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【新連載】田舎に戻った私が出会ったのは、やさしくて頼れる人……

Story2 ★2つの願いごと

岩城さんとのランチは図書館近くの、
安くておいしい定食屋さんと決まっている。
小さなお店だけれど掃除が行き届いていて、
近海でとれるお魚の煮付けがおいしい。
「いやあ、決まってよかった。
上柳美代子さん、舞台がなかなか忙しくてね。
一時は、もう無理かもってあきらめてたんだ」

岩城さんはトンカツ定食を豪快に食べながら、
笑顔でイベント計画の経過を教えてくれる。
でも、ふいに申し訳なさそうな顔になった。
「でね……申し訳ないんだけど、
当日、受付をお願いしてもいいかな……。
受付だと本番が見れなくなっちゃうんだけど」

「はい、わたし受付やります
図書館の人たち、上柳さんのファン多いし」
「本当に、申し訳ない。
この借りはいつか必ずお返しします」
「そんな、大げさな」
「大げさじゃないよ。藤川さん以外、
誰に頼んでも恨まれちゃう。助かりました」

瞬く間にトンカツ定食を食べ終えた岩城さんは、
大きな背中を丸めて、わたしに両手を合わせた。

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