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【新連載】蒸し暑い地下鉄の駅。突然の出会いは思いもよらないもので……

席に案内されると、窓の外には、
ちょうど今が最も美しく、
最も色が鮮やかな夕暮れが燃えていた。

「すごく、きれいですね」
「ええ」
シャンパンで乾杯した後は、
その夕暮れを見ながら、お食事をした。

今まで一度も見たことのない、
もちろん、食べたこともない、
そんなお料理が、
ゆったりとしたペースで運ばれてくる。
「おいしいですね。
わたし、こんなお店はじめてです。
たぶん、自分ひとりでは来られません」

「ぼくもこういうお店は、今夜が最後です」
「え、なぜ……」
「仲間と会社を作って、そこそこ大きくなって、
専務と呼ばれるようになったんですけど。
いっしょに会社を作ったぼくと社長とあと一人が、
先週、取締役を解任されたんです。
今後は後から入った者と、
銀行が派遣した役員が会社を運営するでしょう。
要するに乗っ取りです」

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