「お見合い」に続いて「職場結婚」が台頭
かつて結婚の王道だったお見合い結婚を押しのけて、1980年代以降婚姻数でトップを維持し続けているのは、職場の出会いによる結婚です。
アラサー婚活女子の両親世代にあたる、今の50代半ば以上の既婚者は体験していることと思いますが、当時職場というものは、ある種お見合いに代わる「社会的な結婚お膳立てシステム」のひとつでした。
結婚したら専業主婦になるのが一般的だった
企業側は、自社の男性社員に自社の女性社員とのマッチングを促進し、女性社員に対しては「寿退社」という花道を用意して送り出すという慣習的なものがありました。つまり、結婚して専業主婦になるということです。
もちろん、これは、決して会社の強制ではなく、社会の風潮として、当時のサラリーマン世帯の妻は専業主婦となることが当たり前だとされていたからです。
企業側にとっても好都合な「職場結婚→寿退社」
企業側にも思惑がありました。若いうちに社員同士の結婚を促進させることは、夫には仕事へのモチベーションを喚起させる意味合いもあったでしょうし、妻に対しては、退職してもなお会社の一員として夫をプライベートでサポートしてほしいという目論見もあったでしょう。
「寿退社」という形で、結婚した女性社員の人員が順次入れ替わることは、企業にとっても、結婚したい女性にとっても好都合で、当時、結婚する将来の旦那を見つけるためだけに就職する女性を「腰掛けOL」と呼んでいたくらいです。いい悪いは別として、それが当時の“普通”でもありました。
当時の環境や福利厚生も「職場結婚」を後押し
支援体制も整っていました。まだ給料の低かった若年社員夫婦向けには、安い家賃で入れる借り上げ社宅制度もあり、退職した妻も、社宅という共同体の中では元社員の妻たちと付き合っていくわけです。
企業の福利厚生として、当時は、社員総出の運動会や泊りがけの社員慰安旅行は当たり前に用意されていて、そうしたイベントによってマッチングが促進されたことは言うまでもありません。
当時の職場というのは、公私含めて面倒を見る「擬似家族的コミュニティ」だったともいえます。
職場結婚は、厳密には、お見合い結婚とは違うと分類されますが、社会的なお膳立てがあったという意味では同じです。恋愛に受け身な男たちをけしかけたのは、「早く結婚しろ」という上司の圧力であり、勝手に誰かと結び付けたがるお節介おばさんの存在も大きかったでしょう。
付き合いはじめたら、周囲が「もうすぐ結婚だよね」という逃げられない空気を作り出していたこともあります。