なぜ人間は「ハブる」のか。ハブられる原因と対処法
ハブられる原因とは? 辛い状況にいるあなたへ、催眠心理療法士の浅田悠介さんが、ハブる人の心理や対処法を解説します。
最近、周りの人がコソコソ自分の話をしている気がする。
自分以外のメンバーで集まって、イベントが行われていたのを知った。
──こんな経験ありませんか?
社会で生きていると、どうしても出くわしてしまうことかもしれません。
「もしかしたら仲間外れにされてる?」と思ったことのある貴女へ──辛いですよね。
まさに今回のテーマは「ハブる心理」です。その原因と対処法を考えていきましょう。
ハブられるとは?
まずは、この言葉の意味から考えていきます。
ハブられるの意味
いわば「仲間はずれ」ということです。
教室で「あの子は呼ばないでいいや」と言われたり、職場で特定の人物だけ業績を認められなかったり──そうした光景を目にしたことがあるかもしれません。
わざとにせよ、わざとでないにせよ、そういう状況は起こりえます。
いってしまえば「いじめ」に近いでしょう。その違いは、殴ったり、机に落書きしたり、といった“積極的な加害行為”がないことです。
ハブるとは、“消極的に仲間はずれにする”というニュアンスになります。例えば「なんかちょっと苦手だな」といった淡い感覚からも起こりえるのですね。
意図的にふわっと距離を置く感じ、といえばわかりやすいかもしれません。
ハブられるの語源
そもそも、なぜ仲間外れのことを「ハブられる」と表現するのでしょうか。
ハブるやハブられるに使われる「ハブ」という言葉の語源には、諸説考えられるものがあります。
1つ目は「省く」という言葉。不要なものを取り除くという意味があり、これを名詞化させ「ハブ」と表現することで、仲間外れを表すようになったという説です。
2つ目は、遠州弁の「はぶせ」という言葉から派生した説。遠州とは現在の静岡県西部あたりのことで、この地方では仲間外れのことを「はぶせ」という言葉で表現されることがありました。
3つ目は、「村八分」から由来している説。村八分とは、その昔、村でおきてを破った者を仲間外れにした慣習のこと。「八分(はちぶ)」と表現されることもあり、そこから派生して「ハブ」という言葉が使われるようになったという捉え方です。
なぜ人は「ハブる」のか
前述の通り「ハブる」は、「省く」や「村八分にする」が語原だという説もあります。
この「村八分」とは、ルールを破った村人に対して行われるものです。村全体を上げて、その家や家族との交流を断ってしまうのです。村からの仲間外れというわけですね。
村八分は村を守るための行為だった
なぜそんなことをするのかといえば、村を守るためです。
村にとっては“村の掟”を守ることが利益になります──つまり村の存続につながります。新しい変化など必要ないのです。
むしろ、その秩序を脅かすものが現れると困る──そうした危険分子は省いてしまえ、という考え方ですね。もちろん肯定するつもりはありませんが、ある意味、村の視点に立てば合理的です。
人は「存在を恐れる」から「ハブる」
ハブる心理とは「群れからはみでるものを排除しようとする感覚」といえそうです。
ここの、はみでる、というのがポイントです。劣っていようが優れていようが関係なし、というわけです。とにかく「まわりと違う」だけで排除するのですね。
むりやりポジティブにとらえると「ハブられる」ということは「恐れられている」ということでもあるかもしれません。しかし気分のいいことではありませんよね。
今はいろんな生き方が許されている時代だというのに、です。
ハブられる原因は何?
さて、人はなぜハブられるのか。ハブる心理を学んだあとで、具体的な原因を見ていきましょう。
(1)空気を読まない(読めない)から
どこへ行っても「その場に適した行動」というものはあります。
ゆえに裏表がなさすぎたり、話を勝手に進めたり、ムードを壊したり、予測不可能な行動ばかりしていると危険視されます。
いわば「何を考えているかわからない生物」というのは、相手の本能に「命の危険に繋がるかもしれない」と感じさせるからです。生物の判断としては、わからないものを避けるのが正解になってしまうのですね。

