お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

【心理学】認知の歪みとは? なぜ起こるのか・原因と対策を解説

高見綾(心理カウンセラー)

認知の歪みとは、思い込みによって物事を正しく解釈できなくなる現象のこと。ネガティブな思い込みは生きづらいと感じる原因に。こうした現象はなぜ起こるのでしょうか? 心理カウンセラーの高見綾さんが、認知の歪みへの対策をわかりやすく解説します。

物事を非合理的に解釈する「認知の歪み」。認識に偏りがあると、思い込みからネガティブになり、生きづらさの原因になることがあります。

そこで今回は、この言葉の意味や具体的な事例について詳しく解説します。対処法も併せて紹介しますので、自分の認識に偏りがないか、ぜひチェックしてみてください。

認知の歪みとは?

認知の歪みとは、物事を歪んで捉えることで間違った考え方や思い込みをしてしまうこと。

1976年に心理学者のアーロン・ベックによって基本的な理論が提唱されました。その後、デビッド・d・バーンズが研究を引き継ぎ、発展させていきます。

ある出来事に遭遇した際に、無意識にぱっと思い浮かぶこと(=「自動思考」)には、日頃の物事の捉え方が大きく影響しています。

日頃から物事をネガティブに捉えている人は、自動思考もネガティブになりがち。

例えば、職場に不機嫌な人がいた時に、「体調が悪いのかな?」と思う人もいれば、「私のせいで怒らせたのではないか」と捉える人もいます。

このように、同じ物事に遭遇しても、人によって捉え方や反応は異なるのです。

もし、ネガティブな気持ちになりやすいのであれば、今までとは違う捉え方を取り入れてみると楽になるかもしれません。

関連記事はこちら▼

よく似た心理学の用語に「認知バイアス」があります。併せてチェックしてみてください。

日常で起こりやすい「認知の歪み」の例と傾向

では、認知の歪みとは具体的にどのようなものか、代表的な例を詳しく見ていきましょう。自分もこれに当てはまる考え方をしていないかチェックしてみてください。

(1)白か黒ではっきりさせないと気が済まない(白黒思考)

物事をグレーな状態で捉えることを好まず、全てを白か黒かだけで認識しようとするのは認知の歪みの代表的な特徴です。

例えば、周りを自分の敵か味方に分けることで、対応が極端になってしまうといった問題が挙げられます。

完璧主義的な発想のため、少しでも至らない点があれば、自分はダメだと評価して自信を失いやすい傾向にあります。

関連記事はこちら▼

「完璧主義」の特徴と対処法を、心理カウンセラーが詳しく解説しています。

(2)「○○すべき」「○○しなければならない」という思考

「AをしてもBをしてもどちらでも良い」とは思わずに、「絶対にAをすべき」「Aをしなければならない」と考えるのも、認知の歪みの事例の1つ。

例えば、仕事や日常生活で「ノルマは何があってもクリアしなければならない」「家事は自分が全てやるべき」などと思うあまりプレッシャーを感じ、それが実現できなかった時にひどく自分を責めて落ち込みます。

また、自分のルールを周りにも強制する傾向にあるので、他人とぶつかったり攻撃的な行動を取ったりすることが多くなります。

(3)ポジティブな面を軽視する

うまくいったことがあっても、「大したことはない」「たまたまだ」と捉えるのも認知の歪みの例です。

一方で、うまくいかなかったことについては、「やっぱりね」と思うので、やがて考え方がネガティブな方向に偏っていきます。

関連記事はこちら▼

「ポジティブ思考」が苦手な人は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。

(4)ネガティブな面しか見えなくなる

物事のネガティブな面ばかりを抜き出すため、良いことがあったとしても、本人の中ではそれを否定して、なかったことになってしまいます。

例えば、午前中は楽しく仕事をしていたのに、午後にお客様からクレームをもらったりミスをしたりするとします。すると「今日は最悪の日だった」「何も楽しくなかった」と悲観的に評価してしまうのです。

関連記事はこちら▼

ネガティブ思考の原因と改善策について、詳しく解説しています。

(5)関係ないことでも自分の責任だと思う(自己関連付け)

自分には責任がないことなのに、何でも自分に結びつけてしまう思考パターンです。

例えば、体調不良で不機嫌な上司を見て、「自分が怒らせたのだ」と自責の念に駆られたり、両親の不仲は「自分が悪い子どもだからだ」と思い込んだりします。

関連記事はこちら▼

自責の念に駆られる心理や克服方法を、心理カウンセラーが詳しく解説しています。

(6)人の気持ちや未来を決めつける(恣意的推論)

相手に確認せずに「あの人は私を責めている」と思ったり、将来について「こんな私にはパートナーはできないだろう」と決めつけたりする思考パターンも認知の歪みと言えます。

