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「隠れ栄養不足」な妊婦が増加中!? 知らないと怖い「隠れ栄養不足」とは?

挙式も引っ越しも無事に終わり、やっと落ち着いてきた新婚生活。「いよいよ次は子作りだ~!」と思っているそこのあなた! ちょっと待ってください。あなたの「栄養」は足りていますか? 実は今、若い女性の間で「隠れ栄養不足」が増えているそうなのです。そして「隠れ栄養不足の状態で妊娠してしまうと、赤ちゃんにとってかなり危険なんだとか。

一体どういうことなのか、詳しいお話を栄養士の佐藤秀美さんに伺いました。

「隠れ栄養不足」とは?

―そもそも「隠れ栄養不足」とは、なんなのでしょうか?

佐藤さん
本人が栄養素の不足を自覚していない、あるいは軽視している状況を「隠れ栄養不足」といいます。しかし飽食の今の時代に「栄養不足」なんて、にわかには信じられないですよね。では、具体的に若い女性たちはなんの栄養素が足りていないのでしょうか。

以下の図をご覧下さい。図は、「日本人の食事摂取基準2015」(以下、食事摂取基準)において、1日に摂ることが勧められている量に対し、実際に20代、30代の女性が摂取している状況を示しています。(H26年国民健康・栄養調査結果のうち、中央値を使用)

図1 栄養素摂取の割合(20代女性)

図1 栄養素摂取の割合(20代女性)

図2 栄養素摂取の割合(30代女性)

図2 栄養素摂取の割合(30代女性)

健康維持のために摂取すべき主な栄養素は3大栄養素(糖質、脂質、たんぱく質)のほかに、ビタミン12種類、ミネラル5種類、食物繊維(“栄養成分”ですが、ここでは“栄養素”として扱う)の合計18種類あります。このうち食事摂取基準で推奨される量を上回っているのは、20代女性では、ビタミンK、ナイアシン、ビタミンB12、パントテン酸の4種類のみ。30代女性ではさらに減ってビタミンK、ビタミンB12、パントテン酸の3種類だけです。全部で18種類ある栄養素のうち、不足している栄養素は、20代で14種類、30代で15種類もあるのです。

ここで、「摂取基準は満たしてないけども、全ての栄養素は一応、摂っているから大丈夫ではないか」と楽観視してはいけません。以下の表をご覧下さい。下表は1日に推定される必要量(推定平均必要量:欠乏を回避するための量)に対し、摂れていない栄養素を示したものになります。

※推定平均必要量の出典は、「日本人の食事摂取基準2015」策定検討会報告書(厚生労働省)より

※推定平均必要量の出典は、「日本人の食事摂取基準2015」策定検討会報告書(厚生労働省)より

表を見ていただくとお分かりになるように、20代、30代が摂取している栄養素の中には「欠乏を回避するために摂取すべき量」を満たしていない栄養素もあるのです。つまり不足している栄養素のうち、「欠乏」している栄養素が9つもあるという深刻な現状なのです。しかしこうした現状に当の本人が気付いていない、それが「隠れ栄養不足」の怖いところなのです。

隠れ栄養不足が続くとどうなる?

「隠れ栄養不足」が続くとどのような健康不良が生じるのでしょうか、上記表中にある、若い女性が「1日に必要な量を摂れていない栄養素8つ」を例に、佐藤先生に教えてもらいました。

●カルシウム不足

カルシウムが不足すると、高血圧、動脈硬化、認知障害、免疫異常、糖尿病、肥満、腫瘍、軟骨変性と変形性関節症などを発症する恐れがあります。

●マグネシウム不足

短期での欠乏は低マグネシウム血症(症状:吐き気、嘔吐、眠気、脱力感、筋肉のけいれん、ふるえ、食欲不振)を発症する恐れ。長期にわたるマグネシウムの不足は、骨粗しょう症、心疾患、糖尿病のような生活習慣病のリスクを上昇させます。

