お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

【新連載】結婚退職者がこれで3人目……私、どうなるの?

「わかりました」
わたしは柳瀬ですと自分の名を名乗ると、
その、松波さんの言う通り、
彼の言う家まで肩を貸して歩き送って行った。
男性なのに、驚くほど軽い。
また住まいは立派なマンションだったが、
万一のことを考えて用心し、
彼の家には、玄関先にも入らなかった。

「ともかくシャワーを浴びてください」
とだけ言うと、傘を借りて急いで自宅に戻り、
シャワーを浴びると、朝食用に買ってあった、
レトルトのおかゆや食パンをコンビニの袋に詰め、
松波さんのマンションへと急いだ。

インターフォンを鳴らすと、彼がドアを開けた。
壁にもたれてやっと立っている有様で、
かなり顔色が悪い。
「あの、絶対まったく何もしませんので、
よかったらコーヒーでも飲んでいきませんか」

わたしは松波さんが心配でもあったので、
おそるおそる彼の部屋へと入った。
通された居間には黒の応接セット。
長く住んでいる気配はあるのに、
驚くほど生活感のない部屋だった。

次のページを読む

SHARE