こうした思い込みによって根拠のない不安に襲われたり、周囲との関係性が悪くなったりしがちです。

(7)悪いことは拡大し、良いことは縮小して解釈する

自分の強みは小さく評価し、弱みは大きく評価するため、他人と比べて劣等感や不安を抱きやすくなるのも認知の歪みのパターンです。

この思考パターンを持つ人は、逆に他人の長所は拡大し、短所は縮小して解釈する傾向にあります。

(8)感情で決めつける

事実や合理的な根拠を軽視して、自分の感情に基づいて物事に結論を下します。

例えば、「やる気が起きないから、やらなくて良いはずだ」「(自分が傷ついたことを根拠に)あの人は自分を傷つけようとした」など、自分の感情は正しいと思い込もうとするのが特徴です。

(9)一部を全体に当てはめる(選択的抽出)

一度誘いを断られただけでも「いつも断られてばかりだ」「Aさんは私のことが嫌いなんだ」などと、一部を全体に当てはめて考えるのも認知の歪みの事例です。

こうした思考パターンを持つ人は、常に嫌なことが起きているように感じるため、不安感が増す傾向にあります。

(10)レッテルを貼る

前項の「一部を全体に当てはめる」思考が過度になると、自分(もしくは他人)にレッテル貼りをするようになります。

例えば、一度誘いを断られたことで「私は誰からも必要とされない人間なんだ」と決めつけたり、劣等感を抱いたりするなどが事例として挙げられます。

関連記事はこちら▼

自分にネガティブなレッテルを貼ってしまう人へ。自尊感情の高め方を解説しています。

認知の歪みが起こる原因

では、認知の歪みが起こる要因にはどのようなものがあるのでしょうか。考えられるものを2つ挙げていきます。

(1)周りの人間関係や経験からの影響

認知パターンは、親や学校・会社・友人などさまざまな人との関わりや、経験を積み重ねていく中で形成されていきます。

他人との関わりの中で「そういうふうに捉えるんだ」と学習するため、認知の歪みが形成されることもあれば、逆に解消されることもあります。

また、誰にでも「自分の考えは正しい」と思いたい心理があるので、指摘されたとしても、違う意見を受け入れられずに思い込みが強化されてしまうことがあるでしょう。

関連記事はこちら▼

人間関係におけるストレスへの対処法を解説しています。

(2)過去のトラウマ

悪い方に決めつけてしまう認知パターンは、過去に傷ついた経験から強化されることがあります。

「これ以上傷つきたくない」という思いから、あえて物事をネガティブに捉えようとするのです。

何か悪い出来事が起きた時、「やっぱりね」「そうだと思った」と思うことで衝撃を和らげる働きをします。

心理学で対策! 「認知の歪み」への対処法

物事をネガティブに捉える人は、ささいなことで落ち込んでしまいがち。認知の歪みに対処することで、生きづらさを解消できるかもしれません。

ここでは、認知の歪みへの対処法を紹介します。

Step1.感情を言語化する

認知の歪みは無意識の自動思考に表れるため、自覚がないものです。そこで、感情が動いた出来事について言語化してみることが最初のステップです。

個人で行う場合、頭の中のモヤモヤをひたすら紙やノートに書き出していきます。

誰かに見せるものではないので、「こんなこと思ってるなんて良くない」といった判断はせず、自分の気持ちを正直に吐き出しましょう。

関連記事はこちら▼

感情を言語化するために、自分を深く省みる「内省」の考え方が役立つかもしれません。併せてチェックしてみてくださいね。

Step2.認知の歪みに気づく

自分が書いたものの中に、認知の歪みの具体例に当てはまるものがないかをチェックします。

感情が動いたことには何かしらの理由があります。将来が不安なのであれば、不安になる理由や根拠を深堀りしてみましょう。

すると、取り越し苦労の癖があることに気づけるかもしれません。「自分にはこういう考え方の癖があるのか」と気づくことが大切です。

1人でするのが難しい場合は、カウンセリングを受けてみるのも良いですね。

Step3.他の捉え方を探す

次に、他の捉え方がないか深堀りします。

「最近ツイてないことばかりだ」と感じるのなら、そう思った根拠を探したり、逆に良かったことやうれしかったことがないか思い出してみたりします。

すると、視野が広がりバランスの良い考え方に修正していけるようになるでしょう。

このように、他の捉え方を探すトレーニングを、心理学で「リフレーミング」と言います。

関連記事はこちら▼

「リフレーミング」のやり方について、心理カウンセラーが詳しく解説しています。

自分の捉え方の癖に気づこう

物事をどう解釈するかに正解はなく、誰でも認知の歪みを持っています。具体例を見て、「自分にも当てはまる」と思った方が多かったのではないでしょうか。

もし、ネガティブ思考気味でつらいということであれば、物事の解釈を見つめ直してみるのも1つの方法です。自分の捉え方の癖に気づくだけでも心が軽くなりますよ。

(高見綾)

関連する診断をチェック!

気にしすぎてない? 神経質レベル診断

※画像はイメージです

SHARE