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【新連載】田舎に戻った私が出会ったのは、やさしくて頼れる人……

イベントが終了した2日後、
助けてもらったお礼に、岩城さんを食事に誘った。
予約した小料理屋さんの二階には他にお客はなく、
少しドキドキした。
「イベントの時は本当にありがとうございました。
岩城さんが来てくれなかったら、どうなってたか」

「いえ、ぼくがもっと早く行っていれば、
藤川さんにも恐い思いをさせなかったのに。
申し訳なかったです」
目の前には、鮟鱇鍋がくつくつと煮えている。
わたしたちは声を合わせて「いただきます」
と言った後、鍋を食べ始めた。
そしてわたしはこの土地に帰る前の話を、
岩城さんには伝えるべきだと、話す決心をした。

「わたし……東京ではIT関連会社にいたんです。
最初はSE、技術者として働いてたんですが、
会社がプログラミングの仕事をとれなくなってきて、
途中から営業職に回されたんです。
でも、営業の仕事がぜんぜんできなくて。
毎日上司から……悪気はなかったと思うんですが、
遅いとかダメだとか大声で叱られているうち、
会社に通えなくなっちゃったんです。
朝、玄関から外へ出られなくなって。
それで、実家に帰ってきたんです」

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