●鉄不足

女性には毎月の生理があり、鉄が不足しがちですが、鉄不足は貧血や運動機能、認知機能などの低下、無力感、食欲不振などを発症する恐れがあります。

●ビタミンA不足

夜盲症、成長阻害、骨および神経系の発達抑制、上皮細胞の分化・増殖の障害、皮膚の乾燥・肥厚・角質化、免疫能の低下、粘膜上皮の乾燥といった症状が現れる恐れがあります。また感染症にかかりやすくなったりもします。

●ビタミンD不足

ビタミンDはカルシウムの吸収に関わる栄養素で、これが欠乏すると、カルシウム不足になり、小児ではくる病、成人では骨粗しょう症を発症する恐れがあります。

●ビタミンB6不足

ビタミンB6が欠乏すると、ペラグラ様症候群(皮膚炎、下痢、認知症)、脂漏性皮膚炎、舌炎、口角症、リンパ球減少症、うつ状態、錯乱、脳波異常、けいれん発作を発症する恐れがあります。

●ビタミンC不足

現状の平均摂取量をみると壊血病の予防に必要な量は摂取されていますが、女性の約15%は、壊血病予防に必要な50mgに達していない可能性があります(平成26年国民健康・栄養調査)。壊血病を発症すると、疲労倦怠、いらいら、顔色が悪い、皮下や歯茎からの出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などの症状が現れます。

●食物繊維不足

食物繊維は栄養素ではありませんが、生活習慣病の予防から、1日に摂ることが勧められる量が公表されています。表における「推定平均必要量」は、生活習慣病予防の観点から算出された数値です。
そんな食物繊維は摂取量が1日12g未満だと、心筋梗塞による死亡率が上昇することが分かっています。

あなたは大丈夫? 隠れ栄養不足女子度をチェック!

高血圧や動脈硬化、骨粗しょう症など、栄養不足がつづくと怖い病気を発症する恐れがあることがお分かりいただけたかと思います。そこで今度は、実際にあなたが「隠れ栄養不足」かどうかをチェックしてみましょう。

<「隠れ栄養不足」女子の食生活の特徴>

朝、昼、夕と、食事を3回食べない

菓子類などを食事代わりにして食べる

食事量の制限(無理なダイエット)をしている

「糖質制限(低炭水化物)ダイエット」のように、何かの栄養素を制限する食事をしている

野菜を350g以上食べていない

※3回の食事で、毎回、野菜を食べない
※生野菜サラダだけ食べ、加熱した野菜(おひたしなど)をあまり食べない

外食やコンビニ食が多い

いかがでしたか? 当てはまった数が多い人は要注意! 「隠れ栄養不足」かもしれません!

妊婦さんにも「隠れ栄養不足」が増加中!?

―若い女性の多くが「隠れ栄養不足」の可能性があることがわかりましたが、彼女たちは妊娠・出産の適齢期でもあります。そこで「隠れ栄養不足」のまま、現在妊娠している女性も中にはいるのでしょうか? また、そうした妊婦さんたちの赤ちゃんは大丈夫なのでしょうか?

佐藤さん
お伝えしてきたとおり、現代の20~30代の女性は、妊娠していない状況でも深刻な「隠れ栄養不足」状態です。そんな彼女たちも妊娠すれば普段より多めに栄養を摂ろうと意識すると思いますが、それでも「隠れ栄養不足」であることが予想されます。現状では、胎児(妊婦)および乳児(授乳婦)に必要な栄養を母体がとっていない「隠れ栄養不足」の可能性大です。

ちなみに、現状では葉酸の摂取量は推奨量を上回っていますが、妊婦や授乳婦の推奨量で考えると、葉酸の摂取量は不足します。妊娠中に葉酸が欠乏すると、胎児の神経管閉鎖障害や無脳症を引き起こすといわれています。

