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名誉男性

#女子を困らせる人

アルテイシア

女性を困らせる人はこの世にたくさんいます。セクハラ、パワハラ、マウンティング、毒親……。「男は敷居を跨げば七人の敵あり」なんてことわざもありますが、女性の方が敵多くない? そこでこの連載ではコラムニストのアルテイシアさんに、困らせてくる人々に立ち向かう知恵を授けてもらういます!

連載#女子を困らせる人、今回のテーマは「名誉男性」。

名誉男性とは、ざっくり言うと「男尊女卑的な価値観に染まってしまった女性」である。

たとえば、後輩女子からセクハラや性差別について相談された時に「私だったら笑顔でかわすけど」「そんな大げさに騒ぐこと?」などと返す女性がいる。

その手の女性は「相手も悪気はなかったのよ」と加害男性を擁護したりもする。

すると相談した側は「同性なのに味方になってくれない」と絶望して「助けを求めても無駄だ」とますます孤立化してしまう。

なぜ彼女らは、被害女性の口をふさぐような発言をするのか? なぜ弱い立場の女性に寄り添わず、強者男性に味方するのか?

それには「そっちの方が得だから」「男社会で利益を得られるから」という理由がある。

例えば、男性上司が男尊女卑的な発言をした時に「ですよねー!」と同意すれば、「話が分かる奴だな」と認められて「名誉男性」として仲間に入れてもらえる。

そこで「それアウトですよ」と上司に注意すれば、排除や報復をされるリスクもある。

男尊女卑に迎合するか、抵抗するか?

その選択を迫られた時に「そりゃ迎合して、都合の良い女になった方が得でしょ」と開き直る女性には「自分さえ良けりゃいいのか?」と聞きたいし、弱い者を踏みつけて成功するような生き方を、私は選びたくない。

だったら一生窓際でネットサーフィンしてる方がマシである。

名誉男性が陥る「“女王蜂”症候群」とは?

とはいえ、男社会で生き残るために名誉男性にならざるを得なかった女性は、被害者でもあると思う。

「クインビー(女王蜂)症候群」という言葉がある。男社会で成功した名誉男性的な女性が、他の女性に厳しくあたることを表す言葉だ。

女王蜂は「私は男社会で苦労してきたんだから、あなた達も苦労しなさいよ」という思いから、後輩がセクハラや性差別を訴えても「私が若い時はもっと大変だった」「最近の若い子は我慢が足りない」と批判する。

そうやって被害者が声を上げられない空気を作り上げ、差別を温存する側、差別に加担する側になってしまう。

彼女らは男社会で地位を獲得したから、そのシステムを変えたくないのだ。それを否定することは、自分の成功も否定することになるから。

そんな女王蜂は罪深いが、本人も傷を抱えているんじゃないか。自分を傷つけた男たちに対する怒りを、後輩女子にぶつけているんじゃないか。部活で先輩にしごかれた人間が、自分も後輩をしごくように。

一方「後輩に同じ苦労をさせたくない」という思いから、セクハラや性差別をなくそう、悪しきシステムを変えようとする女性もいる。

私の周りには「名誉男性になってたまるかよ!」と戦う仲間がいっぱいいる。女子が困った時は、そんな味方になってくれる先輩を見つけてほしい。

名誉男性の言動に潜む心理

名誉男性の中には「私はセクハラや性差別なんて受けたことないけど?」とおっしゃる方もいて「だから何なんだ?」と顎をつかみたくなる。

自分がセクハラや性差別を受けたことがないからといって、セクハラや性差別に苦しむ女性がいる事実は変わらない。

その発言には「(私のような賢い女と違って)セクハラや性差別を受ける女に問題がある」と被害者を責める心理が潜んでいる。

そんな彼女らが大学で学んで会社で働いて選挙に行けるのも、過去に女性差別と戦ってくれた女性達がいたからだ。

「イカれた女たち」と誹謗中傷されて妨害されても、女性の権利を求めて戦った女性運動家の歴史を、あなたまさかご存知ないの? それはたいそうお利口だこと、オッホホ!

