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【新連載】雨空を見上げながら、あの人と出会った日のことを思い出す……

店長はわたしの差し出したタオルハンカチで、
ていねいに顔をぬぐった。
それからしばらくして売り場には、
組み上げられた「永劫」のタワーが完成した。
手前には手に取りやすいよう、
ごく普通の高めの平積みも作成してある。

「明日、もう一方の『永劫』が来たら、
それは隣に積むから。
今日はひとまず、空いた場所はいつも通りで」
そうして平積みの棚を作り上げると、
わたしたちは台車を押して、倉庫へ向かった。

「高野さあ」
ふたりきりの倉庫で店長に呼び止められ、
わたしはドキッとして振り向いた。

「おれも強く言い過ぎたけど、
高野も、もう少ししっかりしてくれ。
この先、店長としてひとり立ちできないぞ」
「はい……そうですよね」

嫌われているわけじゃなかった、
と思うとうれしかったけど、
いつか店長の元を離れる日が来ると思うと、
かなり先だろう別れが、今から寂しかった。

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