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【新連載】28歳、私の一番きれいな時期はもう終わったのかな……

佐々木課長の奥さんには1度だけお会いした。
場所は今時めずらしいレトロな喫茶店で。
思ったよりずっときれいで、厳しい人だった。

「佐々木には二度と会わないでください」

「二度と会わない」という念書を書き、
会社を辞めてくれれば、慰謝料はとらないという。
「もしそれでも会っていることがわかったら、
会社を辞めても慰謝料を請求します」

奥さんは普通に淡々と話していたが、
目が真っ赤で、ときどき体がビクンと震えた。
たぶんとても強い怒りを抑えているのだろう。
わたしは心の底から彼女が怖くなり、
言われるままに念書を書き、捺印した。

だけどその後、一度だけ佐々木課長に会った
課長は「本当にすまない」と言いながら、
懇意にしている医療系の教授を通して、
紹介してくれたのが今の職場だ。

「わたし、本当にバカだったな」
窓の外を見ながら思わず苦笑すると、
スマートフォンが震える音がした。
LINEに着信、大学時代の友人の芽美からだ。

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