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【新連載】雨空を見上げながら、あの人と出会った日のことを思い出す……

今の店舗は元のお店より、
ずっと小さいけれど、お客様は案外多い。
豪雨の中、何人もの方が飛び込んできて、
雑誌や書籍の棚の間を、
ホッとしたように歩かれる。

「あ、店長、虹が出てきました」
「うそ! 見たいなあ」
けれど、雨が止んだなら、
それはレジが混むということだ。
忙しく接客した後、お店を閉めて退社し、
スマートフォンを確認すると、
あの人からメッセージが届いていた。

「いつものところで待っている」
あいかわらず、そっけない人だ。

実は今の店に着任してから少し後、
わたしは喜多見店長から、
就任のお祝いとして食事に誘われていた。
清潔感のある小料理屋さんで、
店長らしいチョイスだと思った。

喜多見店長は座るなり、
ストレートに聞いてきた。
「で、新店長としての仕事はどう?」

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