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これってモラハラ? 「職場でのモラハラ」事例と対処法

刈谷龍太(弁護士)

小村由編

職場でのモラハラ事例


モラハラは目に見えるような暴力ではなく、言葉や態度だけで精神的に相手を傷つけるので、第三者に気づいてもらいにくいという特徴があります。特に、2人だけの空間で迷惑行為を受ける場合は、誰かに相談しても信じてもらえないこともあるでしょう。交際相手や家庭で被害を受ける人もいますが、職場でのモラハラに悩まされている人も少なくありません。モラハラに該当する事例としては下のようなケースが挙げられます。

事例1:人格を傷つけているケース(上司⇒女性の部下)


上司から忘年会や営業の帰りなどで、営業成績や仕事内容に関してたびたび厳しい指導を受けるとともに「存在が目障りだ。いるだけでみんなが迷惑している。お願いだから消えてくれ」、「お前は対人恐怖症」、「肩にフケがたくさんついている。お前病気とちがうか」などの発言を浴びせられるケースがあります。この事例は上司が部下に対し、力関係を利用せずに部下の人格や尊厳を傷つけているのです。このような上司の発言は、業務上の正当な指導の範囲を逸脱するものであり、単なる精神的虐待にすぎないと言えます。

事例2:典型的ないじめだったケース(女性⇒同僚女性)

職場の同僚から自分だけ無視をされ、意図的に仲間はずれにされたり、「あの子は尻軽だ」、「仕事中に携帯や鏡ばかり見ている」など根も葉もない悪い噂を流されたりするケースもあります。この事例は、力関係のない職場の同僚が本人を孤立させようとしたり、本人の人格や尊厳を傷つけていたりするのです。このような同僚の行為は、典型的な職場内のいじめと判断できます。

事例3:モラハラかどうかわかりにくかったケース(上司⇒部下)

部下が帰社命令を無視して帰宅したことに対し、上司が深夜に「私、怒りました」など怒りを露にして留守電を残したケースが、過去の判例にあります。第一審(地裁)は、違法とまではいえないとの判決でしたが、控訴審(高裁)は、帰社命令に違反したことへの注意することよりも、部下に精神的苦痛を与えることを主として行われたものとして違法であるとの判決になりました。このように第一審と控訴審で判断が分かれましたが、部下への命令違反に対する注意という正当な意図も含んでいたとしても、あわせて精神的苦痛を与える目的をもち、深夜に怒りを露にした留守電を残すというような不穏当な手段・態様で行えば、モラハラになるといえます。

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