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2021年01月13日 13:42 更新

【医師監修】妊娠すると葉酸が必要? 十分に摂りたい時期とその方法

「葉酸は妊活中や妊娠中の女性にとって大切な栄養素」と聞いたことがあっても、なぜ大切なのか、いつからいつまで摂取すべきかといった情報まで理解できている人は意外に少ないのでは。妊娠と葉酸の関係や、葉酸摂取のポイントなどを紹介します。

妊娠と葉酸の関係 どうして必要なの?

サラダを食べる妊婦
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葉酸は老若男女問わず必要な栄養素ですが、妊娠計画中~妊娠初期にはその必要性がさらに高まります。なぜなら妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児に神経管閉鎖障害という障害が発症するリスクが高まるからです。

葉酸の摂取が胎児の神経管閉鎖障害発症のリスクを低減させる

神経管閉鎖障害は本来、成長過程で閉じるはずの神経管が、なんらかの要因により閉鎖できなかったために起こる先天異常です。神経管は脳や脊髄といった中枢神経のもととなる部位です。

神経管の下部が閉じないと「二分脊椎」となり、下半身の運動障害や膀胱・直腸の機能障害を起こすことがあります。また、上部で起こると、脳が形成不全となる「無脳症」となります。

葉酸不足だけが神経管閉鎖障害の原因ではありませんが、葉酸を適量摂取することで、その発症リスクを下げられることができます。

葉酸とは? 含まれる食品とその働き

そもそも葉酸とはどんな栄養素なのでしょうか? 葉酸の特徴や働き、多く含む食品などの基本的な情報を紹介します。

葉酸とは

葉酸を含む食べ物のイメージ画像
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葉酸は水溶性(水に溶けやすい)ビタミンである、ビタミンB群の一種です。ほうれん草の抽出物から発見されたことから、この名前がついたといわれています。

名前の由来である緑黄色野菜のほか、レバーやウニなどの動物性食品にも多く含まれます。年齢や性別にかかわらず必要とされる栄養素で、成人男女の必要摂取量は1日あたり200μg[*1]とされています。

葉酸のおもな働き

葉酸は体内で赤血球の形成や、細胞増殖に必要なDNA合成などに関わっています。そうしたことから、以下のような働きがあるといわれています。

・貧血や口内炎の予防
・病気への抵抗力の向上
・動脈硬化の危険因子の増加を抑える
・胎児の神経管閉鎖障害発症リスクの低減

この中でも、冒頭で紹介したとおり、妊娠中の女性にとって、とくに関係があるのが胎児の神経管閉鎖障害発症リスクの低減です。

葉酸の種類

ところで葉酸には、大きく分けて2つの種類があり、異なる特徴があることをご存じでしょうか。

葉酸にはアミノ酸の一種であるグルタミン酸がポリ(poly)=複数個くっついた「ポリグルタミン酸型」と、グルタミン酸がモノ(mono)=ひとつだけくっついた「モノグルタミン酸型」とがあります。

前者、すなわちポリグルタミン酸型の葉酸は食品中に元から含まれるもので、食事性葉酸とも呼ばれます。一方、後者、モノグルタミン酸型の葉酸は、食品添加物として葉酸が添加された食品(例:葉酸入りの飲料)やサプリメントなどに含まれています。

この2つを比べた時、どちらのほうが体内での利用率が良いと思いますか?「食品に含まれるほうが自然な感じがするから、ポリグルタミン酸型のほうが、よく吸収されるのでは」と思うかもしれません。

でも、実は違います。サプリメントなどに含まれるモノグルタミン酸型のほうが利用率高く、ポリグルタミン酸型のおよそ2倍ともいわれているのです[*1]。

ポリグルタミン酸型(食事性)葉酸は食品に含まれますが、水溶性ビタミンなので調理の過程で減少することがあります。また、消化・分解の過程でもさまざまな影響を受けるので、含まれる食品によって体内での利用率にばらつきが生じます。

一方、モノグルタミン酸型葉酸はそのまま吸収されるため、ポリグルタミン酸型(食事性)葉酸と比べると体内での利用率が高くなるのです。

こうしたことから日本でも海外でも、神経管閉鎖障害のリスク低減のためには食事からに加え、サプリメントなどの栄養補助食品でも葉酸を摂取することが推奨されています。

「どのサプリメントが良いのか?と聞かれることも多いですが、しっかりしたメーカーのものであれば、どれも大差はないと考えて良いでしょう」(太田先生)。

葉酸摂取のポイントと注意点

葉酸サプリを選ぶイメージ画像
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葉酸を摂取したい期間や摂取量など、注意しておきたい点をまとめました。

