【新連載】蒸し暑い地下鉄の駅。突然の出会いは思いもよらないもので……
日曜日、わたしは例の井上さんにメールを出した。
「お借りしたシャツのクリーニングが、
水曜日に仕上がるそうなので、
木曜日以降にお返しできたらと思います。
お忙しいようでしたら、郵送いたします」
こんな感じの内容を送った。
弁償については何も触れなかった。
……もう一度会ってみたいけれど、
お金を差し出されたりするかと思うと、
とたんにゲンナリして、井上さんや、
この件自体に関わりたくなくなってしまう。
でもこのシャツをずっと持っているのも、
面倒だし……かといって、
捨ててしまうのにも抵抗がある。
ディスプレイの前であれこれ考えて、
ふうっ、とため息をついていると、
……早い! もうメールの返信が来た。
「それでは、もし他にご用事がなければ、
来週土曜の14:00にこちらで」
メールには、老舗の和菓子屋さんが経営する、
カフェの名前が書かれてあった。