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2021年01月13日 16:49 更新

【医師監修】妊婦は生ハムを食べてはダメ? 妊娠中の食中毒予防のコツ

食中毒は家庭でも起こることがあり、妊娠している間は特に注意が必要になります。そして注意喚起されている食品の1つが「生ハム」。生ハムの食中毒のリスクや、食中毒予防のコツなどをまとめます。

妊娠中に生ハムを食べても大丈夫?

妊娠中に生ハムを食べても大丈夫?
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前提として、妊娠中は食中毒になりやすく、重症化しやすくなっています。またママが重症にならなかったとしても、赤ちゃんは食品由来の病原体の影響を受けやすいことがわかっています[*1]。

そして多くの食中毒菌や寄生虫は加熱することで死滅するので、自力で食中毒を予防する最も手軽な方法としては「洗浄・加熱」を十分にすることにつきます。

生ハムが感染源となる可能性があるのは「リステリア菌」と「トキソプラズマ(寄生虫)」による食中毒です[*2]。

どちらも日常生活圏に広く存在していて、リスクをゼロにすることは難しいと考えられているので、予防としては調理方法に気をつけ、少しでも可能性のある状態で食べることを妊娠中には避けるのが賢明です。

リステリア菌の感染リスク

リステリア菌による食中毒「リステリア症」についてまとめます。

リステリア菌に感染するとどんな症状が?

リステリア症については、妊娠女性はその他の健康な成人と比べて感染率が20倍も高いとされますが、妊婦さん自身は風邪のような症状といった比較的軽症で済むことが多いとされます[*3]。

赤ちゃんへの影響は?

胎盤を通じて赤ちゃんが感染すると早産や流・死産の原因になることがあるうえ、低出生体重児となる可能性や、赤ちゃんに髄膜炎や水頭症、敗血症、精神・運動障害などが起こるリスクが指摘されています[*3]。

生ハム以外でリステリア菌のリスクが指摘されているのは?

リステリア菌は4℃以下(つまり冷蔵庫の中)、12%の食塩濃度下でも増殖する菌です。

欧米では、加熱処理していない生乳で作ったナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモンなどを原因としたリステリア菌による集団食中毒が発生しています。

また、日本国内で販売されている乳製品や食肉加工品などからもリステリア菌が確認されています。
ただし、中心部分の温度が75℃の状態を1分間以上保つことで滅菌できますので、これを目安に加熱しましょう[*4]。

トキソプラズマの感染リスク

トキソプラズマによる食中毒についてまとめます[*5]。

トキソプラズマに感染するとどんな症状が?

後天的に健康な大人や小児が感染しても発症しないことが多いとされますが、発症した場合は感染した時期やその人の状況によってさまざまな症状が出る可能性があることがわかっています。

赤ちゃんへの影響は?

妊娠中の女性が初めて感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんに感染して「先天性トキソプラズマ症」となるリスクがあります。赤ちゃんへの影響はさまざまで、一概には言えません。症状が現れない場合もあるものの、流産・死産につながることや、赤ちゃんの成長過程で、時期を経て発症するリスクもあるとされています。

生ハム以外でトキソプラズマのリスクが指摘されているのは?

次のような食品や機会がトキソプラズマの感染リスクとされています。

・感染している肉(豚、羊、山羊)を生または十分に加熱しないで食べる(加熱処理されていない生乳も)
・感染しているネコの糞に触れる
・素手で砂場遊びやガーデニングをして、汚染された土砂に触れる

ただし、トキソプラズマは加熱調理や低温殺菌で死滅します。加熱の目安は55℃で5分以上、肉の場合には中心が67℃以上になるまで、冷凍の場合は中心が-12℃以下になるまで凍結することが有効とされています[*6]。燻製や乾燥、塩漬けなどの保存処理の効果は明らかになっていません。

予防の落とし穴にご用心

基本的に妊娠中は生食を控え、食品の保存・洗浄・加熱に普段以上の配慮をしようと考える人は増えていて、松峯先生もよく食べ物についての相談を受けるそうです。

松峯先生
「妊婦さんからの相談で『卵』『寿司』『生ハム』『コーヒー』について尋ねられることが多く、気をつけようと考えている人が多いと感じています」

一方で「旅先の食事」について相談を受けることも増えているとのことです。
特に「自然が豊かな場所」への旅を計画している妊婦さんから安全性を問われるものの、一概に答えられる問題ではないので、安全で楽しい旅について自身でよく考えてみてほしいと伝えています。

松峯先生
「妊娠中でも旅行に行き、リフレッシュしたいですよね。とはいえ、気をつけてはいても、帰国後に胃腸やお通じの調子がわるくなったケースもありました。リゾート地であっても衛生環境が気になる場所もあります。原因を後から確かめることはできないので、そのようなことは誰にでも起こり得ることだと思ってください。
また、もしも妊娠中に食中毒になってしまった場合、利用できる薬には制限があることからも、食中毒は『予防第一』と考えていただきたいと思います。
また、国内でも上のお子さんを遊ばせる目的でアウトドアのBBQやくだもの狩りなどを行うときには気をつけてください。妊娠全期間を通じて、予防を大事に考えて行動し、健康を守りましょう」

まとめ

妊娠中は食中毒予防の視点から食品の「保存・洗浄・加熱」に普段以上の配慮をする必要があり、フレッシュな風味を楽しむ目的で生ハムなどを生食するのは避けましょう。妊婦の間はご自身と赤ちゃんの健康第一に食べる物を選びながら、食生活を楽しんでください。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 母子衛生研究会
国際食品安全当局ネットワーク
[*2] 厚生労働省
国立感染症研究所
[*3] 厚生労働省検疫所 リステリア症 (ファクトシート),2018
食品安全委員会
食品安全委員会「加熱調理と食中毒」
[*4]厚生労働省「これからママになるあなたへ 食べ物について知っておいてほしいこと」
[*5] 国立感染症研究所「妊婦さんおよび妊娠を希望されている方へ」
国立感染症研究所「トキソプラズマ症とは」
食品安全委員会「寄生虫による食中毒にご注意ください」
食品安全委員会「食品安全総合情報システム」ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)、トキソプラズマ症予防に関する消費者向けリーフレットを公表
[*6] 内閣府 食品安全委員会「寄生虫による食中毒にご注意ください」

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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