葉酸を多く摂取したいのは妊娠1ヶ月前~妊娠3ヶ月までの期間

先ほどお伝えしたように、葉酸をサプリメントで補充することで、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを下げることができます。

神経管閉鎖障害を含む赤ちゃんの先天異常の多くは、妊娠直後から10週(妊娠3ヶ月の後半)までに起こります[*2]。それはつまり、妊娠がわかってからだけでなく、その前、すなわち妊娠にまだ気付かない時期も重要だということ。

したがって妊娠する可能性がある、または妊娠を計画している女性は、妊娠する前から意識して葉酸を摂取しましょう。妊娠の1ヶ月以上前から摂取することが勧められています。

また、ピルなどによる積極的な避妊を行っていない女性は、いつ妊娠しても後悔しないように、常に葉酸を摂っておくことが勧められています。コンドームなどの不確実な避妊法を使っている女性は、葉酸を摂るようにしましょう。

妊娠前からの摂取ができていなかった妊婦さんも、妊娠に気付いたらできるだけ早いタイミングで葉酸の積極的な摂取を行うようにしましょう。妊娠が判明してから葉酸を摂取しても、神経管閉鎖障害の発症抑制効果がみられたとする報告もあります。

妊娠中に必要な葉酸の摂取量は?

厚生労働省は、主要な栄養素ごとに必要な摂取量を定めた「日本人の食事摂取基準」では、18歳以上の成人男女に推奨されている葉酸の食事からの摂取量は、1日あたり240μgです。

葉酸がもっとも必要とされる、妊娠を計画中の女性や妊娠の可能性がある女性、妊娠初期は、上記食事からの摂取に加え、サプリメントなどから1日あたり400μgを摂取することが推奨されています。

妊娠中期、妊娠後期には、18歳以上の成人の推奨量に加え、食事から240μgの葉酸を摂取した方がよいとされています。つまり、妊娠前の倍に当たる480μgが1日の推奨量です[*1]。

妊婦さんがサプリメントを利用するときの注意点

ここまででも説明しましたが、現在、諸外国や日本では葉酸を、食事からだけでなくサプリメントなどの栄養補助食品からも摂取することが推奨されています。

食品に含まれるポリグルタミン酸型の葉酸は体内での利用率にばらつきがありますが、サプリメントなどの栄養補助食品に含まれるモノグルタミン酸型の葉酸は利用率が高く、神経管閉鎖障害の予防のために十分な葉酸が必要とされる際は、サプリメントを利用したほうが必要な量の葉酸を効率よく摂取できるからです。

ただし、「サプリメントからの摂取“も”推奨されている」という書き方からもおわかりいただけるように、サプリメントはあくまで食事からの摂取では足りない栄養を補うための「補助」といえます。葉酸に限ったことではありませんが、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品、栄養機能食品といった、いわゆる「健康食品」と呼ばれるものは、それだけを集中的に摂取したからといって体に良い影響があるわけではありません。

後述しますが、葉酸には過剰摂取――すなわち、たくさん摂り過ぎることによるデメリットもあります。葉酸以外の栄養素も過剰摂取で害のある場合があります。また、妊娠中に必要な葉酸以外の栄養素では、現在のところは、サプリメントによる摂取は特に推奨されていません。

そのため、身体に必要な栄養素はできるだけ食事から摂取するよう心掛け、葉酸の摂取を目的にサプリメントを選ぶ際も、とくに複数の栄養素が添加されている製品を利用する場合は、葉酸以外の成分も含め過剰摂取にならないよう気をつけながら利用しましょう。

葉酸はたくさん摂るほどよい?

先ほど少しだけ触れましたが、葉酸は過剰(1,000~10,000 μg)に摂取すると、発熱・蕁麻疹・紅斑・かゆみ・呼吸障害などの葉酸過敏症を起こすことがあります。

そのため、日本人の食事摂取基準で上限量とされているのは、成人男女は1日あたり900~1,000μgです[*1]。

なお、中には葉酸を推奨摂取量よりもたくさん摂ることが勧められている人もいます。以下の条件に当てはまる女性は、自身に適切な葉酸の量について主治医に事前に相談してみましょう[*4, 5]。

・自分の家族または赤ちゃんの父親の家族の中に神経管閉鎖障害の人がいる
・糖尿病、てんかんの薬を飲んでいる
・BMI(Body Mass Index)30以上

まとめ

葉酸は生まれてくる赤ちゃんや母体の健康維持にとって大切な栄養素。妊娠の1ヶ月以上前から、食事に加えて1日400μgをサプリメントから摂ることが勧められています。コンドームなどのやや不確実な避妊法を使っている人は、いつ妊娠しても良いように常に摂り続けておくようにしましょう。

(文:山本尚恵/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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