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「アンビバレンス」の心理学的意味とは? 原因や具体例、解消方法も解説

笹氣健治(心理カウンセラー)

アンビバレンスな心理状態の解消方法

アンビバレンスの原因が分かれば、それを解消するための方向性も見えてきます。

ポイントは次の2つです。

(1)相反する2つの欲求について、質の違いを理解する

(2)今の自分にとって本当の問題は何かに気づく

先ほど挙げた7つのケースを使って解説していきますので、アンビバレンス解消のコツをつかむヒントにしてください。

仕事におけるアンビバレンスの解消方法

まずは、仕事におけるアンビバレンスの解消方法を解説します。

(1)「この仕事を辞めて楽になりたい。でも、この仕事を続けたい」

このアンビバレンスには、「楽になりたい欲求」と「今の仕事を続けたい欲求」が同時に存在しています。

前者は身体的もしくは精神的な欲求であり、後者は職業選択に関する欲求です。

この場合、自分にとっての本当の問題は「身体的・精神的に楽になることを重視するか、どの職業で働くかを重視するか」にあるといえます。

このように整理すると、問題を解決するにはどうするべきか、冷静に考えやすくなるはずです。

すると、

「この仕事は今の会社でなくてもできるので、今は身体面と精神面を重視して休養することがベターだ」

「仕事量が多いことを会社に相談して今後の方針を聞いた上で、転職するかどうか決めよう」

といったように、現実的で前向きな判断ができるでしょう。

(2)「この会社で働き続けたい。でも、別の会社でも働いてみたい」

この場合、「今の会社で働き続けたい欲求」では給料面や仕事の内容を重視していて、「別の会社でも働いてみたい欲求」では自分の幅を広げることを重視しています。

根底にある問題は、「給料や仕事の内容を取るか、自分の幅を広げることを取るか」です。

ところが、どちらを取っても、うまくいかないリスクはあります。

このような状況でアンビバレンスを解消するには、「自分が今後仕事をする上で何を大切にするか、どのようなキャリアを歩みたいか」というビジョンを明確に持つことがカギとなるでしょう。

恋愛におけるアンビバレンスの解消方法

次に、恋愛におけるアンビバレンスの解消方法を解説します。

(1)「恋人が欲しい。でも、まだまだ独りでいたい」

「恋人が欲しい欲求」で求めているものは、「愛し愛される関係」かもしれませんし、「孤独を埋めてくれる関係」かもしれません。

一方、「まだまだ独りでいたい欲求」では、自由な時間や身軽で気楽な状態などを求めていると考えられます。

どちらもメリットがあることなので、ひとつに絞るのは難しいものです。

それでも選ばなければならないとしたら、今の自分にとって優先順位が高いのは愛し愛される関係と自由のどちらなのかよく考えると、答えがはっきりしてくるはずです。

あるいは、愛情を注ぎ合いながらお互いの自由も大切にできる相手なら問題ないわけですから、そういう人を気長に探し続けてみるのもアリかもしれません。

(2)「恋人にするなら見た目が好みの人が良い。でも、中身も重視したい」

このようなアンビバレンスを抱えている場合、あなたが恋人のルックスを譲れないのはどうしてなのか、まずは考えてみたいところです。

「周りの人からうらやましがられたい」などという恋人の外見への明確な希望があり、それを譲りたくないなら、ルックスを妥協する必要はないかもしれません。

しかし、それほど高望みしているわけではないのなら、ルックスの良し悪しは実際あまり関係ないのではないでしょうか。

むしろ気になるのは、このようなアンビバレンスを抱えることで、現実から目を背けようとしていないか、という点です。

もしかすると、恋人が見つからない不安やお付き合いしてもうまくいかないのではという不安を抱えているのかもしれません。

そして、そこから目を背けるために、恋人を探さない言い訳としてのアンビバレンスを無意識に活用している、という可能性があります。

もしそうだとしたら、本当の課題はもっと別のところにあるかもしれません。例えば、自分に自信がないとか、過去の恋愛における嫌な体験を引きずっている、などが考えられます。