とポリニャック夫人みたいに言いたいが、私は「文句があるならベルサイユへいらっしゃい」とイヤミを言うより「屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ……」と決闘を挑むタイプである。

だが上司と屋上で殴り合うのは難しい。「もう拳だけじゃ解決できねぇ」と山王連合会のコブラさん(※)も言っている。

※コブラさん/『HIGH&LOW』の中心組織、山王連合会の会長

立場が上の相手に名誉男性的な発言をされた場合は、どう対処すればいいか?

名誉男性との決着をコブシ以外でつける方法

まずは、「私だったら笑顔でかわすけど」と言われても「笑顔でかわせない私がダメなの?」と自分を責めないでほしい。

「この人は名誉男性なんだな、長い物に巻かれるタイプなんだ」と理解した上で「分かりました、じゃあ人事部長に相談します」など、相手より立場が上の人間の名前を出そう。

長い物に巻かれるタイプは「やっべ、私が後輩の被害を無視したことがバレる!」と焦って、態度を変える可能性が高い。

または「でも笑顔でかわしていたら被害者は増える一方だし、セクハラや性差別は永遠になくなりませんよね? ○○さんはそれでいい、という意見なんですか?」と質問してみよう。

相手が「そういうわけじゃないけど……」と返したら「じゃあ○○さんもセクハラや性差別をなくすべき、という意見なんですね」と言質をとろう。そのうえで「だったら協力してもらえませんか?」と聞いてみよう。

相手が「分かった」と答えたとしても、積極的な協力は望めないかもしれない。だが「少なくとも邪魔はするな」とけん制する効果はある。

上記のやりとりで言質をとったうえで、もっと協力してくれそうな人を探してみよう。

コンプライアンス室やセクハラ相談窓口、他部署の上司や先輩など、一緒に戦ってくれる味方を作ってほしい。

“推しの話しかしないキャラ”で通すのも、自衛策の一つ

プライベートで名誉男性に出会った場合は、距離を置くことができる。でも職場だとイヤでも関わらなきゃいけないからつらい。そんな声が女性陣から寄せられた。

2年前、男性アイドルグループの元メンバーが、女子校生に強制わいせつを行った事件があった。

その事件について、職場で女性の先輩に「家に行った女の子が悪いよね?」「たかがキスぐらいで大げさじゃない?」と同意を求められて、すごく困った……と20代女子が話していた。

できることなら、以下のように真っ向から反論したい。

「いえ加害者が100%悪いです。その発言は被害者を傷つける二次加害ですよ」

「二次加害が怖くて泣き寝入りするしかなく、支援につながれない被害者も多いんです」 

「男性の部下が上司の家に行って殴られた場合も『家に行った方が悪い』と責めますか?」

「もし女性が『いいですね、飲みましょう』と家に行ったとしても、同意したのは『家で飲むこと』だけです。『家に行った=性的行為をする同意があった』という認識は間違いです」

けれども、上下関係があると反論することすら難しい。

その彼女は「アイドルと言えば、うちの推しが最高で……」と無理やり話題を変えたそうだ。“推しの話しかしないキャラ”で通すのも、自衛策の一つである。

だがそれだと相手は変わらないまま、同じような発言を繰り返すだろう。

「公の場で性暴力の話をするの、やめませんか?」「トラウマを刺激されて傷つく人もいると思います」と返せば、相手が気づくキッカケになるかもしれない。

しかしそれも勇気が必要だし、その場で面と向かって言い返せない人は多いだろう。

私が彼女だったら、後からメールで「私は性暴力にトラウマがあって、ああいう話を聞くとつらいんです」と伝えると思う。それで相手が反省して、今後の言動に注意することを願って。