空気が読めない人の特徴を解説します。
(2)自分の話ばかりするから
居心地の悪さを感じさせているのかもしれません。
自分本位なコミュニケーションになっていないか気をつけてみましょう。
自分の話を聞いてほしい気持ちはわかります。しかし、一方的に聞かされる側はしんどくなってしまいます──つい距離をとってしまう。
もしや「会話」じゃなくて「演説」になっていませんか。

自分の話ばかりする人の特徴や心理を解説します。
(3)能力が高いから
羨望や嫉妬かもしれません。
人は優れたものにも「ハブる」ことをします。自分のできないことや、苦手なことができる人に対して、どうしても嫉妬心が芽生えてしまうから。
優れた人間がいたら、その人を目標に努力することもできます。しかし、そうせずに足を引っぱる人間が現れるのも世の常です。

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(4)会話に嘘が見えるから
喋る言葉に引っかかりがあるのかもしれません。
かわいくいえば「話を盛りすぎ」という言い方もできるでしょう。
はっきり言って、嘘はバレます。自分を良く見せたり、気に入られようと嘘をついたりしても逆効果です。なんとなく勘づかれてしまうから──そして除け者候補になるのです。
確かに「嘘も方便」とはいいます。しかし人間関係を良いものにしたいなら「正直の強さ」を身につけることも大事かと思います。

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(5)向上心が高すぎるから
これはもちろん良いことです。
しかし度を過ぎると煙たがられる原因にもなります。
視点が高いのは素晴らしいことです。しかし、もしハブられたくないなら努力を隠してもいいかもしれません。他人って、努力している人を見るのが嫌なんですよ。

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(6)ネガティブな態度を取っている
他人に対して、ついネガティブな態度を取っていないでしょうか?
ネガティブな態度とは――無視したり、一方的に否定したり、バカにしたり、つまり自分が取られたら嫌な言動のことです。
貴方が嫌な言動は、相手も嫌だと思っています。取られた側はフラストレーションを抱え、「逆にハブってしまおう、傷つけられたくないし」という発想につながったのかもしれません。

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(7)過去に誰かをハブっていた
要するに、しっぺ返し、です。
ハブった方は忘れても、ハブられた方は決して忘れないものです。当たり前のことですよね(そんなことはしていないと思いますが、可能性の話です)。
過去に自分がハブってしまった相手から、腹いせのようにハブり返されているのかもしれません。
よく学生たちの間で「順番にハブる」という話も聞きますよね。今すぐにでも終わってほしい連鎖ですが、誰かの忌まわしい行動が、また次の不幸を生むのです。
もしかして私? ハブられている状況5パターン
ハブられている、というのは具体的にどういう状況なのでしょうか。自分が今まさに、その状況下にあるのか判断しかねるという人も多いはずです。
人間関係の在り方はそれぞれですが、一般的に言われる「ハブられている状態」のパターンをいくつか紹介していきます。
(1)無視される
話しかけても応答してもらえない、これは王道のパターンでしょう。
それ以外にも、「何となく存在を無視されている気がする」「自分にだけ話しかけてもらえない」といった状況も当てはまるかもしれません。
あたかも貴方のことが見えていない、といった素振りで振る舞うのです。

