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【新連載】田舎に戻った私が出会ったのは、やさしくて頼れる人……

「それでわたし……岩城さんのこと、
すごく好きなんです。大好きなんです。
でも今どうしても男性と『お付き合いする』って、
そういう気持ちになれなくて。
だから、もう少しだけ時間をもらいたいんです」

わたしの目を覗き込むようにして、
うなずきながら聞いてくれた岩城さんは、
やがて大きく息を吐き、あぐらをやめて正座した。
顔が真っ赤だった。
「大丈夫です。ちゃんと待ってます。
藤川さんは、ゆっくり来てくれればいいです」

そう言ってくれた岩城さんの笑顔をみて、
わたしはまた涙が出そうになったけれど、
甘えすぎはいけないとグッとがまんした。
そして、岩城さんは言った。
「すみません。ビールを頼んでもいいですか」
「……あ、わたしも」
ビアグラスが来ると、わたしたちは乾杯した。
「ふたりの未来に!」

それから岩城さんは、ひどく小さくつぶやいた。
「どうしよう『好き』って告白されちゃった」
たぶんわたしも、そのつぶやきを聞いたとたん、
岩城さんと同じくらい顔が赤くなったと思う。

 

(おわり)

 

※この記事は2013年01月11日に公開されたものです

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