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【新連載】田舎に戻った私が出会ったのは、やさしくて頼れる人……

床の削りかすを掃除し終わると同時に、
図書館の開館時間となった。
入口からは、子どもを連れたお母さんや、
お年寄りが続々と入ってくる。
するととたんに館内は、のんびりムードに。
そう、利用者のことを考えると、
図書館ではせかせかと動くことは、
かえってマイナスになることの方が多い。

「ダメですね。前の会社で働いていた時の、
『急がなくっちゃ』の感じが抜けなくて」
あ、また布田さんに愚痴を言ってしまった。

「そんな、ぜんぜんダメじゃないですよ。
むしろここはのんびりしすぎた人が多いから、
藤川さんみたいにキビキビ働いてくれる人は、
刺激になっていいと思いますよ」
ニコニコして言う布田さんは市の職員で、
ふたりのお子さんがいるお母さんでもある。

わたしはこの布田さんや図書館の他の人たちに、
多いに助けられながら働いている。
そして時々、利用者の市民の方々にも。
それからわたしはカウンターに入って、
心の中で「ゆっくりゆっくり」と唱えながら、
本の貸し出し業務につく。

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