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【新連載】20代最後の夜を、ひとりぼっちで迎えるなんて

誕生日の翌日から一週間、
わたしたちの暮らしはいつもと変わらない。
駿は不安そうに見える時もあるけど、
特別に何も言わない。
だけどわたしは行動を始めていた。
会社の帰りに不動産屋を回ったり、
カフェに入ってタブレットを開いて、
Webで賃貸物件を探したりもした。
一人暮らしの準備だ

それは30歳になってもちっとも結婚を考えない、
駿への不満が、引き金にはなっている。
だけどもっと切実な現実として、
会社に居続けるのがむずかしくなりそうなのだ。
実は今週の月曜に会社の給湯室で、
同期の木下さんから、恐ろしい噂を聞いた。

「一般職、廃止になりそうなんだって」
秘書課で専務秘書をしている木下さんの情報は、
いつもかなりの確率で正解だ。
「ウチの会社、業界では人事が旧式らしくて、
一般職は廃止して派遣に切り替えるとか、
会議資料には書いてあった」
「うわっ、どうしよう。木下さんは秘書だから、
大丈夫かもしれないけど、わたしはダメだよね」
「わたしだって一般職だもん、同じ運命よ」

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