自責の念に駆られる。その意味と心理、克服するための対処法
自責の念の読み方や意味・類語・英語表現とは? また、自分を責めてしまう人の特徴や原因を心理カウンセラーの大塚統子さんが解説。克服するための対処法も紹介します。
「なぜあんなことをしてしまったのだろう?」「どうしてちゃんとできなかったのだろう?」と後悔ばかりしていませんか? すぐに「自分が悪い」と考える癖があると、苦しい気持ちになりやすいものです。
今回は、「自責の念」の意味の他、自責の念が強い人の特徴と心理、それから自分を解放するための対処方法を紹介します。
自責の念とは。意味と読み方
自責の念は「じせきのねん」と読みます。まずは自責の念について言葉の意味を知りましょう。
自責の念
後悔して自分を責める心持ち。
(出典『実用日本語表現辞典』)
自責の念とは過ちや無力さを「自分のせい」と思い、「自分が悪い」と自分自身を責める気持ちを指します。
自責の念の使い方と例文
自責の念を文章や会話で使うとどうなるのでしょうか? よく使われる言い回しをいくつか紹介します。
自責の念に苛まれる(さいなまれる)
「苛まれる」は苦しめられること、厳しく咎められることを指す言葉です。自分が悪いと思い、ひどく苦しめられているさまを表す言い回しが「自責の念に苛まれる」です。
自責の念に堪えない(たえない)
「堪えない」は感情を抑えることができない様子を表しています。自分のせいだという気持ちを抑えることができないことを「自責の念に堪えない」と言います。
自責の念を抱く
「抱く」は心の中に考えや気持ちを持つという意味。つまり、「自責の念を抱く」は心の中に自分を責める気持ちを持っているという意味になります。
自責の念の類義語・言い換え表現
自責の念には同じような意味の類語があります。
良心の呵責
悪とされる行為をした自分に対して、自分自身で責めたり咎めたりしていること。それにより苦しんでいることを指す言葉です。
後悔する
自分でしてしまったことを後になって悔やむことを後悔すると言います。
「良心の呵責」と「後悔」のどちらも、自分の行いによって、自分自身を責めたり悔やんだりしているさまを表しています。
自責の念の英語表現
自責の念を英語で表現する場合、「regret(後悔)」という単語を使うと良いでしょう。
I regret doing that then.(私はあの時のことを後悔している)
また、「remorse(自責・良心の呵責)」を使う場合もあります。
She feels deep remorse. (彼女は深い後悔を感じている)
どちらも深く後悔しているという意味合いとなり、自責の念を表しています。
自責の念に駆られやすい人の特徴
自責の念に駆られやすい人は、何かうまくいかないことがあった時に、まず「自分が悪いのでは?」と考えるタイプです。具体的には次のような特徴があります。
(1)口癖が「すみません」
人から何かしてもらった時、「ありがとう」というお礼の言葉ではなく、「申し訳ありません」「すみません」「ごめんなさい」などと言いがちです。
「相手に迷惑をかけている」と感じやすく、無意識にお詫びの言葉を多く使っています。
(2)責任感が強い
「自分に責任がある」と考えられるのは素晴らしいことです。しかし、あまりにも責任感が強すぎると、本来自分では背負う必要のないものにまで責任を感じてしまいます。
自責の念に駆られるタイプは、失敗は自分の責任と思い、成功は自分の成果とは思わない傾向があります。
(3)ネガティブな気持ちに敏感
人の目線の動きや言葉の端々などから、ネガティブな気持ちだけを敏感に感じ取ります。
「自分の何が悪かったのか?」と不安や心配になりやすく、自分の言い方や態度を思い返して気にします。
(4)後悔しやすい
例えば「ランチに何を食べたか」など、日常の些細なことまで後悔しやすい傾向があります。自分の選択を「結果的に良かった」と肯定するのが苦手なので、なかなか後悔の気持ちから抜け出せません。
(5)怒るのが苦手
怒るのが苦手で、失礼なことや酷いことをされても、「自分が悪いから」と納得しようとするところがあります。
自分が悪くないことまで「自分のせい」と理解しようとすると、心のバランスが崩れてしまうでしょう。
自責の念が強い人の原因と心理とは
自責すると苦しくなるのはわかっているのに、それでも責めてしまうのはなぜなのでしょうか。その原因と心理を解説します。
(1)罪悪感がある
