生理周期が短いのは異常? 月経不順の原因と対策 #女の体と心の保健室
生理がきちんとあることは「エストロゲン」が出ている証
高尾先生:ところでみなさんは、生理はどうやって起こるのか、生理があるということから何がわかるのか、考えたことはありますか? とても大事なことなので、まずはそこから説明をしていきましょう。
子宮という臓器は、幼児期には親指大くらいの大きさで、大人になると鶏卵大ほどの大きさになります。この子宮の成長を助けているのが、卵巣から出される「エストロゲン」(卵胞ホルモン)という女性ホルモンです。「エストロゲン」は、いうなれば「女性らしさのホルモン」。肌のハリや潤いを保つ、髪をしなやかに保つ、骨を丈夫にする、血管の柔軟性を保つなどの働きが知られています。目に見えないところでせっせと働いて、女性の体を守ってくれているのが「エストロゲン」です。
さて、この「エストロゲン」には大事なわかりやすい働きがもうひとつあって、それは「生理を起こす」という働きです。生理が来ているということは、「エストロゲン」がちゃんと出ている証といえるんです。
――たしか、女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」(黄体ホルモン)という2種類のホルモンがあって、その分泌リズムと生理周期とは連動しているんですよね?
高尾先生:その通り。流れとしては、まず「エストロゲン」の分泌量がピークになったあとに排卵が起こります。だから、私たちが妊娠するためには、「エストロゲン」がちゃんと出ていることが大切です。ちなみに猫は、性交渉をきっかけに排卵が起こるんですよ。毎月の生理周期ごとに排卵する人間とは仕組みが全然ちがいますね。
さあ、まだまだ続きますよ。排卵後、私たちの体は妊娠しているかもしれないと考えて、妊娠を継続させるために、「プロゲステロン」というホルモンを出します。そして排卵の約2週間後、妊娠が成立しなければ、子宮に用意していた赤ちゃんのためのベッド(子宮内膜)を手放していきます。これが生理として私たちが目にするものです。生理は、こうしたホルモンの一連の変化の最後に起こる出来事なんですね。ですから、生理の状態が変だなあと気づいたら、その前の体調や生活の様子はどうだったかということを、自分で振り返ってみることが大事です。
また、体の仕組みとして、排卵から生理がはじまるまでの日数は14日間と決まっていますが、生理が来てから次の排卵までの日数には個人差があるんです。後者の日数が11日の人なら生理周期は25日になるし、24日なら38日というサイクルになるんですね。
20~30代女子の生理周期が短くなる原因
―― なるほど。生理周期にもともと幅がある理由がよくわかりました。ただ、今回の生理が「2週間後に来た」というような状況はなぜ起こるのでしょうか。何か異常があると考えたほうがいいのでしょうか?
高尾先生:生理周期が短くなる原因のひとつとしては、まず「プロゲステロンの分泌量が減る」ということが考えられます。たとえば、年齢を重ねて生理学的に妊娠を継続させなくてもいい年代(更年期以降)になってくると、「プロゲステロン」の働きが悪くなったり分泌量が減ったりして、生理周期が短くなることがあります。これを「黄体機能不全」といいますが、時に20〜30代でも起こることがあります。
ただ、20〜30代女性で生理周期が短くなる原因としてより疑わしいのは「無排卵性月経 」です。この場合は排卵がないまま生理(のように見える出血)が起きていることが考えられます。
さきほど紹介したように、生理というのは、妊娠に備えて整えられた子宮内膜が妊娠成立しなかった場合に不要になり、剥がれ落ちる現象です。上の「月経周期と女性ホルモン」の図を見るとわかるように、排卵前は「エストロゲン」、排卵後~生理前は「プロゲステロン」がメインで分泌されています。そして、「プロゲステロン」の低下がきっかけとなって生理が起こります。
「無排卵性月経」では「エストロゲン」は分泌されるのですが、排卵が起こらず「プロゲステロン」が分泌されません。この場合、「エストロゲン」の働きで子宮内膜は少しずつ厚くなり続けますが、排卵がなく「プロゲステロン」が分泌されないので、体はいつ生理を起こしていいかわからなくなります。
その結果、子宮内膜がある程度厚くなってしまい、維持できなくなることにより「破綻出血」といって、だらだらと不規則に 出血するような症状が起こるのです。普段より出血が少ない、出血がだらだらと続く。このような症状があったら、「無排卵性月経」の可能性があります。
――「無排卵性月経」や「黄体機能不全」になってしまう理由には、どのようなことが考えられますか?
高尾先生:生理周期って意外とナーバスで、ライフスタイルや環境の変化に影響されることが多いんです。2、3カ月前の出来事や状況が、今の生理に反映されていると考えて。たとえば、引っ越し、人事異動、体重の変化(大きな増減)などがなかったか、振り返ってみましょう。
というのも、女性ホルモンの分泌をコントロールしているのは、脳の視床下部というところ。視床下部は、自律神経をコントロールする司令塔でもあり、ストレスの影響を受けやすいのです。視床下部が影響を受ければ、卵巣からのホルモン分泌にも影響が出て、生理周期が乱れたり、「無排卵性月経」を引き起こしたりすることもあります。
生活習慣だけで生理周期をコントロールすることはできませんが、ストレスや環境の影響を受けやすいということはぜひ覚えておいてください。できるだけ体への負担やストレスを減らすことで、生理周期の乱れをある程度避けられる可能性もあります。