【新連載】結婚退職者がこれで3人目……私、どうなるの?
たまたまかもしれないが、どの女性も、
仕事に全力投球するタイプではなかった。
逆に店長になってからのわたしは、
いつも売り上げやキャンペーンのことが、
頭のどこかに張り付いている感じ。
それでつい不安になって休日に出勤したりで、
プライベートはかなり貧しい。
恋愛とも、まったく縁なし。
もっと自分を甘やかした方がよかったのか。
そんなことを考えて自宅の最寄り駅までくると、
待ち構えたような雨。それも土砂降りだ。
朝、天気予報を確認してくればよかった、
と後悔しながらコンビニへと走ったが、
すでに傘は売り切れていた。
「ああ、もう仕方ない」とつぶやくと、
わたしはトートバックを傘代わりにして、
暗く冷たい雨の中をそのまま走った。
今日、ブランドのバッグじゃなくてよかった、
と苦笑いしながら走り自宅近くまで来た時。
目の前に、いきなり黒い影が立ちはだかった。
わたしは「うそ」と思う間もなく、
その影に吸い込まれるように衝突し、
弾かれて、冷たく濡れた歩道に尻もちをついた。