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2022年12月02日 13:51 更新

【医師監修】妊婦も蜂蜜を食べちゃダメなんだっけ?気をつけたい食べ物

蜂蜜(はちみつ)はそのままでも、紅茶などの飲み物に入れても、料理に使っても、まろやかな甘みを醸し出してくれます。しかも栄養あふれる自然食品。でも、赤ちゃんにあげてはダメという話も聞きます。妊娠中も注意したほうが良いのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

蜂蜜はお腹に赤ちゃんがいる妊婦が食べても大丈夫?

妊婦は食べても問題ない蜂蜜
Lazy dummy

蜂蜜は古くから食用または薬用に使われていて、現在でも“健康的な食品”のイメージをもつ人が多いのではないでしょうか。実際に蜂蜜にはエネルギーを素早く摂取できるなどの特徴があります。

反面、ご存知の方が多いと思いますが、「1歳未満の赤ちゃんには蜂蜜禁止」です。そうすると「お腹に赤ちゃんがいる妊娠中も蜂蜜はダメなんじゃ……?」と疑問を抱く人もいるでしょう。実際はどうなのでしょうか。

妊婦さんは蜂蜜を食べて大丈夫!

結論から言うと妊娠中でも蜂蜜を食べても問題ありません

お腹に赤ちゃんがいても食べてOKだけれど、生まれてきた赤ちゃん自身に蜂蜜をあげてはいけないのは、腸内環境が整っているかの差によるものです。

赤ちゃん蜂蜜NGの理由となっている「ボツリヌス菌」は、大人の腸に入っても腸の中にいる他の細菌との競合に負けてしまい、繁殖できません。ですから通常は蜂蜜を食べても何も問題は起きないのです。

つわりの吐き気があるときに、蜂蜜とレモン汁と炭酸水で作る「はちみつレモン」は爽やかでオススメです。

なお、産後の授乳中も蜂蜜を食べて問題ありません。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎授乳中にはちみつは食べても大丈夫?母乳への影響

腸内環境が未熟な赤ちゃんが食べるのはNG

一方、1歳未満の赤ちゃんはまだ腸内環境が未成熟で、ボツリヌス菌と競合する菌があまりいないことがあります。そのため、ボツリヌス菌が腸の中で繁殖してしまうことがあるというわけです。

蜂蜜には、ごくわずかながら土の中などに生息するボツリヌス菌という細菌が含まれている可能性があり、それが赤ちゃんの体内に入って繁殖し毒素を出すと、「乳児ボツリヌス症」という病気を引き起こします。

「細菌が原因の病気」と聞くと、「それなら、蜂蜜に熱を加えてから赤ちゃんにあげれば大丈夫?」と思うかもしれません。しかしボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱調理では死滅しません。

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乳児ボツリヌス症について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎赤ちゃんにハチミツは絶対NG!自然界最強毒素のボツリヌス菌とは

妊娠中に注意が必要な食べ物は?

蜂蜜は大丈夫でも食べ物に気をつけたい妊婦
Lazy dummy

ここまでで、蜂蜜は妊婦さんが食べても大丈夫なことはわかりました。しかし、妊娠中に注意が必要な食べ物もあります。そこで、食べ物が原因で妊婦さんに起こりやすい病気について触れておきます。

感染症のリスク|非加熱食品などに注意!

まず知っておいていただきたいことは、妊娠中はさまざまな感染症にかかりやすく、感染した場合は重症化しやすいという事実です。これは、母親とは別の生命である赤ちゃんを異物と認識して排除しないようにするため、妊婦さんは免疫の働きが抑制されているためです。

妊婦さんに起こりやすいまたは注意したほうが良い、食べ物が原因の感染症として、リステリア感染症とトキソプラズマ感染症があります。

リステリア感染症とは

リステリア感染症とは、リステリア菌により起こる人畜共通感染症(同じ病原体によりヒトと脊椎動物に起こる染症)です。妊婦でない一般の人が感染した場合は、何も症状がないか、あっても軽いかぜの症状程度で済みます。

ところが妊婦さんに感染すると重症化しやすく、発熱や頭痛、嘔吐などの症状が現れ、かつ、流産や早産、新生児敗血症、髄膜炎、胎児・新生児死亡のリスクとなります。

人畜共通感染症のため、感染経路として、かつてはペットや家畜などからの感染が多いのではないかと疑われていました。しかし現在では食品を介しての感染が重要視されています。食品中のリステリア菌は、冷蔵庫の中や塩蔵(塩漬け)でも繁殖します。ただし、加熱すれば死滅します。

なお、妊娠中に感染した場合は、速やかに治療することによって胎児や新生児への感染を防ぎます。治療には抗生物質を用います。

トキソプラズマ感染症とは

猫の糞や加熱が不十分な肉によりトキソプラズマという原虫が感染して起こる病気です。感染しても通常は無症状のことが多いものの、発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなど、非特異的な症状(いろいろな病気で現れることが多い症状)が一時的にみられることがあります。

トキソプラズマ感染症で問題となるのは、妊娠中に初めて感染した場合、赤ちゃんへの影響が現れる可能性があるからです。具体的には、流産や死産のほか、赤ちゃんの脳や目に障害をきたす「先天性トキソプラズマ症」を引き起こすリスクがあります。治療には抗生物質が使われます。

