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生理前や生理中に下痢になるのはどうして? 理由と対処法

窪麻由美

生理前や生理中になると下痢になるのはどうして? 生理周期に合わせて下痢になってしまう理由とは何なのでしょうか? また、その際に下痢止めなどの薬を飲んでもいいのでしょうか? 産婦人科医の窪麻由美先生に詳しく伺ってみました。

生理(月経)前に下痢になったり、生理前は便秘だったのに生理が始まったとたん下痢になったりするという方は多いのではないでしょうか。気が付けば月に1回は下痢をしているかもしれないという場合は生理に関連した下痢も考えられます。

女性ホルモンの作用により排卵し生理が起こりますが、それに伴ってさまざまな調子の悪いことが起こる場合があり、人によっては便通に影響することもあります。

ここでは生理前、生理中の下痢の原因とその対処法について解説します。

なぜ? 便秘だったのに生理前や生理中に下痢になる原因

まずは、生理が始まる前と始まった後、それぞれのタイミングで下痢になる原因について見ていきましょう。

生理前と下痢の関係性

生理の3~10日くらい前から現れる精神的または身体的に起こる症状で、生理がはじまるとともに症状が軽快または消えるものを月経前症候群(PMS)といいます。

精神的な症状としてはイライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下など、身体的な症状としては頭痛、腰痛、むくみ、お腹の痛み、乳房の張りや痛みなどがあります。そして下痢はPMSの身体的な症状の一つとして挙げられます。

PMSの症状は生理が始まるとスーッと消えてしまうことが多いという特徴があります。

PMSがなぜ起こるのかその原因はわかっていませんが、女性ホルモンの変動の時期とPMSの現れる時期が重なることから、女性ホルモンと関係しているのではないかと考えられています。

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生理周期と女性ホルモンとPMS

上のイラストにあるように、排卵から生理までの期間である黄体期にはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されます。

これらは黄体期の後半に急激に低下するのですが、そのことが脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことでPMSが生じると考えられています。

また、PMSは女性ホルモンだけの作用ではなく、ストレスなど多くの要因から起こるとも考えられています。

生理中の下痢

生理が始まると子宮内膜や血液を経血として体外に押し出すために、子宮の収縮を促す物質であるプロスタグランジンが分泌されます。このプロスタグランジンは腸の働きを活発にする働きがあり、そのために下痢になることがあります。

生理が始まると下痢以外にも下腹部の痛み、腰痛、頭痛、吐き気、イライラなどさまざまな症状があらわれることがあります。

これらの症状が強く、日常生活に支障が出るほどの場合は月経困難症(いわゆる“生理痛”と呼ばれるもの)と考えられます。

このように、下痢は生理前や生理中に起こりやすく、人によっては生理前の下痢が生理中も続くこともあります。

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生理前や生理中に下痢にならないための対処法

偏った食生活、食物繊維の摂取不足、運動不足、ストレス、体の冷えなどは腸の働きに影響を与えることがあります。

下痢にならないためには、規則正しい毎日を送るように生活の改善を図る、体を冷やさないようにする、嗜好品を控えるなど、まずはこれまでの生活習慣を見直してみることも大切です。

生理前のつらい下痢への対策

頭痛や腰痛、お腹の痛み、乳房の張りといったPMSの症状の一つとしてあらわれている下痢かもしれません。ここでは下痢を含めたPMSの対処方法を紹介します。

生活の改善

PMSがなぜ起こるのかその原因はまだわかっていませんが、女性ホルモンが関係していると考えられています。女性ホルモンは黄体期の後半に急激に低下し、それが脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こしてPMSを生じさせると考えられています。

神経伝達物質はストレスや生活リズムと関係しているため、食生活や嗜好品、睡眠、運動などの生活習慣がPMSの現れ方に影響する可能性があります。

ですから、規則正しい生活を送る、睡眠を十分にとる、適度な運動をする、ストレスをためないようにするなど、生活習慣を改善することによりPMSの改善が望めることもあるのです。

なお、生活習慣を改善してもPMSがあらわれる場合や、あらわれる症状が強い場合には、医師により症状に応じた薬や漢方薬が処方されることもあります。

食べ物は嗜好品を控える

カフェインを多く含む飲み物、アルコール、たばこなどの嗜好品を控えることでPMSの症状が改善することもあります。

ビタミンB6を摂る

ビタミンB6 はPMSを改善するのに効果があるという報告[*1]があります。

黄体期の後半に女性ホルモンの分泌が急激に低下し、それが脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことでPMSが生じると考えられていると説明しましたが、ビタミンB6はその神経伝達物質の一つであるセロトニンの合成に必要なビタミンとされているのです。

