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【新連載】田舎に戻った私が出会ったのは、やさしくて頼れる人……

市役所の会議の後は直帰だったので、
その日は、いつもより早く家に帰れた。
母の夕飯の支度を手伝い、
父も交えて3人で食事をしながら、
図書館に上柳美代子が来る話をすると、
ふたりとも「それはすごい」と喜んでくれた。

しばらくしてお風呂に入り、
湯船につかったとたんに、涙がこぼれ落ちた。
わたしも岩城さんのことは、大好きなのに。
「はい」と言えたら、どんなによかっただろう。
図書館で働くみなさんも応援してくれていて、
何も隔てるもののない、理想的な関係なのに。

でもわたしだけが、飛び込めない。
岩城さんを受け入れたいのに、できない。
「あーあ」
湯船から出ると何もかもを洗い流すように、
ざぶざぶと乱暴に顔を洗ってみた。
わたしは次から岩城さんに、
どんな顔で会えばよいのだろう。
「待って」と言ってしまったけれど、
どれだけ待たせることになるのか。
どれもまったく、わからない。
ああ「わからない」って、何て寂しいんだろう。
さっき顔を洗ったのに、また涙が頬を伝う。

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