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【新連載】20代最後の夜を、ひとりぼっちで迎えるなんて

それからさらに10日がたち、
帰宅後にふとスマートフォンを見ると、
駿からメールが来ていた。
「結婚してください」のタイトルで、
自分の欄を埋めた婚姻届の画像が添付されている。

……言い表せないくらいうれしかったけれど、
わたしは「ムリしなくていいよ」と返信した。
「まだいいじゃん」と視線をそらしてうつむいた、
駿の表情が頭をかすめていったからだ。

「ムリじゃないから。
どうしても絢子が必要だから結婚したい」
ダメだ。うれしくって頭がクラクラする。
今までの人生で、こんな幸せな瞬間なかった。
「うん。こちらこそ、よろしくお願いします」

わたしは翌日には元の住処に再び戻り、
荷物は駿にも手伝ってもらいレンタカーで運んだ。
そして双方の親に挨拶をした後に婚姻届を出した。
でもそれで、すべてが解決したわけじゃない。
わたしの将来のキャリアは、未だに白紙だ。
とりあえず、簿記とExcelの資格をとり、
貯金もしながら、2年後に出産を企んでいる。
それでも、先のことは予想もつかない。
でも駿とふたりなら、きっとがんばれると思う。

(おわり)

※この記事は2013年03月07日に公開されたものです

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