【新連載】田舎に戻った私が出会ったのは、やさしくて頼れる人……
岩城さんが図書館に訪れた翌週、
上柳美代子の朗読イベント会議のため、
わたしは市役所に出向くことになった。
事前に布田さんから教わった通り、
会議ではなるべく聞き役に回り、
自分の意見は質問という形をとるように、
できるかぎり気を配った。
やがて滞りなく会議が終わると、
岩城さんがきて、イベント担当の職員の方々に、
わたしのことを紹介してくれた。
それから庁舎の最上階にある食堂で、
岩城さんと少しお茶を飲むことになった。
16時ぐらいの庁舎の食堂は人が少なく、
早い夕暮れの日差しが山吹色に差し込んでいた。
窓の外から見下ろす故郷のビルや家々の屋根は、
東京にくらべれば、のどかに低く愛らしい。
わたしたちはベンダーマシンから、
ちっともおいしくないカフェオレを煎れ、
しばらく無言のまま並んで座り、窓の外を眺めた。
やがて岩城さんが、大きく息を吸い込んで、
こう言った。
「イベントが終わってから、と思ったんですが。
藤川さん、ぼくとお付き合いしてくれませんか」