過激なダイエットは「低出生体重児」を出産するリスクに

赤ちゃん

平成26年度に調査された「国民健康・栄養調査」では、体格指数(BMI)が18.5未満の「やせ」に該当する女性が、20代で17.4%、30代で15.6%という結果がでています。また、平成24年人口動態統計によると、10人に1人(9.6%)の割合で「低出生体重児」が生まれているそうです。出生体重低下の主な原因は「やせ」状態での妊娠。「やせ」状態の妊娠は、早産や胎児の発育不全などのリスクを高めます。そのため、妊娠前からの体重管理は重要といえます。

食事摂取基準では、20代、30代の女性はBMI18.5~24.9の範囲となるよう、エネルギーコントロールが必要であると、明記されています。現代女性は美意識が高く、ダイエットにシビアですが、自分の健康のためにも、将来元気な赤ちゃんを産むためにも、やせすぎは避けるべきなのです。

●“受精の段階”における母体の栄養不足は赤ちゃんの健康に影響する

母体の栄養不足によって、胎児が生活習慣病の素因を持って生まれるリスクがあることは、学説「成人病(生活習慣病)胎児期発症説:FOAD:Fetal Origins of Adult Disease」によって世界的に認められてきています。

この学説によれば、「受精時、胎芽期、胎児期または乳幼児期に低栄養または過栄養の環境にさらされると生活習慣病の遺伝素因が形成され、その後の生活習慣の負荷により生活習慣病が発症する」とのことですが、注目すべきは「受精時」という箇所。受精の段階における母体の栄養状態は、胎児の将来的な健康に大きく影響するということが記載されています。ということは、妊娠を望む女性は、妊娠する前から必要な栄養量を摂取しておくべきなのです。

ちなみに、低出生体重で生まれた赤ちゃんは、将来以下の病気を患う可能性があります。

★低出生体重との関連が明確な病気
高血圧、冠動脈疾患、2型糖尿病、脳梗塞、脂質代謝異常、血液凝固能の亢進
神経発達異常

★低出生体重との関連が想定されている病気
慢性閉塞性肺疾患、うつ病、統合失調症、行動異常、思春期早発症、乳がん、前立腺がん、睾丸がんほか

健康な赤ちゃんを産むためにも、「やせ」気味の女性は今すぐ食生活を改善しましょう。

「隠れ栄養不足」から脱却! 今日からできる食事改革

「隠れ栄養不足」から脱却するために、働く女性でもすぐに取り入れられる「食生活のアドバイス」を佐藤さんに教えてもらいました。

佐藤さん
働く男女の昼食は、大まかに5つに分類できます。自分がよく食べるメニューを以下より探して、1品プラスすべき食品をチェックしてみてください。

① 糖質中心の食事“手軽に食べたい派”

おにぎり、そば、うどん、菓子パン、ペペロンチーノなどの具のないパスタなど

◎プラス食品

 

このようなコンビニ食は、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維が大幅に不足します。何を選んで添えても栄養補給につながるので、1品プラスは必須です。オススメは栄養豊富であり、ビタミンB1もある程度補給できる牛乳。糖質は速やかにエネルギー補給できる栄養素ですが、これをエネルギーに変えるためにはビタミンB1が欠かせません。糖質が多い食事をとる際は必ずビタミンB1を含む食べ物をプラスすることが大切です。ビタミンB1の不足はイライラや疲労感などの原因にもなるので要注意。ほかに、栄養素を積み上げるためには、色々な栄養素が豊富な卵、ビタミンB1が豊富なナッツ類、βカロテンの豊富な野菜ジュースやフルーツジュースなどもおすすめです。

② 糖質に「たんぱく質/野菜」を少量摂る食事“手軽&ボリューム感の欲しい派”

