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【新連載】雨空を見上げながら、あの人と出会った日のことを思い出す……

「周囲の人に助けられて何とかやってます」
わたしは素直にそう答えた。
喜多見店長は「最初はそうだよな」と微笑んだ。
めったに見たことない、うれしそうな笑顔だった。

「でさ、高野は彼氏とかいるの?」
いんげんの胡麻和えをもぐもぐと食べながら、
喜多見店長は、意外な質問をしてきた。
「……いませんけど」
「じゃあ、おれはどう?」
まったく想定外な展開に、
わたしはとっさに何も考えられなくなった。

「あの、わたしでいいんですか?」
すると喜多見店長は、少し顔を赤くして、
うつむいて2、3度、首を縦に振った。

「仕事、一生懸命だったの見て心が動いた。
いっしょにいると心が和むし、
これからも離れたくない」

こうして、わたしたちの関係が始まった。
あの人は案外やさしく繊細な人で、
幸せなお付き合いをしていると思う。
欠点は、すぐに仕事の話になるところだけど、
そこも含めて、あの人が大好きなんだと思う。

(おわり)

※この記事は2014年06月05日に公開されたものです

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