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【新連載】偶然再会した彼は、私の過去の汚点を知る人物で……

でも今はどこに逃げることもできない。

原くんは笑顔でわたしの隣に席を移した。
「いやあ、懐かしいな。
東城さん、今もこの辺りに住んでるの?」
「ううん。中学卒業してすぐ引っ越したから。
今日は仕事で打ち合わせの帰りなの。
原くんは?」
「ぼくはあの頃と同じく、実家暮らし。
学習教材専門の出版社に勤めているから、
たまにだけれど中学に寄ったりもするんだ」

せめて原くんが、中学とまるで関係ない仕事に、
ついていてくれれば話題も変えやすいのに。
わたしは勝手に強いプレッシャーを感じて、
自分から、あの話を切り出した。

「中学か。ほら、わたし中学3年の時は、
3学期長めに休んじゃったじゃない。
だからあの頃を思い出すと、ちょっと辛くて」

せめて原くんが、そのことを覚えていなければ。
原くんだけじゃなく、みんながそれを、
忘れていてくれれば……。

「ああ、そういえば東城さん、学校休んでたね」
ダメだ。やはりみんな覚えているんだ。

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