【新連載】28歳、私の一番きれいな時期はもう終わったのかな……
亮平が来ているのは、分かっていた。
彼とは就活が忙しくなっての自然消滅だから、
特におたがい恨みも気まずさもないはずだ。
でもわたしのように不倫の果てに転職となると、
亮平がそれを知ってる訳でもないのに、
何となく気後れして、この飲み会の間ずっと、
亮平の顔をまともに見られないでいた。
でも隣に座った彼は、6年分魅力が増していた。
「おひさしぶり」
酎ハイのジョッキをカチンと合わせる。
「今、誰かと付き合っているの?」
亮平はいきなりストレートに質問してきた。
「……今は誰も」
「じゃあ今度ひまな時、遊びに行こう。
LINEやってたらIDの交換しない?」
うなずくと小さなときめきが、一瞬胸を走る。
「ではとりあえずお開きにします。
二次会はまた話し合いましょう」
でも今日、いちばん嬉しかったのは、
会を開いた芽美を含め、仲間の優しさに触れたこと。
正直、喪失感はまだまだ強いけれど
この仲間たちのことを思い浮かべれば、
これから少しずつ、やり直しはできると思った。
(おわり)
※この記事は2013年06月06日に公開されたものです