【新連載】壊れたスマホに入っていたのは、昔の彼のメールアドレス……
その晩は、ほどなく隼人に送られて、
カフェを後にすることができた。
でもその後も何度か、断りきれず、
わたしは隼人にそのカフェに連れていかれた。
でもどうしても、お店の雰囲気になじめない。
そして隼人は、そのカフェの常連さんたちの、
高校の頃の同級生、それに先輩や後輩たちと、
今もとても濃いつながりを結んで、
暮らしているようだった。
わたしは隼人のことは大好きだったけど……
これ以上深入りすると、傷つくだけと思った。
「ごめんなさい……」
隼人は最後、微笑んではくれなかった。
ただじっと下を向いて、動かなかった。
新しいスマートフォンを眺めながら、
わたしはそんな思い出にひたっていた。
そして「連絡先」の中から、
静かに隼人のメールアドレスを消し、
心の中でもう一度さよならを口にする。
とてもいい人だったな、と微笑みながら。
(おわり)
※この記事は2014年07月03日に公開されたものです