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【新連載】壊れたスマホに入っていたのは、昔の彼のメールアドレス……

それからしばらく、隼人やわたしは、
他のお客さんたちから質問ぜめにされた。
どこで知り合ったとか、
どのくらい付き合っているのかとか、
いつもどこへデートに行くとか。

そのくらい普通に話せばいいのかもしれない。
でもわたしは、隼人とすごした時間のことを、
他の人に言いたくなかった。
何かふたりだけの思い出が、
減ってしまうようで、愉快じゃない。

そのうち隼人が「ちょっとトイレ」と席を立つと、
代わりに坂上涼子さんが、
隼人のいた席にちょこんと座った。

わたしはひどく助かった気分で
「これから、よろしくお願いしますね」
そう言ったとたん、涼子さんの横顔から、
微笑みがスッと消え去った。
「わたし高校の頃ね、隼人と付き合ってたの」

涼子さんはお店の暗さにまぎれて帰った。
すると、どこからかともなく
「涼子はさ、結婚意識してたから」
と男性の声が聞こえてきた。

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