お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

【新連載】蒸し暑い地下鉄の駅。突然の出会いは思いもよらないもので……

「ね、ぼくのゲームに付き合うと思って、
案内してください」
そう言われてわたしは、その場所から近くの、
よく服を買いに行く店に、井上さんと入った。
男性といっしょだと、やはり少し緊張する。

わたしは店で、破けたシャツと似たものを探し
「こちらでお願いします」と井上さんに差し出した。
「じゃあ、あと2枚選んでください」
井上さんは微笑んで言った。
わたしは「でも……」と断る理由を探しながら、
口ごもった。

「流美子さん。あの時のこと覚えています?
女性の服を破くなんて、
警察を呼ばれても文句言えなかったって、
ぼくは思っているんです」

あ、客観的に見ると、そう言えなくもない。
そう思った次の瞬間とても切ない気持ちになった。
いつからだろう。
わたしは女子扱いされるのを、
自分から避けるようになっていたし、
そうしているうち周囲もしなくなっていった。
わたしは申し訳ないと思いつつ、
あと2枚トップスを買ってもらった。

次のページを読む

SHARE