生理前のイライラ、どうしたらいい? 今すぐできる「月経前症候群」対策
生理前のイライラ、ホルモン変動が背景に
―― 前回は、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンの働きや、生理周期が乱れる原因などについて教えていただきました。今回は、生理前の心の症状についての相談です。生理前に何かと不調が起こりやすいことは、女性の多くが経験していると思いますが、なぜイライラしやすくなったり、気分が落ち込んだりする症状が起こるのでしょうか?
高尾先生:まずはじめに、前回のおさらいをしましょう。排卵後、体は妊娠を継続させるためにプロゲステロンというホルモンを出しますよ、とお伝えしましたね。
―― はい。プロゲステロンは排卵を期に増えていくのでしたね。
高尾先生:そうです。その後、妊娠に至らない場合は、プロゲステロンが急激に減っていきます。このプロゲステロンの急激な増減が、生理前の不調の原因のひとつと考えられています。ホルモンの分泌の変化は、体の機能を調節する「自律神経」に影響を及ぼすため、頭痛やイライラなどの自律神経失調症状があらわれやすくなるんですね。ただ、自律神経はストレスによって受ける影響が大きく、女性ホルモンの変化以外にも多くの要因が関係しているといわれています。
一方で、生理前の「嫌だな」と感じるからだの変化もよく考えると、ちゃんと排卵し、プロゲステロンが出た結果、感じる変化なんです。婦人科医としては、みなさんに「生理のサイクルがちゃんと来ているからなのね」と、受け止めてもらえるとうれしいですね。体の変化を肯定的に受け止めるだけでも、気持ちが落ちついて症状が改善することがありますよ。
生理前のみ調子が悪いなら月経前症候群(PMS)
――ところで、月経前に体調が悪くなる、イライラするなどの不快症状が続くことを「月経前症候群(PMS)」といいますね。精神症状が強いものは「PMDD(月経前不快気分障害)」と診断されると聞きました。イライラが強い場合にはどちらになりますか?
高尾先生:PMSとひと言でいってもさまざまな症状があり、症状の程度にも個人差があります。心の症状としては「イライラする」「緊張が強い」「涙もろくなる」「うつっぽくなる」という4つが多いです。
ただ、PMSとは「生理前だけ調子が悪いこと」と理解しておけばよいでしょう。具体的には、生理がはじまる1週間ぐらい前からさまざまな不快症状が起きて、生理がはじまると症状が軽くなったり、解消したりする症状のことをいいます。生理前のイライラや不安、落ち込みなどもPMSの症状のひとつです。
一方、PMDDは精神的な症状が強く出て、重症な抑うつ状態になることをいいます。PMDDの頻度は約1%と言われ、 診断される人の割合は多くはありません。PMDDは心療内科や精神科での診断・治療が必要になります。
月経前症候群(PMS)とは
月経前症候群(PMS)とは、生理(月経)前、3~10日の黄体期のあいだ続く精神的あるいは身体的症状で、生理開始とともに軽快ないし消失するもの。精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。日本では生理のある女性の約70~80%が月経前に何らかの症状があります。生活に困難を感じるほど強いPMSを示す女性の割合は5.4%程度といわれています。
参考資料:日本産科婦人科学会HP 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13