なお、妊娠初期の感染は胎児に感染する確率は低いものの感染した場合は重症化し、妊娠後期の感染は胎児に感染しやすいものの軽症にとどまることが多いことが知られています。

妊娠中は生ものや非加熱食品を避ける。猫や土いじりも控えて

リステリア感染症もトキソプラズマ感染症も、主に食べ物を介した経口感染です。ということは、口に入る物に注意を払えば、感染する確率を下げることができるということです。
そのための妊娠中の具体的な対策をお示ししましょう。

■心がけること
一つは冷蔵庫を過信しないこと。冷蔵庫に入れていた食品も期限内に食べる、開封後は期限にかかわらず早めに食べきることです。また、調理では食品の中心まで火が通るように十分加熱しましょう。リステリア菌、トキソプラズマをはじめ、一般的に食中毒を起こす微生物は加熱により死滅することが多いです(ボツリヌス菌を除く)。加熱に電子レンジを使うときは、加熱ムラがよく起こるので、全体が均一に加熱されるように向きを変えて加熱し直すなどの工夫をしましょう。

■避けること
そして、生ハムやナチュラルチーズ、スモークサーモンなどは、妊娠中は控えたほうがよいでしょう。また、まな板や食器は常に清潔な状態で使えるよう気を付けましょう。

食べ物ではありませんが、トキソプラズマが手に付いた状態でうっかり口にしてしまう可能性があるため、妊娠中は猫との接触、とくに猫トイレの掃除や、ガーデニングなどの土いじりは控えましょう。

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これらの感染症について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎トキソプラズマの感染経路と潜伏期間、予防の方法
関連記事 ▶︎妊婦は生ハムを食べてはダメ? 妊娠中の食中毒予防のコツ
関連記事 ▶︎妊婦は猫を飼っちゃダメ? トキソプラズマ感染のリスクと予防方法

水銀のリスク|魚の種類と食べる頻度に注意

「魚は健康的な食べ物」とよく言われます。確かに動脈硬化の予防に良い栄養素を多く含む食べ物です。しかし魚は自然界に存在する水銀を体内に蓄積していることがあり、その魚を食べることで水銀が妊婦さんから胎児に移動し、影響を及ぼす可能性が指摘されています。例えば、うまれた赤ちゃんに音を聞かせた時に、その反応がごくわずか遅れる可能性があると言われています。

魚に蓄積している水銀の量は食物連鎖の影響を受けるので、魚の種類によって異なります。よって食べる魚の種類にも注意が必要です、ただ、実際に妊婦が摂取している水銀の量は平均すると安全基準の6割程度ですので、基本的には過剰に心配する必要はありません[*1]。
厚生労働省では、マグロやキンメダイなどの魚から妊娠中に水銀を摂取し過ぎないための目安を公表しているので、確認しておくと良いでしょう[*2]。

■厚生労働省/これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/100601-1.pdf

なお、妊娠していることに気づかず魚をたくさん食べてしまったと不安がる妊婦さんもいらっしゃいますが、あまり心配いりません。その理由は、からだに入った水銀の量は2ヶ月で半分になることと、妊婦さんの体内の水銀は、妊娠中期に完成する胎盤を経由して胎児に伝わるため、妊娠したことに気づいていない妊娠初期に魚を食べ過ぎていたからといっても、その影響が赤ちゃんに及ぶ可能性は少ないからです。

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妊娠中の魚について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊婦がタイを食べるときは種類をチェック!胎児に影響を与えるタイはどれ?

ビタミンAの過剰摂取のリスク|サプリメントなどに注意

ビタミンAは赤ちゃんの皮膚や粘膜の形成に必要な栄養素です。しかし妊娠中に過剰に摂取すると水頭症(脳脊髄液が過剰に溜まり脳が圧迫される病気)や口蓋裂(上あごが左右に割けた状態)といった先天異常を増やす可能性が指摘されています。

通常の食事をふつうに食べている限り、このような異常が発生するほどのビタミンAを摂取するとは、あまり考えられません。ただし、過剰摂取につながりやすいため、サプリメントでビタミンAを補給することは控えた方がよいでしょう。また、ビタミンA含有量が極端に多い食品、例えばレバーやうなぎなどを毎日立て続け食べることはやめましょう。

なお、ビタミンAは欠乏しても先天異常を引き起こすとされていますが、日本人の平均的な食生活では欠乏する可能性は低いと考えられています。

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妊娠中のレバーやうなぎについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊婦はレバーを食べちゃダメ?
関連記事 ▶︎妊婦はうなぎを食べちゃダメ?知っておきたい注意点と摂取量

まとめ

甘くておいしい蜂蜜。赤ちゃんにあげるのはNGでも、妊婦さんが食べるのは問題ないとおわかりいただけたかと思います。ただ、蜂蜜のほかに、妊娠中には注意した方が良い食品があることも解説しました。過度に思い詰めるとストレスになりますが、十分に火を通すなど、ポイントを押さえれば楽しめる場合もあります。健やかな赤ちゃんの成長のため、少し気を配りつつ、できるだけ楽しく妊娠期間を過ごせるよう工夫してみましょう。

(文:久保秀実/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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