「幸いです」の意味と言い換え表現
ビジネスシーンでよく目にする「幸いです」。丁寧な言い回しですが、使うには不向きな場面も!? 今回は「幸いです」という言葉の意味、使い方、言い換え表現をマネジメントサポートグループ代表の古谷治子さんに教えてもらいました。
目上の人や仕事相手にお願い事をする時、こちらの希望をどう伝えたらいいかと悩んだことはありませんか? そこでおすすめしたいのが「幸いです」という言葉です。
日常会話ではあまり耳にしませんが、ビジネスメールやかしこまった場面でよく用いられます。
相手を尊重しながらも自分の気持ちを伝えたい、そんな場面で重宝する言い回しです。
ビジネスの場ではどう使うのか、意味と使い方をご紹介しましょう。
「幸いです」という言葉の意味
「幸いです」という言葉は、自分にとってありがたく思う、望ましいという意味の謙譲表現です。希望やお願い事を伝えるだけでなく、相手に好意を伝える場合にも使います。
お願い事をストレートに「〜してください」「〜でお願いします」と言うと、素っ気ない印象になります。なんだか厚かましい、あるいは自分の都合を押し付けるような感じになっていないかと心配にもなりますね。
そんな時は、語尾に「幸いです」をつけると柔らかな印象となり、相手への敬意が込められます。
メールや手紙などの文章で、目上の人や取引先に対してよく使われますが、口頭で使うのはNG、文章ならOKといった厳密な決まりはありません。
ビジネスシーンでの「幸いです」の使い方・例文
まずはどんな状況で使うのか、用件別に例文をあげましょう。
対応、検討をお願いしたい時
「ご確認の上、○日までにご連絡いただければ幸いです」
「○○の件、ご対応(ご検討)をいただけますと幸いです」
アドバイスや連絡が欲しい時
「ご教示いただけますと幸いです」
「ご助言をいただければ幸いです」
「ご確認の後、ご連絡をいただけますと幸いです」
「添付の書面をご確認いただけると幸いです」
好意を伝える時
「お役に立てて幸いです」
「お気に召していただけて幸いです」
「ご笑納くだされば幸いです」
「ご配慮いただき幸いです」
このように「幸いです」は多くの場合、○○してもらえるとありがたいと、依頼する事項を仮定条件として気持ちを伝えます。
また、「いただければ」「くだされば」「いただけると」「くださると」という謙譲表現と組み合わせるのが基本のパターンです。
「幸いです」を使用する際の注意点
次に注意点をご紹介しましょう。
「幸いです」は、こうしてもらえたらうれしいという意味であり、裏を返せば、どうするかは相手に一任されることになります。
急ぎの場合や確約が欲しい時に「幸いです」は不向き
したがって、期限に余裕のある時や相手に判断を委ねる場合には適していますが、急ぎの場合や確約が欲しい時には不向きです。
しっかりとお願いをした時には、「お願いいたします」「していただけますでしょうか」と、はっきりと伝える方が良いでしょう。
ストレートには伝えたいが言いづらい場合には、お願いの言葉だけではなく、クッション言葉を組み合わせると丁寧な印象になります。
クッション言葉とは、言いづらいことやストレートに伝えるときつくなりがちな言葉の衝撃をクッションのように和らげる言葉です。お願い事でもクッション言葉を使うと、相手への配慮を示せるので、言いたいことを伝えやすくなります。
具体的な例をあげましょう。
「お手数をおかけしますが、ご対応のほど、何卒よろしくお願いいたします」
「恐れ入りますが、ご連絡をいただけますでしょうか」
「大変恐縮ではございますが、下記の内容でご一考をお願いできればと存じます」
「ご面倒をおかけしますが、ご足労いただけますようお願い申し上げます」
「重ね重ね申し訳ございませんが、資料の再送をお願いいたします」
傍線の部分がクッション言葉です。
「幸いです」と使う場合にも、これらの言葉を組み合わせるとより丁寧な言い回しとなります。
同僚や後輩に使える「幸いです」の言い換え表現
「幸いです」という表現が少し堅苦しくなってしまう相手には、どのような言い換えが可能なのでしょうか。
砕けた印象の「助かります」「うれしいです」「ありがたいです」
同僚や親しい先輩への少しラフな言い方として、「○○してもらえると助かります」や「○○だとうれしいです」または「○○だとありがたいです」などがあります。
特に「うれしいです」は女性がよく使いますが、カジュアルな印象を与えるため、使用範囲は社内のみにしましょう。
仕事相手でも比較的親しい間柄などギブ&テイクの関係の場合は、このようにフランクに言えますが、相手を立て、感謝の意を込めたい場合のステップアップ表現として「幸いです」という言い方を覚えておくと、きちんとした大人の品性を印象づけられます。
目上の人へ使える「幸いです」の言い換え表現
続いて、目上の方への使い方についてお伝えしましょう。
「幸いに存じます」でより敬意を表現
「幸いです」は目上の人に使っても失礼にはあたりませんが、重要な取引先などには、「幸いに存じます」という表現を用いると、より敬意を表すことができます。
さらに格式を持たせるなら「幸甚に存じます」
さらに格式を持たせるなら、「幸甚に存じます」となります。幸せであることが甚だしいというのを熟語で表した言い回しです。
例えば、多忙な取引先にご足労いただく場合などには、「○○様にはご多忙中、大変恐れ入りますが、お運びいただけましたら幸甚に存じます」と、丁重にお願いをします。
また、あいさつ状やお礼状などでは「○○していただき、幸甚の至りです」と書きます。さらに思いがけない幸せの時には「望外の喜びです」というフレーズも用いることもあります。
会話には向かない表現もあるので注意!
これらは文章で用いられる格式ばった表現で、会話には向きません。多忙な方や役職の高い方、著名な方にお願い事をする場合に使います。
幸甚という言葉そのものが格式高く、かなり気を使う場面でこそ生きてくる表現です。
日ごろのビジネスシーンでお願いや感謝を述べるなら、クッション言葉に「幸いです」を加える形で十分です。
無理をして使い慣れない言葉を多用するよりも、文章全体を丁寧な表現に統一するよう心を配りましょう。
言葉遣いは相手や状況に合わせて!
同じお願い事をするにしても、相手や状況によって言い方を変えるだけで知性と品性を表すことができます。特に「幸いです」は女性らしい柔らかさを含みながらも角が立たない上手な言い回しです。
時にはクッション言葉をプラスしたり、ここぞという場面に格式の高い表現を用いたりして、言葉のバリエーションを増やすと、よりきちんとした印象を与えることができ、仕事を円滑に進められます。
(古谷治子)
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※この記事は2020年08月26日に公開されたものです