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傾聴とは? 「話を聞くスキル」を高める心理テクニック

浅野寿和(心理カウンセラー)

「傾聴」とは、相手の話をよく聞いて相手への理解を深める心理テクニック。ビジネスなどの場でコミュニケーションを円滑にするためにとても重要なスキルです。今回は、心理カウンセラーの浅野寿和さんに、傾聴の意味や使い方を解説してもらいます。

「傾聴」とは、相手の話に耳を傾け、相手を感じ、理解することです。今回は傾聴を身に付けるための手法や、そのメリットなどについて詳しく紹介していきます。

傾聴とは何か

「傾聴」とはコミュニケーション技法の1つ。^まずは、言葉の読み方や意味、心理学における「傾聴」とは何かを見ていきましょう。

傾聴の読み方と意味

傾聴の読み方は、「けいちょう」です。そもそも傾聴とは何か、言葉の意味は以下の通り。

[名](スル)耳を傾けて、熱心に聞くこと。「―に値する意見」「―すべきお話」

『デジタル大辞泉』(小学館)

傾聴とは、辞書にある通り熱心に耳を傾けて話を聴くこと。

傾聴の同義語とその使い分け

傾聴に似た言葉には「拝聴」や「静聴」があります。それぞれの意味は以下の通りです。

・拝聴
…聴くことの謙譲語
・静聴
…静かに話を聴くこと

参考記事はこちら▼

「拝聴」の意味と使い方を詳しく解説しています。

心理学における傾聴のテクニック

心理学において傾聴は、相手の話を深く聞いたり、話し方や表情、姿勢、しぐさといった言葉以外の部分に注意を払ったりすることで、相手への理解を深めるテクニックとして利用されることがあります。

傾聴の技法として特徴的なのは、以下の2つです。

・「受容」
 …相手の言葉や心理をありのまま受け止め、尊重する姿勢
・「共感」
 …相手の言葉やその背景にある心情などを共に感じること

傾聴は、アメリカの心理学者、カール・ロジャーズによって提唱されました。彼は傾聴を「積極的傾聴(Active Listening)」と呼び、自らのカウンセリングの事例を分析して、話を聞く側には「3つの要素」が必要であると説いています。

ロジャーズの三原則

・「自己一致(congruence)」:聴き手は自分に対しても、相手に対しても、真摯な態度でいること。また、相手の話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認すること。分からないことをそのままにしておくことは自己一致に反する。

・「共感的理解(empathic understanding)」:相手の話を、相手の立場に立ち、相手の気持ちに共感しながら理解しようとすること。相手の話を否定せず、なぜそのように考えたのか、その背景に肯定的な関心を持って聴くこと。

・「無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard)」:善悪や好き嫌いといった評価をせず、肯定的な関心を持ちながら話を聴くこと。