「取り返しのつかない悪いことをしてしまった」「できることがあるのにしていない」「自分だけ楽をしている」といった罪悪感があると、「自分は責められるべき」と感じています。
人は感じていることと現実を一致させたいので、無意識にいろいろなことで自分を責めるような状況を作り出します。
(2)0か100の完璧主義
完璧にできた時にだけ評価をして、それ以外はできなかった「失敗」と認識しています。
また、完璧を目指して「○○すべき」「○○してはいけない」といった自分のルールを多く作っています。
この状態では「できていないこと」が目につきやすく、自責の材料が尽きません。
(3)自己否定を前提に理解する
物事を理解する前提に自己否定があると、自分を責める捉え方をしやすくなります。例えば、「自分は仕事ができない」と思っていると、上司からの言葉を叱責と理解することも。
否定が前提にあると、「アドバイスがもらえた」とポジティブには捉えにくいのです。
(4)自己肯定の方法が分からない
人から褒められる・認められる経験が少なかったり、欠点ばかりを指摘されたりしてきた場合、自分を責める方法は知っていても、肯定する方法は身についていません。
「頑張っている」「できている」「自分にはいいところがある」などと積極的に自己肯定をしていく必要があります。
(5)自分を守る防衛手段
「私が悪いです」と自分を責めることで、周囲の人に「どうか、これ以上私を責めないでください」と訴えています。
傷つくのを避ける防衛手段として自責を使うことがあります。しかし実際は、際限なく自分を責めてしまうことが少なくありません。
自責の念から解放されるための対処法
どうすれば自責の念から自分を解放することができるのでしょうか。自責の念を克服していくには、心の在り方を少しずつ整えていくといいでしょう。具体的な方法を紹介します。
(1)反省と自責を分ける
失敗や過ちに反省は必要です。反省は改善点や今後の課題を見つける作業です。
自責の念が強い人は反省と同時に自責をしていますが、反省と自責とは別物です。今後どうしたら良いかを考えるようにしてみましょう。
(2)自分を許す
「自分が悪い」「自分は許されない」という思い込みを変えるために、鏡に映る自分に向かって「私は私を許します」と声に出して伝えましょう。毎日10回くらい、45日ほど続けると心持ちが変化してくるでしょう。
(3)「ありがとう」を言う
自責している時、関心は自分自身にあります。「ありがとう」を言おうとすると、相手や相手の行為に関心が向き、人の優しさや善意が感じられるようになります。関心を持つものが変わると、感じる世界が変わるでしょう。
(4)自分のいいところを人に聞く
自責にはまっていると、自分の悪いところばかりが気になります。友達や家族や同僚などに「私のいいところは何だと思う?」と聞いてみましょう。
他者から評価してもらえるいいところが自分にあると確認できると、自責の感情が減らせるでしょう。
(5)「今、ここ」に焦点を当てる
後悔している時は過去に焦点が当たっています。
例えば、目の前においしい食事があって、話を聞いてくれる友達がいても、過去を思い嫌な気持ちが続いているのです。今、ここに焦点を当ててみましょう。目の前にある幸せに気がつきやすくなるでしょう。
(6)良かったことを考える
「もし良かったことがあるとしたら、それは何?」と考える癖をつけましょう。
ラッキーなことを見つけるのがうまくなると、ネガティブに傾いた考え方を中和しやすくなるでしょう。
(7)毎日3つ自分を褒める
自責の念が強い人は、自分に厳しいのです。自分に優しくなって、自分を大切に扱うために、毎日自分を褒めることを習慣にしましょう。褒めるのは小さなことでOKです。
自分を責めるよりも大切なことがある
すぐに「自分が悪い」と考える癖があると、自分が自分を追い詰めて苦しくなってしまいます。自分を責めてもいいことはありません。
自責の念に駆られるタイプの人は、「責任を持とう」「他人のせいにはしない」「より良い自分でいたい」と頑張っている人です。
自責とは逆に、自分にあるいいところを評価していきましょう。自分を肯定していくと、自責から自分を解放しやすくなります。
さらに、周囲にある優しさやラッキーなことを感じて、「今、ここ」でできることに取り組んでいると、だんだん自分のことが好きになっていくでしょう。
(大塚統子)
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