心当たりがあるなら、アンビバレンス解消のためにはそういった課題に向き合う必要があるでしょう。

私生活におけるアンビバレンスの解消方法

最後に、私生活におけるアンビバレンスの解消方法を解説します。

(1)「痩せたい。でも、好きなものを好きなだけ食べたい」

人によって、「痩せたい欲求」はスタイルという見た目の問題だけではなく、自分に自信を持てるかどうかといった自己肯定感につながる重要な意味を持っている場合があります。

「好きなだけ食べたい欲求」は、もし毎日のように強く感じているなら単なる食欲ではなく、何か大きなストレスからきているものかもしれません。

この場合、「痩せたい」という欲求の裏にある自己肯定感の低さや「食べたい」という欲求の原因となるストレスが、解決すべき本当の問題だということになるでしょう。

(2)「今度の連休は家でのんびりしたい。でも、旅行もしたい」

これは、「心身の疲労を回復したい」という生理的欲求と、「楽しいことをしたい」という快楽への欲求がせめぎ合っている状態です。

貴重な連休をどう使うかは、その時のコンディションと相談して決めるのが得策だと考えられます。

疲労の度合いが大きければ静養した方が良いでしょうし、連休以外でも疲労回復のための時間が取れるのであれば、せっかくの機会を普段できないことに使うのも良いでしょう。

このように合理的な判断ができない場合、日常的に大きなストレスを感じているなど、他のことが問題になっているのかもしれません。

例えば、仕事が忙しくてゆっくりもできないし好きなことをする時間もないから、連休にどちらもしたくなり悩んでしまう、といったことが考えられます。

もしそうだとしたら、日頃から自分のストレスや疲労の度合いを意識するようにしてみてください。

そして、適切な方法で回復を図ったり働き方を見直したりすることが、アンビバレンスの解消に役立つでしょう。

(3)「独りで自由に暮らしていきたい。でも、結婚して家族も持ちたい」

「自由を求める欲求」と「家族を持ちたい欲求」という両立が難しいアンビバレンス。これは、今後の人生をどのように生きていくかを決める重要な選択といえるでしょう。

だからこそ、自分の人生についてビジョンを描くことが重要です。

とはいえ、自分が「こうしたい」と決めたからといって、実現できるとは限りません。今後の人生がどうなるかは、人とのご縁や運によって大きく左右される可能性があります。

このような重要な局面では、いろいろな人の生き方を調べたり、経験者から話を聞いたりして、しっかり吟味する必要があるでしょう。

そして、ある程度の方向性を決めたら、後はその時々で起こったことを受け入れて柔軟に対応する、というのが1つの解だといえます。

自分が抱えているアンビバレンスの背景に何か不安や恐れがあるということが分かったら、これを機に向き合ってみると、自分の人生を良い方向に変えるきっかけになるかもしれません。

人生は選択と決断の連続

相反する感情を抱いてしまいどちらを選ぶか迷うのは、的確な選択をして、より良い結果を得たいからだと考えられます。それはとても前向きな態度だといえます。

そして、アンビバレンスには「自分にとって重要な問題だからこそ悩む」という側面もあります。

アンビバレンスに陥った時は、自分の人生にとって何が重要なのかを見つめ直す良い機会なのかもしれません。

人生は選択と決断の連続です。悔いの残らない人生を送れるように、ぜひいっぱい迷って納得のいく決断をしてください。

(笹氣健治)

※画像はイメージです

※この記事は2022年02月28日に公開されたものです

笹氣健治(心理カウンセラー) (心理カウンセラー)

メンタルトレーナー・心理カウンセラー
1967年生まれ。国際基督教大学を卒業後、NTT(東京支社)に入社。その後、地元の仙台に戻り、スポーツクラブ「グラン・スポール」の経営に携わる。企業を経営する上で人間心理を理解する必要性を痛感して心理カウンセリングを学び、現在は、ストレスやコミュニケーション問題の解消をテーマにした講演やカウンセリング、目標達成のためのメンタルトレーニングを行っている。『「やる気」のある自分に出会える本』(スリーエーネットワーク)、『仕事の悩みを引きずらない技術』(PHP研究所)など、著書19冊。

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