10年ほど前、わりと仲の良かった女子から「DVされる女性にも問題があると思いません?」と言われて、とっさに何も返せなかった。

そのまま彼女とは疎遠になってしまったが、何も言えなかった自分が悔しくて、いまだにモヤモヤが残っている。

今の私だったら「そんなふうに被害者を責める人がいるから、被害者は声を上げられなくなるんだよ」「目の前にいる私もDV被害者かもしれない。だから不用意にそういう発言はしない方がいいよ」と真摯に説明すると思う。

あれから時代が進んで、フェミニズムに目覚める女性が増えた。彼女も「昔の私の考えは間違っていたな」と気付いたかもしれない。

10年ぶりに再会したら、今度こそ本当の仲良しになれるかもな、と思っている。

もっと生きやすい社会にするための心構え

昨今、あちこちで炎上の狼煙(のろし)が上がっているが、燃えるべき物が燃えるようになったのは、時代が進んだ証拠である。

先日、性的同意をテーマにした番組の中で、26歳の女性アナウンサーが「女性がリテラシーを高く持てばいい話で、家に行かなければいいだけの話。その人とそういう関係になりたくないのであれば、2人で飲みに行かなければいい」と発言して、ネット上で批判の声が広がった。

私はその言葉の裏に「賢い女は自衛する」「(自衛できないような)バカな女は被害に遭っても仕方ない」というニュアンスを感じて、性被害者をおとしめる発言に怒りを覚えた。

同時に「おじさんウケする言動が染みついてしまったのかな」と痛々しさも感じた。

その女性アナウンサーは、サバサバ系キャラとして人気だそうだ。それ系の女性は「こいつは中身おっさんだから」と褒め言葉のように言われがちだが、それは「名誉男性」という意味である。

男社会で生き残るには「姫」になってチヤホヤされるか、「おっさん」になって同化するかの二択を迫られる。

そうやって出世した女性たちは、後輩からセクハラ相談されても「そんな大げさに騒ぐこと?」「おじさんなんて手のひらで転がせばいいのよ」と返して、困っている女子をさらに追いつめる。

「人間よ、もう止せ、こんな事は」と、我は高村光太郎顔で言いたい。男社会で女が分断されるのは、もう終わりにしようぢゃないか。

「セクハラされても笑顔でかわすのが賢い女、大げさに騒ぐ女はバカだ」……そんな価値観によって得をするのは、セクハラをしたいおじさんたちだ。

「女の敵は女」と女を分断させて、利益を得るのはおじさんたちなのだ。彼らは女性が連帯して、性差別や性暴力に声をあげるのが怖いのだ。

自分の立場を守るために、男尊女卑なシステムを変えたくない。だから女同士を戦わせて、真の敵から目を逸らさせたい。

そんなおじさんたちの手のひらで踊らされるなんて、まっぴらじゃないか?

名誉男性は「私はぼろぼろな駝鳥じゃない(※)」「私は傷ついてなんかいないし、そんな弱い女と一緒にしないで」と言いたいのかもしれない。

※詩人、高村光太郎が文明社会への怒りをストレートにぶつけた名作より抜粋

でも傷ついたら傷ついたと言える社会、助けを求められる社会が、まっとうな社会だろう。理不尽に傷つけられても我慢しなきゃいけない社会が、間違っているだろう。

そんな社会を変えるために、過去の傷つきをシェアしていこう。そして「あらゆる差別やハラスメント、人の尊厳を傷つける行為を許さない」と女たちが連帯すれば、もっと生きやすい社会になるだろう。

私はあなたたちと仲良くなれる日を夢見ている。

(文:アルテイシア、イラスト:若林夏)

アルテイシア

作家。神戸生まれ。著書『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった 』『アルテイシアの夜の女子会』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『59番目のプロポーズ』ほか、多数。

●Twitter:@artesia59

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オタク格闘家と友情結婚した後も、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも変人だけどタフで優しい夫のおかげで、毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による、不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ!

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