ビタミンB6は鶏肉、レバー、鯵、鰯、にんにく、ピスタチオなどに多く含まれています。

生理中のつらい下痢への対策

月経困難症で多く見られる症状は下腹部の強い痛みや腰痛ですが、それ以外にも吐き気や頭痛、疲れやすい、下痢などの症状があり、生理中の下痢のなかには月経困難症の症状としてあらわれているものも考えられます。

日常生活に支障をきたすような場合は医療機関を受診しましょう。

月経困難症の原因が子宮や卵巣の病気であった場合(器質性月経困難症)は、それぞれの原因に合った治療が必要となります。

子宮などに問題がない場合(機能性月経困難症)は、ストレスなどの精神的なことが原因で症状が強くなることもあります。

生活の改善

月経困難症の原因として子宮などに問題がない場合(機能性月経困難症)は、過労や精神的なストレスが原因となることが多いので、生理中は夜更かしや暴飲暴食をしたり、仕事や家事、勉学に根をつめたりせず、規則正しい生活を送り、散歩や趣味などで上手に気分を発散させて過ごすとよいでしょう。

お腹のあたりを温める

月経困難症では子宮の収縮を促す物質であるプロスタグランジンが多く分泌されますが、このプロスタグランジンによって子宮だけでなく、血管や神経も収縮して血液の流れが悪くなり、体の冷えを感じやすい状態になります。

お腹のあたりを温めると、腹痛や下痢が緩和されることがあります。スカートではなくパンツを着用したり、カイロを貼るなどして温めるといいでしょう。

刺激の強い食べ物は控えめに

生理中の下痢だけに限らず、下痢の時は刺激の強い食べ物や飲料、コーヒー、アルコール、香辛料を摂りすぎないように注意しましょう。

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下痢になったときに食べるといいもの

下痢のときは脱水症状に気を付ける必要があります。体内の水分と電解質(とくにナトリウムとカリウム)が失われるので、スポーツドリンク類で補給しましょう。

また、食べ物は肉類や脂っこいものを避け、おかゆ、重湯、よく煮込んだうどん、味噌汁、野菜スープ、リンゴのすりおろし、アイスクリーム(脂肪分の少ないもの)など、消化吸収のよいものを摂るようにしましょう。

生理前や生理中に下痢になったら下痢止めを飲んでもいい?

腸は縮んだり緩んだり(収縮と弛緩)を繰り返す「ぜん動運動」によって腸のなかの内容物を肛門の方へ送ります。

生理に関わる下痢はこのぜん動運動が活発になりすぎ内容物が急速に通過するため、水分の吸収が十分に行われなくなることが原因で起こると考えられます。

一時的にどうしても下痢を止めたい場合は、腸の動きを抑える作用がある成分(ロートエキス、ロペラミドなど)を配合している下痢止めの薬がよいでしょう。

そのほか、下痢によって腸内細菌の乱れが出てしまうこともあるので、整腸剤を服用することもあります。

なお、生理とは関係のない感染性の下痢は、細菌などによって腸の中が炎症を起こしていることが原因となるため、殺菌作用や有害物質を吸着する成分が入っている薬でないと効果が期待できません。

生理に関わる下痢の時と感染性の下痢の時とでは薬の選び方が異なりますので注意しましょう。

また、これまで経験したことのないようなひどい下痢の場合や、生理に伴う症状が下痢以外にもあり、それらの症状で日常生活の質が低下しているようであれば医療機関を受診しましょう。

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生理前と生理中の下痢は女性ホルモンの関与も

生理前から生理中にかけては、女性ホルモンの急激な変化などの影響で下痢になることもあります。下痢の時は無理をせず、生活のリズムを整えたり、下痢が悪化しないように体をケアしたりしましょう。

これまで経験したことのないようなひどい下痢の場合や、日常生活の質が低下している場合は医療機関を受診しましょう。

(文・構成:株式会社ジーエムジェイ、監修:窪麻由美先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1]Wyatt KM, et al. Efficacy of vitamin B, in the treatment of premenstrual syndrome. BMI 1999; 318: 1375-81.

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