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「自負」の意味と使い方。使う上での注意点と言い換え表現

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

ビジネスシーンで使うこともあれば、一度は聞いたこともある「自負」という言葉。この言葉の意味を正しく理解していますか? また、使い過ぎて自慢っぽく聞こえている場合も……。今回は、ライティングコーチの前田めぐるさんに、「自負」の意味や使い方や言い換え表現を詳しく解説してもらいます。

「その点については、誰にも負けないと自負しております」と語る人を見かけることがありますよね。

堂々として、清々しく感じられる「自負」という言葉。

良い印象を与えられるのであれば、しっかり意味を把握して、使いこなしたいところですね。早速、掘り下げてみましょう。

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「自負」という言葉が持つ意味は?

まず、「自負」という言葉を辞書で調べてみましょう。

じふ【自負】
自分の才能や仕事に自信や誇りを持つこと。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

「負」という漢字は、「負ける」という意味で広く使われますが、この場合の「負」はそうしたネガティブな意味ではないようですね。「負」の意味も詳しく確認しておきましょう。

ふ【負】
(1)たのみとする。たのむ。
(2)荷物や人を背にのせる。また、身にひきうける。せおう。おう。
(3)そむく。したがわない。うらぎる。
(4)たたかいにやぶれる。まける。まけ。
(5)マイナス。
(『例解新漢和辞典』三省堂)

「自負」の「負」は、(1)の「頼みとする」「頼む」というポジティブな意味です。「自ら負う」と書く「自負」は、「自らを頼みとする」と頼もしい意味に捉えることができます。

以上のことから、「自負」は、自分の才能や仕事に自信や誇りを持ち、自らを頼みとするという意味の言葉です。「負ける」のではなく、むしろ「誰にも負けない、どこにも負けない」という場合に使います。

「自負」はどういう時に使うのか? (例文付き)

それでは、「自負」という言葉は実際どのように使えばいいのでしょうか?

「自らを頼みとしている」ことを表す言葉なので、外部に対して、そのことをアピールする際に使うのが最も効果的です。

実際にどのような場面で使えるのか、例文と一緒に紹介します。

自己紹介でやる気を伝えたい時

職場などでの自己紹介で、やる気を伝えたい時に用いることができます。

例文

・私は特別な才能はありませんが、与えられたことを誰よりも一所懸命取り組むことができるという自負があります。

プロジェクト参加者に立候補する時

自分が有用な人材であると伝えたい時などにも使えます。

例文

・その点では誰にも負けないという自負があるので、今回立候補させていただきました。

就職や転職で自己PRをする時

就職や就職で自己PRをする時にも、用いることができます。

例文

・元々営業は苦手ですが、克服しようと努力した結果、このような成果が生まれたと自負しております。

説明書や広告など企業メッセージを示す時

前述してきた個人としての「自負」ではなく、企業としてメッセージを伝える際にも用いることができる表現です。やや押しの強い印象を与えます。

例文

・業界のパイオニアとしての自負がございます。

顧客へのメールで自社をアピールする時

こちらも企業としてのメッセージで「自負」を使うパターンです。

メールでも同様に使えます。

例文

・ここまでの実績を残せたのは、顧客の方々のお力添えはもちろんのこと、日々努力を積み重ねた賜物であるとの自負を持っております。

「自負」を使う上での注意点

ここでは、「自負」を使う上での注意点を紹介します。ぜひチェックしておきましょう。

「自負」に「責任を負う」という意味はない

ここまで解説したように、「自負」という言葉は、「自分の才能や仕事に自信や誇りを持つこと」であり、「誰にも負けない自信がある」という場合に使います。

しかし「負(まける)」というネガティブな意味の漢字が入っているために、間違えて負の意味に捉える場面も少なからずあるようです。

また、「責任を負う」という意味にも捉えられがちですが、これは間違いです。

よって、「自分に落ち度があったことを自覚している」「自分を傷つける、負い目を負わせる」「自分で負うべき責任を知っている」という場合には、「自負」ではなく、「自認」や「自覚」を使います。

「自認」とは「自分で認めること、是認すること」、「自覚」とは「自分のあり方をわきまえていること」です。

「自負」の誤った用法と正しい言い換え表現

誤った使い方をしないためにも、以下の気持ちを伝えたい時の正しい表現をおさえておきましょう。

「認める」と伝えたい時

・×「私に見落としがあったことは、自負しております」
・○「私に見落としがあったことは、自認しております」

「気付いている」と伝えたい時

・×「私に欠点があることは、自負しております」
・○「私に欠点があることは、自覚しております」

「承知している」と伝えたい時

・×「後輩の失敗は先輩である私が負うべきと、自負しております」
・○「後輩の失敗は先輩である私が負うべきと、自覚しております」

「自負」の類語や言い換え表現(例文付き)

「自負」という言葉は、ポジティブでアピール力の高い言葉です。企画書などビジネス文書の中でも、最初の紹介や、最後の締めくくりなどポイントを絞って使うと効果的です。

一方で、使い過ぎると、やはり自慢めいて受け取られることにもなりかねません。

そこで、他にも同じような意味を持つ言葉をいくつか紹介しますので、覚えておくと便利です。

「自任(じにん)」

「自任」とは、「自分を優秀だとし、適任者であると思い込むこと」を意味する言葉です。

例文

・市場調査のスキルについては、社内一と自任していますので、ぜひお任せください。

「矜恃(きょうじ)」

「矜恃」とは、「自分の能力を信じて抱いている誇りやプライド」という意味。「矜」の字は、「誇る」という意味です。

例文

・今回の製品は、業界のパイオニアとしての矜恃を持っておすすめします。

「誇り(ほこり)」

「誇り」は「誇る」の名詞。「プライド」と同義です。

例文

・下町の物作り工場には、日本の物作りを支えてきた誇りがあります。

「自信」

「自信」とは「自分の能力や価値を確信する」という意味です。

例文

・初めて会う人ともすぐ仲良くなれる自信があります。

「プライド」

前述した通り、「プライド」は「誇り」と同義です。

例文

・アルバイト時代に接客コンテストで優勝したことは、彼にとってプライドでもある。

「自負」を示すからには、「自慢」「うぬぼれ」に終わらずやり抜くこと!

いかがでしたか?

「自負しています」と使うことで、単に「プライド」があるだけでなく、自らを頼み、頼まれるという真摯な態度を相手に感じさせ、頼もしく思ってもらうことができます。「自任」も同様です。

つまり、「自負」という言葉を使ったからには、「自慢」や「自賛」に終わってしまうことがないように、引き受けてやり抜くことが大切。まさに「言葉は人なり」ですね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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