良い食事には不可欠です。ところが、魚の一部には、自然界に存在する水銀が食物連鎖によって蓄積されているものがあります。このため、魚を極端にたくさん食べるという偏った食べ方によって、お腹の赤ちゃんに影響を与える可能性が指摘されています。適切な量は、例えばキンメダイやクロマグロ(本マグロ)は1週間に刺身で1人前(80g程度)、切り身で1切れ(80g程度)とされています[*1]。
また妊娠中は、普段なら何ともないものが原因で食中毒になってしまう可能性もあり、刺身や生の貝類は注意が必要です。このような理由から、魚介類の生食は少量に限るようにしましょう。
3)生卵
卵はとても栄養価が高いので、妊娠中も積極的に摂取したいです。ただし、生卵は注意が必要です。卵の殻には、サルモネラ菌が付着していることがあり、母体にも危険を及ぼす可能性があるため、生卵は控えたほうが無難です。
サルモネラ菌は75℃で1分以上加熱すると死滅するので、卵は加熱調理をすれば安心です。オムレツなどがベターですが、とろりとした黄身の食感を楽しみたいときは、温泉たまごにするのもいいかもしれません。なお、自家製のマヨネーズやドレッシングにも生卵が使われていることがあるので、注意したほうがよいでしょう。
4)生肉
生肉には寄生虫であるトキソプラズマが付着している可能性があります。トキソプラズマは全ての哺乳類と鳥類に感染する可能性がある寄生虫で、ネコの尿や糞や、生肉から感染するといわれています。
妊娠中に初めて感染した場合、胎盤を通して赤ちゃんに伝染し、脳や目に障害が起こる可能性があります。脳に髄液がたまる水頭症や視力障害などがその一例です。
トキソプラズマは67℃以上の熱で死滅します。お肉を食べるときはしっかり加熱してくださいね。もしうっかりレアのお肉を食べてしまった場合、トキソプラズマに感染している可能性があるため、病院で検査を受けましょう。
5)カフェインを含む飲物
カフェインを含むコーヒーや紅茶といった飲物を、妊娠前から楽しんできた方は多いと思います。気持ちを落ち着かせ、ストレスを和らげる等の効用もあります。しかし、大量のカフェイン摂取は、低体重児として出生するなど胎児の発育や妊娠の経過に悪影響を与える可能性も示唆されています。
WHO(世界保健機構)では、一日のカフェイン摂取量が300mg(200mlカップならばコーヒー2.5杯程度)を超える妊婦は摂取量を制限するようにとしていますが、200mg以下(200mlカップならばコーヒー2杯弱程度)の摂取にとどめるよう勧める国もあります[*3]。
総合して考えると、コーヒーは1日2杯程度なら問題ないようですが、カフェインレスのコーヒーや紅茶がスーパーや赤ちゃん用品店等で買えますので、取り入れてみるのもいいかもしれません。できれば、カフェインが含まれていない麦茶やハーブティーなどの飲み物を選ぶようにしましょう。
6)インスタント&レトルト食品
妊娠中は手軽ですぐに食べられるインスタント食品やレトルト食品につい頼ってしまいがちですが、これらの食品は一般的に塩分や食品添加物が多く使われています。こういった点に気を配りながら、上手に利用しましょう。
7)揚げ物
妊娠中、特につわりの時期はフライドポテトなどの揚げ物を欲する妊婦さんも多いようです。しかし、揚げ物は衣にたっぷり油が吸収されていて高カロリー。食べ過ぎると体重管理にも影響が出てしまいます。どうしても揚げ物が食べたいときは、衣を薄くつけるようにする、食材をヒレ肉などの脂身が少ないものにするなどして工夫しましょう。
8)辛い味付けのメニュー
妊娠中、味覚が変化し、辛いものが突然食べたくなる妊婦さんも多いようです。つい辛い調味料で味付けしたくなる……なんてエピソードも多いですよね。妊娠中は辛いものを食べてもごく普通の量なら、問題はありません。キムチは発酵食品なので便秘対策にもぴったりです。ただ、いわゆる激辛フードには要注意です。辛い食べ物は塩分もたくさん含まれているので、塩分の影響でむくみやすくなることも。もともと塩分過多、高血圧気味の妊婦さんは特に気をつけなければなりません。また、激辛フードは胃腸にも刺激が強く、下痢を引き起こすこともあります。下痢による脱水症状も心配なので、ほどほどの辛さに留めましょう。
9)ナチュラルチーズ(加熱殺菌していないもの)
加熱殺菌されていないチーズは、リステリア食中毒の原因になることも。リステリアという細菌は、塩分に強く、冷蔵庫内でも増殖する可能性があるため、非加熱のカマンベールやブルーチーズなどの乳製品は避けたほうが安心です。また、生ハムやスモークサーモンなど食肉・魚介の加工品もリステリア菌の汚染が心配されます[*2]。
注意事項が多くてパニック !? でも食事の基本は……
この他にも、ひじきのヒ素、ビタミンAの過剰摂取や妊娠中の食事(アレルゲン)について……医学の進歩によって気をつけるべき食品の種類が増え、調べれば調べるほど心配になってしまうかもしれません。とはいえ、上記に挙げたもの以外は、摂取量に気をつければ問題ないという食品がほとんどなのです。要は「バランスよく、ほどほどに」。どうしても不安な食品は食べるのをやめ、産婦人科医や助産師に相談してみるのもいいと思います。
まとめ
妊娠中の食事は、妊活中の食事と気をつけたい点に大きな違いはありません。基本的には栄養バランスのとれた食事を三食きちんととることが大切です。ただ、妊娠期間はホルモンバランスの変化の影響などで味覚が変化し、食事の好みが変わることもあります。特に妊娠初期はつわりなどもあり、食事のとり方に悩んでしまうかもしれません。また、妊娠後期の食事は、便秘や貧血、むくみなどの対策もポイントになります。妊娠中の食事はママにとってもお腹の赤ちゃんにとっても重要ですが、過剰に気にしすぎるとかえってそれがストレスとなってよくない影響を及ぼすことも。「あのレシピは辛いものだからNG、あの食材はダメ」と神経質になりすぎることなく、まずは少しずつ、できることから取り入れてみましょう。小さなことでも信頼できる相手に相談しながら、マタニティーライフと美味しい食事を楽しんでくださいね!

妊娠中はつわりがあったり食事バランスを考えたりして、食べ物の好みが変わるという話を聞いたことがあるでしょう。実際どれぐらいの人が、変化を感じたのでしょうか?妊娠出産を経験したママ、プレママに、妊娠中の味覚変化について聞いてみました。

妊娠中、体重が増えすぎると焦ってしまいますよね。つわりが軽くなって食欲も増し、気づくと血圧や血糖に影響がでることも。体重管理はとても大切ですが、闇雲に減らすのも問題です。普通の減量ブログで紹介されているようなダイエットは避けましょう。今回は妊婦さんが適正体重を保つための食事&運動をご紹介します。

[*1]厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf
[*2] 厚生労働省「これからママになるあなたへ 食べ物について知っておいてほしいこと」
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/ninpu.pdf
[*3]内閣府 食品安全委員会「食事中のカフェイン」
https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビウーマン子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.27)
※記事の修正を行いました(2019.06.06)