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アトピーの原因と悪化させない方法

小澤佑美

「アトピー性皮膚炎」と聞いて、乳幼児がかかる病気じゃないの? と思う人も多いでしょう。しかし近年では、大人の患者も増えているのを知っていますか? 今回はアトピーの原因と悪化させないための方法について皮膚科医による解説を元に紹介します。

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<目次>

アトピー(アトピー性皮膚炎)とは?

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そもそも、「アトピー」にかかるとどのような症状を発症するのでしょうか。また、子どもと大人とでは、症状に違いがあるのでしょうか? 皮膚科医の小澤佑美先生に教えてもらいました。

(1)アトピー性皮膚炎の主な症状

痒みをともない慢性的に繰り返す湿疹がアトピー性皮膚炎の定義です。一般に季節によって症状に波があり、乾燥しやすい冬や春先に症状が出やすいほか、夏場に悪化するタイプの方も多いです。良くなったり悪くなったりを繰り返すので、急にいつもと違う場所が赤くブツブツし、粉を吹いたような状態になることもあるなど、さまざまな症状が見られます。

(2)子どもと大人、症状のちがい

アトピーの症状は年齢によってそれぞれ特徴があります。乳幼児では頭、顔からはじまり、体や腕・足に湿疹が現れます。小児期では首や肘・膝に症状が見られます。また、耳たぶに亀裂が入る「耳切れ」も多く見られます。

思春期から大人になると顔・首・胸・背中といった上半身がひどくなりやすい傾向があります。顔が全体的、もしくは局所的に赤くなったり、子どものころは腕や足にブツブツがある程度だったのが、強い痒みをともなうしこりとして見られることも。範囲も広がり肌全体が赤黒く、ガサガサした質感になります。長年にわたり皮膚が悪い状態が続くと首や目の周りにシワが寄ったり、眉毛が薄くなることも。目の周りをこすりすぎて白内障を引き起こすこともあります。

アトピーになる原因

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続いて大人がアトピーになる原因について小澤先生に聞いてみました。近年増えている理由とはなんなのでしょうか?

発症する原因 ~大人の場合~

アトピー性皮膚炎の原因では(1)敏感肌、(2)アレルギー体質、(3)環境という大きく分けて3つの要素が関係しています。最近では大人のアトピーの増加とその治りにくさが問題となっています。まだ十分に解明されていない点もありますが、現在ではこれらの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

(1)外的要因

以前からアトピーとアレルギーの関係にはいろいろな議論がありますが、思春期以降になるとアレルギー反応よりもむしろさまざまな環境からの刺激による湿疹反応がメインになってきます。近年のアトピー増加には都市型生活の増加や、気密性が高く、かつ高温の家屋・排気ガス・直接肌に触れる物質の多様化が大きく関係していると考えられています。

最近では機能性インナーの流行でさまざまな素材が使われていますが、これを長時間着用することで皮疹が悪化したり、洗濯の際の柔軟剤が原因で悪化するケースなどが増えています。他にもダニ、ハウスダスト、皮膚常在菌、カビ、湿度などいろいろな外的刺激が要因として挙げられます。

(2)内的要因

一方でアレルギーが関与しているアトピーも存在します。アトピーの人の皮膚はそうでない人に比べると乾燥している・皮脂が少ない・キメが粗い・殺菌物質(抗菌ペプチド)の産生が低下しているなどバリア機能が低下し、痒みを感じやすい状態になっています。これには皮膚の遺伝子異常が関係していることが研究によりわかっています(遺伝でない場合もあります)。このような皮膚のバリア機能の低下とアレルギーが関与し合っていることをアトピー素因があるといいます。ただし、成人のアトピーでは食物に関するアレルギーは小児に比べると頻度は低いです。ダニやハウスダスト、花粉などの植物が割合としては高く、最近では皮膚の常在菌に対するアレルギーが年齢が上がるほど増加するといった報告もあります。

そのほか、内的要因というと精神的ストレスを思い浮かべる方も多いと思います。仕事・勉強の悩みや家族・友人などでの人間関係、多忙による疲労・睡眠不足などの心理社会的ストレスなど、ライフスタイルの多様化にともないストレスも人それぞれです。日中イライラした時や、逆に家でほっとした時についつい引っ掻いて、掻くことがストレス解消になってしまうケースも少なくありません。もちろんストレス自体で痒みを強く感じることもありますが、かゆくなくても精神的安定を求めて掻いてしまうのです。よく診察していると「掻かないようにしているのですが……」と言いながら顔や首、腕などに絶えず手をやってしまっている方を目にします。たとえ掻き壊さなくてもクセでずっと触っていると、やはり皮膚には刺激となります。

アトピーを悪化させないためには

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とりまく環境の変化やストレスにより大人になってアトピーを発症する人が増えている……というお話がありましたが、アトピーになってしまったらどうすればいいのでしょうか? 完治は難しいとしても、これ以上症状がひどくならないように気をつけたいものですよね。そこで最後に、アトピーを悪化させない方法について小澤先生のアドバイスを紹介します。

(1)スキンケアを怠らない

スキンケアを怠ると症状はすぐにぶり返してしまいます。清潔に保つために入浴、シャワーはもちろんのこと、最近では敏感肌用のスキンケア製品・メイク用品がたくさん出ていますので自分に合ったものを選び、うまく使いこなすことが重要です。刺激が少ないことに加え、こすらずに使用できるか、洗い落としやすいかなどもチェックしてみてください。

上記に加え、保湿剤の中から刺激感のないものを選んで1日2回塗るようにしましょう。1回では十分でないことがほとんどです。保湿剤は市販のものでも構いませんし、皮膚科で処方するものもあります。病院で治療を受けるとともに、自分でスキンケアをきちんと行うことがアトピー対策の大原則です。

(2)生活習慣を見直す

バランスのとれた食事・十分な睡眠はいうまでもありません。そのほかに集中できる趣味やリラックス法を見つけるようにできると、痒みを忘れたり、掻くクセを止められるのでいいと思います。また、かかりつけの病院で医師や医療スタッフといろいろ話せる間柄になれるといいですね。診療の際に話すことで、自分がいまどういう生活を送っていて、どんな点はよくて、どんな点が悪化させる原因になっているのか気づくだけでも、症状が好転するきっかけになります。

(3)正しい知識を持つ

先ほども述べたようにさまざまな原因が絡んでいるのがアトピーなので、どれかひとつの要因だけを徹底的に対策しても十分とはいえません。アトピーとはどういう病気でどういう経過をとるのかなどを理解し、根気よく付き合っていくことが大切です。

まとめ

アトピーの症状や原因、悪化させないための対処法について紹介しました。いかがでしたか? 最後に小澤先生からもあったように、アトピーの原因は複雑でコレ! と断定するのが難しい病気です。だからこそアトピーについて正しい知識を持ち、スキンケアや食事など、日々の生活には気を使いましょう。症状がなかなか改善しないときは、担当医に指示を仰ぎましょう。

(文:小澤佑美、構成:マイナビウーマン編集部)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.05.24)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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