惣菜パン、サンドイッチ、太巻きなどの具のあるすし類、牛丼、カレーライス、ラーメン、具のあるパスタ(ミートソースやナポリタン)など

◎プラス食品

ナッツ類

“手軽に食べたい派”のコンビニ食よりも、たんぱく質はある程度補給できていますが、ミネラルや食物繊維は大幅に不足しているので1品プラスで補いたいところです。そこで、ビタミンやミネラルが豊富なうえ、一口サイズで食べやすいナッツ類を間食として食べましょう。特に日本人に不足しがちなカルシウムを手軽に補給するには牛乳やヨーグルト、チーズがピッタリです。牛乳・乳製品が得意でない人は豆腐料理でもOKです。

③ 「たんぱく質+カロリー」を摂る食事“とにかくスタミナをつけたい派”

フライ、ハンバーグ、唐揚げ、とんかつなど、カロリーとたんぱく質をしっかり摂る弁当など

◎プラス食品

野菜ジュース

このようなコンビニ弁当を選ぶ人は、疲労やスタミナの不足を感じている人が多い気がします。栄養バランス全体を整えることを考える前に、疲労にかかわる鉄や抗酸化物質の補給をしましょう。鉄、抗酸化物質の供給源となる、ホウレンソウなどの「青菜のおひたし」(鉄、抗酸化物質のβカロテンなどが豊富)、野菜ジュースやフルーツジュース(抗酸化物質のβカロテンなどが豊富)をプラスしましょう。

鉄が不足すると、集中力の低下、イライラ、無力感、疲労感などの症状が現れがちです。最近仕事の集中力が低下している、イライラする、やる気が出ない、疲れがとれない、といった症状がある人は上記の“プラス食品”を摂取するよう心がけましょう。

④魚介類や大豆食品を摂る食事“健康を意識する派”

焼き魚弁当、マーボー丼など

◎プラス食品

野菜サラダ

魚介類や大豆食品は健康効果が高い食品です。このようなコンビニ食は、ビタミンやミネラルもある程度の補給が期待できる一方で、野菜の絶対量が不足します。野菜に含まれる食物繊維もまた、生活習慣病予防に役立つので、食物繊維を1品プラスで補いましょう。

野菜の摂取量不足にはサラダやおひたしをプラス。サラダは「温野菜サラダ」がベターです。食物繊維は、体内で最大の免疫器官である腸内の環境をととのえることで免疫力アップにも役立つほか、血中のコレステロールや中性脂質の減少、食後の血糖値の急上昇を抑制することが期待できるなど、健康を意識するなら欠かせない成分ですので積極的にとりましょう。

⑤「たんぱく質食品+野菜」たっぷりの食事“栄養バランスを考える派”

酢豚、チンジャオロースーなどの中華肉野菜炒めの入った弁当、冷やし中華など

◎プラス食品

乳製品

栄養バランスをととのえても、どうしても不足してしまう栄養素がカルシウムです。というのも、日本の土壌は火山灰でできているため、もともとカルシウムが少ないからです。日本に住む限り、慢性的なカルシウム不足に陥りやすいので、カルシウムが豊富で吸収率も高い牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品をプラスすることでカルシウム補給をしましょう。木綿豆腐も牛乳などと同様にカルシウム供給源として価値が高いのですが、この食事に豆腐料理を合わせるのは難しそうです。なお、豆乳に含まれるカルシウムは牛乳ほど多くありませんが、ある程度は含まれています。豆乳を選ぶなら、無調整よりもカルシウムが約2倍多い「調整豆乳」がおすすめです。

まとめ

「隠れ栄養不足」、いかがでしたか? 自分ではしっかり食べてるつもりでも、意外に不足している栄養素が多くてビックリしたのではないでしょうか? 忙しいと食事はいい加減になりがちですよね。私も仕事が立て込むと、つい手軽に食べられる「おにぎりだけランチ」で済ませていましたが、今回佐藤さんのお話を伺って反省しました。将来健康な赤ちゃんを産むためにも、今日から食事に1品プラスして、栄養バランスのいい食事をしていきたいと思います!

(取材協力:佐藤秀美、文:梅津千晶/マイナビウーマン編集部)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.08.09)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

※この記事は2016年08月05日に公開されたものです

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