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【新連載】田舎に戻った私が出会ったのは、やさしくて頼れる人……

Story4 ★恐れの向こう側へ

「恐い……」
泥酔して体を揺らしながら近づいてくる男性が、
わたしには、体中の血が凍りつくほど恐かった。

ダメだ。あの朗読をこんな人に邪魔させては。
わたしは勇気を出して、男性の前に立ちはだかった。

「申し訳ありません。
お酒を召し上がっている方の入館はお断りしています」
「なんだと、バッキャッロー!」

男性は手にしていたポケットウィスキーの瓶を、
玄関前の石畳の上に、思い切り叩きつけた。
ガシャンと大きな音がして、ウィスキーが強く匂う。
男性は病気なのかと思うほど、顔が真っ赤だ。
わたしは恐くて、脚がガクガクと震えた。
でも気力をふりしぼって、再びお願いする。
「申し訳ありません。規則ですので」
「うぉい、ふざけんなよぉ!」
男性の目は、怒りと酔いで血走っている。
もう、恐くて立っていられないかも。

そこへ「どうかしましたか」と岩城さんが、
内側から自動ドアを開けて飛び込んできた。
「この方が、どうしても中へと……」
「わかりました。あの、ちょっといいですか?」
岩城さんはそう言うと泥酔男と肩を組み、
図書館の裏手へと連れ立って消えていった。

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