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【新連載】雨空を見上げながら、あの人と出会った日のことを思い出す……

Story3 ★自覚が大切

店長の大声での叱責に、書店員だけでなく、
レジのお客様までが、こちらを注目した。
消えてなくなりたい気分だった。
なのにこの時、痛切に感じてしまった。
わたしは、店長に恋をしていることを。

わたしは、再度伝票に目を移す。
買い切りの本は文字通り、
書店がお金を払って買う本なので、
返本がきかず、売れない分は赤字となる。

そのため発注には注意が必要なはずなのに、
発注者の欄には新人のアルバイトの印、
そして責任者欄にはわたしの印がある。
これでは責任者の自覚がなさすぎ、
と言われても仕方ない。

「しっかりしてくれ、副店長。
今日の今から、別人になったつもりでな」
「はい……」
店長の声にはもう怒りは含まれてはなかった。
でもとても店長の表情を見る勇気などない。

「しかし誤発注の『永劫』も買い切りか。
副店長、至急もう一方の『永劫』の発注を。
それが終わったら、平積みコーナーに来い」

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