傾聴力が高い人の強み

では、傾聴のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

(1)相手を深く理解できる

傾聴(受容と共感)を行うと、相手が安心して話せるようになり、徐々に心を開いてくれるようになります。

これにより相手への理解が深まり、円滑なコミュニケーションが可能になります。

(2)相手との信頼関係を築くことができる

傾聴を心掛けると、相手に「この人は自分の話を真摯に受け止めてくれる」と感じさせることができます。

相手の話を受容する姿勢を見せることで、相手はあなたに対して信頼感や安心感を抱くようになるでしょう。

信頼関係を築く=「ラポール」形成

信頼関係を築くことを、心理学用語ではラポール形成と言います。ラポールとは、仕事や恋愛など、人間関係におけるお互いの信頼のことです。

参考記事はこちら▼

ラポールの意味と形成方法について詳しく解説しています。

(3)自分への理解が深まる

傾聴は相手を理解することだけでなく、自分への理解を深めることにもつながります。

相手の話を注意深く聞くことで、相手から見えている状況と自分のイメージが異なることに気づく場合もあるでしょう。

自分を客観視することで、より自分自身への理解も深まるといえますよ。

傾聴の具体的なやり方

傾聴で大切なのは、相手に興味を持って話をよく聞くことです。

相手の話の内容はもちろん、「相手はなぜそういった話をするのだろうか」「相手は何を感じているのだろうか」と、相手の心情にまで興味を持って話を聞くと良いでしょう。

では、具体的な傾聴のやり方を解説していきます。

(1)ペーシング

ペーシングとは、相手の話し方や声のトーンなど、相手と「ペース」を合わせる心理テクニックです。

表情・姿勢・視線・話すテンションなどを意識的に相手と合わせるようにしてみましょう。こうすることで、相手は無意識にあなたに安心感や信頼感を抱くようになります。

ペーシング自体はとても奥深いものですが、日常の中で比較的簡単に取り入れられるペーシングが「相づちを合わせる」です。相手と同じタイミングで頷くと、その速度や深さ、タイミングが合い、自然と話を聞くリズム・速度を合わせることができるようになります。

ペーシングの一種「ミラーリング」とは

ペーシングの一種に、「ミラーリング」というものがあります。ミラーリングのやり方を身につければ、相手に親近感や安心感を持ってもらいやすくなるかもしれません。

参考記事はこちら▼

ミラーリングの意味とやり方を詳しく解説しています。

(2)バックトラッキング(オウム返し)

バックトラッキングとは、オウム返しともいわれる技法です。例えば、「上司に気持ちを分かってほしいんです」という相手の言葉に「上司が気持ちを分かってくれないんですね」と返すようなイメージです。

バックトラッキングの目的は、相手の話をしっかり聞いていることを示すことと、会話に対する理解度をより深めることにあります。

バックトラッキングを意識して会話を進めていくと、自分の話を聞いてもらっている、受け入れられているという安心感を相手に与えることができるでしょう。

(3)パラフレーズ(言い換え・要約)

パラフレーズとは、相手の発言を要約したり、言い換えたりすることです。

例えば、「クライアントからもっと色のトーンを暗くするように指示があったんだけど、なんかしっくりこなくて」という相談に対して、「トーンは明るい方が良いと思っているんだね」と返すイメージです。

これにより、相手と自分の認識のズレを調整することが可能になります。言い換えや要約を使うと、相手の気持ちを整理するようなアプローチにもなりますし、「相手の話をよく聞いている」と示す意味としても効果があります。

傾聴力を身につけるために意識すべきこと

傾聴力は一朝一夕で身に付くものではありません。傾聴力を身に付けるために日頃からどんなことを意識すべきかを解説します。

(1)日頃から相手に興味を持つ

普段の会話や関わりの中でも、相手はどんな気分なのか、どういうことを求めているのかを考える意識を持つことです。

ただし、「相手の気持ちに同意すること」と共感は違います。「私もそう思う」ではなく、「相手の気持ちを知り、寄り添うこと」がポイントです。

参考記事はこちら▼

他人への興味を持つのが難しいと感じる人へ。対処法を解説しています。

(2)沈黙を恐れない

傾聴力を身につけるためには「沈黙を恐れないこと」も必要です。沈黙にも意味がある、相手のための時間だと考えておくと良いでしょう。

つい会話の中で生じる空白に不安を感じて自分から話をしてしまうこともあるかもしれませんが、自分の不安で相手が話す時間を奪わないように意識しましょう。

参考記事はこちら▼

沈黙を恐れないのは、聞き上手になるためにも重要なこと。聞き上手になる方法については、この記事で解説しています。

(3)多様な価値観を認める

相手を理解するには、自分の価値観で物事を決めつけてしまわないようにする必要がありますが、これがとても難しいことなのです。

自分の価値観からできるだけ自由になるために、普段から多様な人と接し、その価値観に触れて学び、認める習慣を持つと良いでしょう。ここは学びと経験が物を言います。

(4)思い込み・自己否定を手放す

思い込みが強い人、自己否定が強い人も傾聴が難しくなります。

傾聴には自分に対しても真摯な態度を取ることが求められますから、特に自分を否定しがちな人は自分の価値について認めておくといいでしょう。

参考記事はこちら▼

自己否定しがちな人の特徴と対処法を、精神科医のさくらさんが解説しています。

傾聴を心掛けてコミュニケーションの質を高めよう

傾聴は、相手に自分を信頼し、心を開いてもらうための大切な手段。ぜひ「聴く力」に興味を持って取り組んでみてくださいね。

(浅野寿和)

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※画像はイメージです

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