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【新連載】20代最後の夜を、ひとりぼっちで迎えるなんて

「ただいまぁっ!」
もう夜中だというのに玄関から、
帰宅の大声の挨拶が聞こえてくる。
駿が帰ったのは、結局1時近くになってからだ。

「……あれ、どうしたの?」
たぶん迎えに出たわたしが笑顔でないことで、
駿は何かに気づいたようだ。
そしてダイニングに入ってきて、
テーブルの上のオードブルとシャンパンを見て、
少し青くなっていた。
「うそっ、今日だったっけ、誕生日!
ごめんごめん、明日だと思ってた」

……なんだ、勘違いしてたのか。
わたしはちょっとホッとして、少し笑顔になる。
「そう、今日だよ。駿はもう寝る?」
「いや、せっかくだから飲もうよ、シャンパン」

ふたりは席につき、わたしは耳を塞ぎながら、
駿がシャンパンをあけてくれるのを待った。
「お誕生日おめでとう。ごめんね、絢子。
そのかわりプレゼントはすごいの用意してるから。
明日の晩、どこかに食事に行こう」

ポンとよい音で栓が開き乾杯すると、
駿は笑顔でシャンパンを飲み干してそう言った。

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