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【新連載】田舎に戻った私が出会ったのは、やさしくて頼れる人……

翌日の11時45分、図書館の自動ドアが開き、
「どうも失礼します~」と岩城さんが来た。
一瞬だけ体がビクリと反応したけれど、
岩城さんがいつもとまったく同じ態度だったので、
わたしもいつも通りの対応をすることができた。
さらに普段通りにわたしを昼食に誘い、
同じ定食屋さんで、イベント当日に役立つ話を、
さまざまに聞かせてもらった。
わたしは精神的にも職務的にも多いに助けられ、
岩城さんには心から感謝した。

そして朗読イベント当日。
まずはお客さんなしの状態で朗読のリハーサル。
すると小綺麗なおばさんに見えた上柳美代子は、
朗読開始と同時にたちまち女王のように、
優雅で威厳のある女性に早変わりした。
たまに見るサスペンスドラマの脇役でしか、
彼女を知らなかったから、その変化に目を見張った。

そして午後、抽選でチケットを当てた市民が、
続々と図書館に入館してきた。
わたしは受付でチケットをもぎり、
時間になったので一度入口を閉めようとすると、
挙動不審な男性が図書館に近づいてくるのが見えた。
「うおぅい、オレも入れてくれよぉ!」
真昼なのに、男性はあきらかに泥酔していた。

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