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「逃げたい」と感じる心理と対処法8つ

笹氣健治(心理カウンセラー)

「逃げたい」という心理を生み出す3つの危機

「逃げる」という言葉に対してネガティブなイメージを持つ人は多いかもしれませんが、実は、全くそんなことはありません。

逃げるのは自分を守るための1つの手段であり、生き残るために必要なことも多いからです。

自分の身に何らかの危機が迫っていると感じて、その状況から避難しようとしているわけですから、「逃げたい」と思うのはむしろ身を守ろうとする積極的な気持ちだといっても良いでしょう。

では、「逃げたい」と感じた時、あなたの身にはどのような危機が迫っているのでしょうか?

危機には、「身体的な危機」と「精神的な危機」があります。「精神的な危機」は、さらに「他人との関係性の危機(=人間関係の危機)」と「自分の尊厳に関する危機(=自己尊厳の危機)」に分けられます。

つまり、「逃げたい」という気持ちを呼び起こす危機は「身体的な危機」「人間関係の危機」「自己尊厳の危機」の3つに分類できます。

先ほど挙げた「逃げたいと思うきっかけ」の5つのケースにもこれらが当てはまります。それでは、それぞれどのような点で危機といえるのか、1つずつ説明していきます。

(1)身体的な危機

過剰な残業や休日出勤による長時間労働は、慢性的なストレス状態を生みます。そして、ストレス状態が続くと心身の健康に悪影響をもたらします。

そこで脳は、強い長期のストレスを感じると気分を落ち込ませて行動を抑制し、私たちを危険な状況から遠ざけようとします。

つまり、あまりにも仕事が忙しい時に「逃げたい」と思うのは、長時間労働によって心身に疲労が蓄積する危機から自分の身を守ろうとする本能的な反応だといえるのです。

(2)人間関係の危機

私たちが生きていくには、周囲の人との良好なつながりが必要不可欠です。

周囲から孤立している状態や、身近に脅威となる人がいる状態は、自分にとって危険な環境に身を置いていることになります。

意地悪をされたり、一緒にいて気が休まらない人がいたりする職場は、いわば危険がいっぱいの場所。

そこから「逃げたい」と思うのは、身の安全を確保するためにも、自然なことだといえます。

致命的なミスをした時に逃げ出したくなるのも、自分の立場が悪くなって居場所がなくなることを恐れるからであり、身の危険を感じているということになります。

人とのつながりや自分の居場所がなくなる人間関係の危機は、私たち人間にとっては避けたいものなのです。

(3)自己尊厳の危機

人は自分の尊厳をとても大切にします。

これは極端ですが、「自分の尊厳を守るためには死んでも構わない」と考える人もいるくらいです。

人は誰もが尊重されるべき存在です。そのため、本来は他人を見下したり軽んじたりすることは許されないはずです。

しかし、人は自分を一番大事にする傾向があるゆえに、知らず知らずのうちに他人の尊厳を傷つけてしまうことがあります。

相手の人格を無視して批判する。意見に耳を貸さず有無を言わせず否定する。自分の都合ばかり押しつけて相手の立場を理解しようとしない。

こういったことをされると尊厳が傷つけられ、まるで自分には存在価値がないかのように感じて精神的にダメージを受けてしまうことがあります。

これが、自己尊厳が脅かされる危機的状況であり、そんな時、自分自身の存在を守るために「逃げたい」と思ってしまうのです。

次ページ:逃げたい気持ちへの対処法8つ

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