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(2)LINEなどのSNSグループに入れてもらえない
令和の今、ハブるとは何も対面だけの話ではありません。SNS上でも「ハブられる状況」は存在します。
「みんなが入っているグループLINEに招待されない」「自分を外した別のグループが存在する」などなど。
またSNSのグループに入れていても、そこでの発言を無視されてしまうというパターンもあるでしょう。
(3)何かと1人になってしまう
気づくと、1人きりになっているという状況はないでしょうか。
周囲は楽しそうに固まって話しているのに、自分はぽつんと1人。意図的に1人を選んでいるなら問題ありませんが、「輪の中に入ろうとしても難しい」という状況なら、ハブられている可能性も捨てきれません。
(4)ランチや飲み会に誘ってもらえない
学校や職場でのあるあるです。自分だけランチや飲み会に誘ってもらえない状況を経験したことはありませんか?
もちろん、他人任せでもいけません。自分は誘わないのに、他人から誘ってもらえないと嘆くのは時期尚早でしょう。
ただし、ハブられている場合、嫌な意図を感じるのです。「近くの席の人たちが固まってランチへ行ってしまった」「同じ部署なのに飲み会に誘われない」などなど。普通、社交辞令で声をかけるべき状況でも、おかまいなしなのです。
そのランチや飲み会に参加したいかは置いておき、声をかけられないのは寂しいですよね。
(5)自分だけ知らない情報がある
事務連絡などは、平等に与えられるべき情報です。しかし、これを自分だけ知らなかったという状況に何度も陥るなら、誰かの悪意が働いていそうです。
「締め切りのアナウンスがなかった」「持ち物を教えてもらえなかった」といった状況は本当に伝達ミスなのか、意図的なのか、冷静に見極めてみましょう。
「もしかして私」と思ったら。ハブられ状態からの脱却術
さて、大事な話をしましょう。そんな状態から抜け出すにはどうすればいいのか。いくつか方法を挙げてみますね。
(1)正直に生きる
まわりを気にして率直なコミュニケーションをとれなくなっているのかもしれません。
一度、自分をよく見せようとするのをやめて、素直に過ごしてみるのはどうでしょう。周りの扱いが変わるのに気づくかもしれません。肩の力を抜いてみましょう。
嘘をつかないのはもちろん。目を見て話すこと。ちゃんと「ありがとう」「ごめんね」を伝えること。そうした基本からチェックです。
簡単そうでなかなかできないことでもありますよね。もう一度、この基本ができているか見直すときかもしれません。
(2)コミュニティを離れる
何も悪いことをしていないのに、周りから距離を置かれている。
そういう場合もあると思います。なんとなくの波長、あるいは、貴女が努力しているからハブられるといった場合です。
そんな場所からは逃げましょう──というより捨てましょう。
現代では職場やコミュニティなんていくらでもあります。
たまたま今いるところが合わなかっただけ。貴女を認めてくれつつ、ちゃんと活躍できる「全力の貴女でいられる場所」はあるはずですよ。
(3)謙虚にする
相性が悪いのかもしれません。
貴女が優秀で、まわりがそうでなかったとしましょう。
そのせいで空気が悪くなっても、どちらが悪いというわけでありません。相性の問題です。もっといえば「人間ってそういうものだよね」というわけです。
とはいえ、優秀な貴女だからこそ、譲ることもできるのではないでしょうか。謙遜してあげるのもひとつの手段だと思うのです。
逆にいえば、謙虚にさえしていれば、何をしてもいいんですから。

謙虚な人になる方法を解説します。
(4)楽しませる会話をする
めちゃくちゃ重要です。
やはり「会話は相手が楽しませてくれるもの」と考えていると、コミュニケーションは上手くいきません。相手に責任を──しんどさを──押しつけることになるからです。
だからこそ「会話は相手を楽しませるもの」という意識に切り替えてみましょう。
ガラッとまわりの反応が変わるのを感じると思います。相手も話していて気持ち良いし、貴女も、より会話を楽しめるはずですよ。

楽しい会話をするコツを解説します。
(5)人間関係を割り切る
最後はこれです。割り切っちゃいましょう、潔く。
人間関係なんて、正直適当でいいのです。自分に不利益がない程度の付き合い方でOK。「もういいや」と、スパッと、冷静に割り切ってください。
あなたをハブる人たちと、本当に仲良くなりたいですか? 答えは簡単に見つかるはずです。

人間関係に悩まず働くコツを解説します。
逃げてもいい。でも逃げるなら“前に”逃げよう
さまざまな理由で「ハブられる人」が世の中にいます。
本人が悪いのかもしれません。まわりが悪いのかもしれません。どちらともいえない──という状況も多いでしょう。
そうした状況で、いつだって逃げてもいい、ということだけは忘れないでください。悲しい思いを避けるために。
現代は村社会でもなんでもありません。貴女にとってふさわしくない環境からは離れることができます。
ただ、ここで覚えておいてほしいことがあります。
それは「逃げるなら前に逃げる」こと。
どうか自分の弱さから逃げるのではなく、より強くなるために逃げてください。逃げた先で幸せになるために逃げてください。
貴女のもとに幸せが舞い降りるように祈っております。
(浅田悠介)
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